美味しいダンジョン、まだ続きそう?
スカイも元気になったので、夕ご飯は、ホワイトホークの焼き鳥を作ってみた。不思議な弾力があって、美味しい。ねぎまにしたんだけど、スカイがネギだけ残している。
「スカイ、好き嫌いはだめだよ?食べられない訳じゃないんだから」
それでも、スカイの器からネギだけ半分取ってやる。甘いかな?
でも猫のユキが食べられているんだから、大丈夫なはずだよね?
(ずっと前に食べた時、辛かったんだもん)
「んー?生だったかな?焼くと甘くなるんだよ。どれ位前?」
(まだ念話出来ない頃)
ずいぶん前の話だな。あれかな?ネギが育てられたのが嬉しくて、焼きネギした時。
「何かトラウマになってるならごめん。でもスカイは玉葱も食べないよね?」
(ネギは目が痛くなるから嫌なんだ)
「それは、スカイが料理中も私の頭の上にいるからだよ」
(そうにゃ、スカイはマニャといる時間が長すぎるにゃ)
「焼き鳥なくなったな…もう一匹調理していい?」
ルードがスカイを見てニヤリと笑う。
「ピエッ?!」
「ルード、脅しちゃだめでしょ?料理もしないのに」
「鳥だって何もしない」
はぁ…もう。
「しょうがないよ。羽根じゃ何も出来ないよ。それに今日は、足りない位で丁度いいの」
みんなの前に、収納庫から松茸の入った茶碗蒸しを置く。
「あついから、ユキは気をつけてね」
「あ、いい香り」
「一本しかないから今回限りだけど、椎茸で良ければ後でも作るよ」
味はシメジの方が美味しいらしいし。
松茸風味のお吸い物を思い出すな。餅を入れて食べると美味しいんだよね。
「美味しいわね、これ。今度母さんにも作り方教えてね」
茶碗蒸しは、飲み物です。…えええ!
「やけどしてない?ルビー母さん」
「別に何ともないわよ?」
ルビー母さんの防御力?侮りがたし。
「コップに入っている物は、飲み物でしょ?」
「大体はそうだけど!違うのもあるの!」
「そうなの?難しいわね」
…まあ、いいや。姿だけ人になっても分からない事はあるよね。
今日は13階層からだ。今度はどんな美味しい物が出てくるんだろう?
ずんぐりとした姿の、私と同じ位の身長の…こ、これは!
看破 エリンギャー 同名のキノコが魔化した物。弾力があり、美味
手足が生えて、棒まで持っている。生半可な攻撃では弾き返される。げ、再生能力まであるのか。
でもスカイの翼斬で斬られた所は再生しない。
よし!
マナは短剣に炎を纏わせた。胴体が太いから、なかなか切り倒せないし、血が通っている訳でもないから、弱点はなさそうだ。けど真っ二つにしたらさすがに倒れた。
ドロップしたのは、普通サイズのエリンギ。
「何か、損した気分」
「魔化した植物は、命を絶つと、本来のサイズに戻るんだよ」
まあいい。沢山狩ればいいだけだし。
14階層には、巨大毛虫が出た。びっしりと生えた毛は柔らかそうなのに、本体は硬い。
その毛虫が突然体を丸めて高速で転がってきた。通路ほぼいっぱいだから、逃げ場がない。咄嗟に結界を張ったけど、ぶつかった衝撃はかなりのものだ。
結界の内側からそれぞれ得意な魔法を使う。一度障害物に当たって復活するのに時間がかかるから、そんなにかからず倒せている。
ドロップしたのは柔らかい毛。集めたら、新しい上掛けが作れそうだ。
「何か、階段降りるごとにフロアが広くなってない?」
「珍しくはないんじゃないかな?ダンジョンも色々あるし。こんな風に降りるタイプだけじゃなくて、登るものもあるし」
「そっか」
異世界あるあるだね。とはいえ、今の私にはここが現実世界だけど。
階段がなかなか見つからなくて苦労したけど、やっと15階層に来られた。
「あれ?魔物は?」
通路には、何もいない。けど気配は感じる。
「マナの魔物は?が、僕には食べ物は?に聞こえる」
失敬な。
そろそろと進むと、突然地面が割れて何かが突き出した。
「ふあ?!」
咄嗟に避けたけど、それは避けた途端に引っ込んだ。
索敵に加えて魔力感知も使って、出て来た所を剣で切る。
「わ…!タケノコだ!」
やっぱり普通サイズになってしまうけど、それでも嬉しい。
農園でもタケノコは収穫できるけど、何故か種をまいて栽培する。そしてこのフロアにも竹はない。不思議。
ユキが、罠を使って誰よりも早く発見している。というか、ユキの罠スキルを見るのはこれが初めてだ。
ソニックウェーブで出て来たタケノコをスパスパと切りまくる。
この階層には罠もある。いきなり地面が消えて50センチ程度の穴が空く程度だけど、罠感知のある私にはなんとなく分かる。ユキも自分で罠を張るから分かるし、ルードは直感で避けている。
意外にも罠に弱いのはルビー母さんだ。
「痛っ…足を挫いたみたい」
ええと、どの足だろう?
ヒールでもいけるだろうけど、敢えてキュアを使うのは、もし骨折してたら怖いからだ。…あれ?蜘蛛の足に骨ってあったっけ?
どのみち使う魔力量にたいした差はないからいいや。
「今からでも探知スキルがとれるように頑張るわ」
しばらく前から人間の冒険者の姿を見ていないけど、こっちも注意しないとね。




