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お嬢様には冒険者は厳しい職業です

 今日から三日間は、外での野外演習だ。自分たちで食料の確保から魔物の見張りもやらなければならない。

 班は寮のメンバープラス1の五人。マレサというどこぞのご令嬢で、寮の部屋も使用人と二人で使っているので、接点がない。今回は使用人兼護衛の人はいない。授業なのだから当然だけど、マレサには不満らしい。

「それでマレサさん、見張りの順番だけど」

「様を付けなさい!平民風情に軽々しく名を呼ばれたくありませんわ」

「なら何でそのお嬢様がこの学校入ったんか聞きたいなぁ」

「それは…い、家の方針ですわ!」

「ほーん。傍流の娘が、本家から身受け拒否されたからやないの」

「ソーニャ、言い過ぎだ。とにかく、我々の班に入った以上、最低限の仕事はしてもらう。戦う力もなく、料理も出来ないとなれば、夜の見張りとして頑張ってもらうほかあるまい」

「何よ!たかが騎士爵の娘が、偉そうに」


 前途多難。何故このお荷物でしかないお嬢様を私達のグループに入れる事になったかといえば、単に一人位面倒なのを押しつけても生存率は下がらないだろうという担任の単純な見解が原因。


 マレサも一応魔法は扱える。しかも火、風、土の三属性に加えて闇属性。これが不味かったらしい。本家は代々優秀な神官を輩出してきた家系。今では闇属性に偏見を持つ人は少ないけど、昔は差別されたらしい。

 ただ、そういう家系だから、マレサは不当に扱われてきた。

 だったら、折角の魔法の才能を伸ばして魔術師になればいいと思うんだけど、プライドが許さないらしい。


「わたくしはマジックバッグに調味料も進呈しましたわ。テントという大荷物を簡単に運べたのですから充分でしょう」

「それはアンタの力やなくて、家の力や。先生は班で協力して言うたやろ?マナはもう、獲物を狩ってきたし、料理もしてくれた。ジーナはテントを張ってくれたし、うち、ポーラ、アンタの三人で見張りを交代してやることの、どこに不満があるねん。何もアンタ一人で魔物を撃退しろなんて言ってない。時間中に魔物が出たらうちらを起こせばいいだけや」

 まあ最悪、見張りがなくても私の常在戦場もあるし、先生だって見張りに廻っている。こんなユルい冒険活動なんてない。

 それにここは町から程近い場所。強い魔物にやられようもない。


 だからマナは全く心配なんてしていなかったけど、結局先生に起こされる羽目になった。最後の一刻半の見張りになったマレサが町に逃げ帰ってしまったらしい。


 一番テントの入口付近に寝ていたのが私だったんだけど…眠い。

 うっかり眠らないように、朝食の準備をする事にした。

 初めての旅で亜空間持ちのルードと一緒で、眠るのに苦労した事が無かった私は、恵まれていたんだな。

 

 逃げてしまったのは駄目だけど、今まで辛い思いはしたけど怖い思いはした事が無かったのかもしれない。

 誰かに怒られても命には別状ない。けど魔物が放つのは、本物の殺気だ。この先あのお嬢様の進路がどうなるのかは知らないけど、逃げてもろくなことにはならない。


 スープから良い香りが漂よってきた頃、一の鐘が鳴った。

 眠そうに起きてきたみんなに事情を説明すると、ソーニャとジーナは怒っていたけど、ポーラは思う所があるのか、割とすぐ納得した。

「まだ明日まであるのに、嫌な気分だ」

「他の斑は元から四人だし、最初からこの四人だったと思えばいいじゃん?」

 むしろこの先、慣れない相手と組まされたらどうなるのかとか、考えると胃が痛くなる。

 

 マレサも慣れない相手と寝食を共にするのが嫌だったのかもしれない。

「そういえばソーニャ、ギルドが係わっている学校の他にも別の学校があるの?」

「マナは天然やな」

「学校の成績は悪くないのにマナちゃんて、どっか抜けてるよねー?」


「その国ごとに貴族の通う学校が、大体あるな。この国はギルド本部があるから違う意味でこの学校を卒業した方が有利だったりもする。まあ、それは高等部まで行けばの話だが」

「うちら庶民には関係ない話や」


「マナちゃんは冒険者になりたいんだよねー?ならこの学校に入ってよかったんだよ?初等学校卒業するだけでもなんと、Dランクが貰えちゃうんだから」

 あんな試験なんか受けなくても、ここに来れば充分だったって事か。

「マナには無意味だな。既にCランクなのだから」

「あ、そうだったねー?」


 じゃんけんで今日の午前中はマナがテントを守る役目になった。

 とはいえ、このテントが狙われる確率は低い。何しろ同じテントが6つ並んでいる訳だし、先生もいる。

 暇。かといって小説を読む訳にもいかない。

 時々鷹の目で辺りを確認しているけど、危検もない。

 平和なのはいいことだけど、早起きだったせいもあって眠い。


 何?

 マナは、咄嗟に飛んできた物を掴んだ。

 ん?刃引きされたナイフ?

「先生、危ないじゃないですか!」

「当たってもたんこぶ位だから気にするな。それより見張り中に居眠りしている方が悪い…てか、よく反応できたな?」

「熟睡しているはずないじゃないですか」

「嘘こけ、ヨダレ出てたぞ」

「出てません!」

 失敬な。…まあこうやって注意を促すのも先生の役目なんだろうけど、何かこの先生は胡散臭いんだよね。


「先生、マレサさんは?」

「学校に戻ったという連絡は来た。そっから先は上と本人次第だからな」

「先生、冷たい」


「所詮は平教師だからな。それに冒険者なんて強要されてなるもんじゃねぇだろ?」

 そりゃそうだ。魔法が上手でも、魔法使いにならなきゃいけない訳でもないし。


「…なあ?何だって魔の森なんかに住んでんだ?犯罪者でもないのに」

「お母さんが住んでたら、私も住むに決まっているじゃないですか」

「マナはともかく、あの母ちゃんに兄ちゃん位の歳の子供がいると思えないんだが」

「はあ。それってちゃんと話さなきゃ駄目ですか?」

 そりゃそうだ。下手すりゃ見かけは同い年だ。

「いや、言いたくないなら言わんでも問題はないが」

「じゃあ、黙秘します」

「黙秘とか、難しい言葉使うな」

「乙女の秘密の方が良かったですか?」

「ぶふぉ…げほっ、そういう台詞は十年早い」

 そこで盛大にむせるのは失礼だと思うんだけど。


 確かに不思議だよね。ルビー母さんなんて80過ぎているのにお肌の艶もいい南国風美女だし。

ユキなんて、私より二つも年下なのに、見た目中学生だし。

 スカイが人化したらどうなるのかな?声の感じからして子供っぽいけど、大きな子供の方は声も若いし。…出来ればスカイは鳥のままでいてほしいな。もふもふ的な意味でも。

 



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