炭酸ジュース
休日、薬草採取に行くふりをして亜空間移動でツリーハウスに戻った。
「マナ!」
巣を修復していたルビー母さんが、ぎゅっと抱きしめる。
「ただいま!母さん」
他の眷族達もみんな集まってきて、押しくらまんじゅう状態になる。
「あはは。苦しいよ」
約1週間。こんなに長く離れた事なんてなかったから、みんな淋しかったのだろう。私も淋しかった。
「夜にも帰って来るって言ってたのに」
「まだ慣れないから、追々ね」
人形はカーテンの外に顔が出るように置いてあるんだけど、疲れているからすぐ寝てしまうのだ。
他のみんなもそうならいいけど、確認が取れていない。
「今日は夕方まで一緒にいるよ」
薬草は、農園で集めたものがあるのだ。
「じゃあ、マナのご飯が食べたい」
みんな同意見のようだ。
「マナがいないと、料理する気力も起きなくて、生肉ばかりになっちゃうから」
「もう…野菜も食べないと駄目だよ?収納庫の野菜もそのままじゃん」
果物は減っているから、ユキには渡しているみたいだけど、結構残っている。
「とりあえず、みんなで狩りに行こうか」
こんなに狩っていたら、そのうち食べ尽くしちゃうかもしれない。
でも魔物は一向に減る気配はない。どっから湧いて出てくるんだろう? まあ、肉に困る事はないからいいけどさ。
マナは、ルードをちらりと見てため息をつく。
今日は張り切っているみたいだけど、基本食べたら寝る。の生活で、大食い。よく太らないものだ。
眷族化した時にあんまり寝なくても良くなったって言ってたのに、相変わらずみたいだ。
たまにふらっと出掛けてるみたいだけど、私がいない時は寝てばかりらしい。
私はクリーンで綺麗にしちゃっているけど、光魔法の使い手は意外と少ないようだ。
「この白い粉は何?」
「何や、マナ。ジューソも知らんのか。食器とか掃除の時は、まさか水だけか?」
掃除は当番制なので、同じグループのソーニャに聞いた。
「ううん。クリーンで」
「何や…光魔法も使えるんかいな。本当に何でも有りやな、マナは」
ジューソって、重曹?…って事は、炭酸水が作れる!炭酸ジュースは諦めていたから嬉しい!
「どこに売ってるの?ジューソ、教えて!」
「な、何やいきなり…どこにでも売ってるやろが。道具屋行けばあるやろ」
「やった!」
「いや…クリーン使えるなら、ジューソ要らんやろが、自分」
あとはオレンジを沢山収穫したから、そこからクエン酸は作ればいいし。
「マナ?…あかん。聞いとらんわ」
果物の炭酸ジュースもいいけど、コーラも飲みたいよね。えへへ。
学校が終わってから早速買いに行った。値段も割と安い。
前に買い物した時は気がつかなかったな。こういう基本的な常識を知らないんだよね。私。
コーラ出来たー!
眷族達は微妙な表情してたけど、スカイとユキは、一緒に出したリンゴの炭酸ジュースは飲んでいた。
「不思議な飲み物だね。舌がピリピリする。これも料理?」
「そうとも言う。重曹を見つけたから、出来たんだよ」
「ジューソの事?掃除に使う物が入っているの?」
「ちゃんと食用可な物だよ。ルードはジューソの事知ってたの?」
「前にも人として生活した事があったからね。母様が、これも勉強だからって」
「なら、教えてくれてもいいじゃん」
「掃除に使う物を料理にも使えるなんて知らなかったし、クリーン使えるなら、要らないだろ?」
「そんな事ないの!これで炭酸饅頭も作れるし!…あ、でもあんこがないから作れないや」
「あんこ?」
「んー、きな粉を作る大豆は知ってるよね?それよりも小さい豆で、色は…血が乾いた後の色を薄くしたような感じ」
「うーん。そんな豆あったかな?大きさは違うけど、似たような色の豆なら知ってる」
「大きさはどの位なの?」
「大豆の倍位かな。名前は忘れた」
「どこに売ってたか覚えてる?」
「うーん。何十年も前の事だしな…マナが学校に行ってる間に探してみるよ」
「やった!ありがとう!ルード!」
「主の役に立てるのは、嬉しい事だからね。マナの為なら、頑張って探してみるよ」
「うう…にゃーも!ユキはあんまり役に立ててないにゃ」
「なら、私は忙しくなっちゃったから、うどんはユキが作ってよ。小麦粉は収納庫に入っているから、誰かに頼んでユキが忙しくない時でいいから」
「作るにゃー!うどんはユキも大好きにゃー!」
(僕は?何かある?)
(スカイは水魔法の練習かな)
(あう…分かったよ)
「今日はもう寝よう。明日も学校だし」
補助魔法の時間を知る魔法から作ったアラームで、起床の鐘の十分前に起きられるようにする。
スマホのアラーム機能は、時間が異世界仕様になってしまったので、使いづらいのだ。
一刻にアラームを合わせる事はできるけど、十分前とかの細かい所が出来ない。起床の鐘は一刻に鳴るから、それでは間に合わないのだ。




