ともだち
秋といえば干し柿なのさ。という訳で、1本だけ育てた蜂谷柿をヘタと枝を少し残して綺麗に剥く。
(ぶふっ…マナー!これ、口が変になるよー!)
(だから先に言ったじゃん。これは渋いから、つまみ食いしちゃダメだって)
(えー?そんなの何にするのさ?)
(これが干しておくと美味しくなるんだよ。そっちの樽抜きも、私がいいって言うまで食べちゃダメだよ)
スカイはまだ渋いのか、水を飲みまくっている。
全く、油断も隙もないんだから。
今日はキノコとベーコンのピザを焼く。ベーコンは、この辺に多いハイオークの肉で作った。勿論部位に分けてロースの所はハムを作っている。
燻製にするのが大変だった。余計な魔物まで寄ってくるから、威圧の練習になったけど、私の威圧はあんまり効かないんだよね。
いつでも作れるけど、やっぱり季節に食べたい。
干し芋も作ったし、眷族達の希望で干し肉というかジャーキーも作ったし、冬はまったりと過ごせ…今年からは、過ごせないんだった。
寮では四人部屋になるらしい。二段ベッドが二つと、勉強する為の長机。それと個人の持ち物を入れる箱。私は収納庫を持っているので要らないけど、そこは隠しておきたい所なので、普通の服は箱に入れる予定。下着だけは隠れるので、ルビー母さんのを使うつもりだ。
一番見られちゃダメなのが、スマホだ。他の人には画面は見えないみたいだけど、全員とは限らない。それと亜空間移動。こっちは補助魔法の憑依があるので、ベッドで寝たふりをして人形を置いて、亜空間移動で森に帰ればいい。
入念に準備して、新年の金の光も見て、あっという間に入寮日になる。
特に入学式とかはないので、入寮したら、学生扱いだ。
寮の部屋は、あの時看破しちゃったソーニャって子と、錬金術師見習いのポーラ。脳筋そうなジーナだ。あれ?みんな私より年上なのかな?10歳以下の子が入るはずだけど、上級生って感じじゃないし。
「とりあえず自己紹介しとくか。あたしはジーナ。家は騎士の家系で、私も目指してる。6歳だ」
「私…ポーラ。おばあちゃんが錬金術師なので、初期ポーション位なら作れるよ?…買ってくれたら嬉しい。歳は6歳だよ」
「ウチはソーニャ。家が行商してるんで、1年入学が遅れた。槍も使うけど一番は金勘定が得意や」
「マナです。冒険者目指してます」
あう。緊張した。
「じゃあ、一番年上のソーニャちゃんが班長?」
「待ちや。ウチは忙しいねん。ポーラが作ったポーションを学内で売り捌くんや。マナ、あんたちっこいのにレベル高いんちゃう?えらい素早かったやん。まさか6歳以下って事はないやろし、班長、やれる?」
「えええ…冒険者の仕事しながら出来るかな?」
「あのさ、普通にあたしでいいだろ?これでも騎士目指しているんだし。それに、マナが採取してきた薬草を、ポーラが薬にする。…学内で商売が認められているかは知らないけど、それなら友達価格で薬が作れるんじゃないかな?」
「おおお!ジーナ、見かけによらず賢いな!せやな。それでいい?」
助かった。班長なんてやれる自信ないもん。…それにしてもみんなおっきいな…ジーナとか、10歳位に見えるもん。
「こら、一言余計だ。それと、不当に売り捌こうとしたら、あたしが許さないからな」
「友達価格やて。ポーラはプロちゃうから」
楽しそうな人達。これなら大丈夫かな?
それにしてもみんな大きいな。…まさかこれが魔力の弊害?アジア系は小さいとか、遺伝とか…いけない。思わずとり乱した。そもそも作ってもらった体だから、遺伝関係ないし。…成長期だから、そのうち伸びるよね?
二段ベッドは、カーテンで仕切れるので自分だけの時間が持てる。これなら亜空間移動もばれずに済みそうだ。
私は、下の段を使う事になった。あとは寝相が悪いというソーニャ。私の上はジーナだ。
私は7歳だけど、今更言いにくい。ていうか既に小さい子扱いされてるから、本当に今更だ。まあ、別に関係ないだろう。
クラスは二つあって、私はAクラス。寮のみんなも一緒だ。どういう基準で選ばれているかは分からないけど、あの三人となら喋れそうだから有難い。
「ほら、席に着け。俺が担任のアレンだ。今から呼ぶ者は前に出ろ。マナ、アルト」
私…だよね?同じ名前の子いたりしない?
「マナ、何きょろきょろしてる?お前だ。マナがクラス長。アルトが副長だ。因みに成績順だから。他の奴らも安心するなよ?全員何かの仕事を割り振るからな」
先生が、黒板にチョーク?で役割を書く。
「ほれ、早い者勝ちだ」
みんなざわざわと前に集まる。
「いや、Aクラスは全員文字が読めるから助かるわ」
もっと自重しないと駄目だった?長とか無理なんですけど!
「せ…先生?クラス長は変更不可ですか?」
「あー?Cランク冒険者が何言ってんだ?ていうかお前はそれい…」
「もういいです!…先生酷い」
「ええ?Cランク?嘘だろ?」
「俺はやっとEランクになれたのに」
「俺なんて学校で登録できるから、それからでもいいだろって言われて」
「あの!実は年上なので、それだけ仕事頑張ったし…魔法とかも得意なので!」
「年上?いくつだよお前。俺は8歳だぜ?」
「7歳。でも色々理由があって…強いからクラス長ができるとか、ないと思う!」
「…ま、そりゃそうだが実戦訓練もあるしな」
「せやかて、向き不向きもあるやろ?」
「そうだな。本人が嫌がっているのに無理やりやらせるのはどうかと思う」
「ソーニャ、ジーナ、ありがとう」
「…はあ。まあ実戦訓練ではサポートしてくれよ?アルト、クラス長な」
「…いいけど」
不満そう。ごめんなさい。
「副長は…ええと?ガイ」
「やった!俺が3番て事だよな?先生」
「一応な。とりあえず半年だ。伸びる奴は伸びるから、油断は禁物だぞ?」
「マナちゃんは、私達が怖い?」
「!え…う、ううん。ポーラは怖くないよ?」
「…うーん。マナちゃんは人見知りさんなのかな?」
「うん…実はそうなんだ」
「そっかぁ。大変だね。じゃあ今度、勇気が出るお守りを作ってあげるね?」
「いいの?それも錬金術?」
「ふふ。おばあちゃん直伝だよー?ファイトだよ、マナちゃん」
「ありがとう」
同室の子がいい人達で良かった。




