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南国ダンジョン 1

 ダンジョンの中は、少しだけ涼しい。けど、冒険者が多くてまともに戦えない。魔物がポップした瞬間にみんなでタコ殴りにする。上層階はドロップアイテムも殆どないから、みんな経験値が欲しいのだろう。

 なら、外で魔物と戦った方がましだと思うんだけどな。

 ここに出るラットなんて、経験値はゴブリンと変わらない位だと思うんだけど。


 次の階層でも似た感じで、ポップするのはソルジャーラビット。極たまに肉か毛皮を落とすけど、その辺は分配が決められているのか、喧嘩にはならない。

 三階層でやっと人が減ってきた。キルラビットの角は薬効成分があるから、安いけど売れる。強さも上がるけど、まだまだ雑魚だ。

 湖ダンジョンでも10階層位までは人がいたから、さっさと通り抜ける事にする。

 

 10階層のボス部屋は、他のパーティーと鉢合わせになる事もない。

 ボスはソルジャーオークと普通のオーク。そういえば、屋台でオーク肉の串焼きを売っていた。

 みんなまとめて雷魔法を打ち込んだ。

「うーん、魔力込めすぎたかな?」

 黒こげになったオークが地面に吸い込まれて、一体分のロース肉しか出てこない。

 ノーマルオーク肉はあまり美味しくないので、放っておいたらそのうちそれも取り込まれた。


「このダンジョンのリソースが足りていないのかな?」

「リソースって何?」

「ルードは知らない?ダンジョンは、人を取り込んで成長するんだよ。だから人を呼ぶ為に宝箱があったりするの。って、本の受け売りだけど」

「確かに旨みがないと潜らないか。あんな風に上層階の魔物ばかり狩ってたら、ダンジョンにとっての栄養が取れないってこと?」

「あ、でもお話の事だから、事実とは違うかも?」

「そもそも人も魔物もダンジョンも、神様が創ったって言われているけど」

「疑問?」

「少しね。マナから聞いた、魔物のいない世界の事とか考えると、色々と思う所があって」

「私は今の世界の方が好きだな。スマホの事とか、色々と恵まれているってだけじゃなくて、生きてることが大切に思えるから」

「今の僕には神の代行者の資格はないけど、マナがいれば、それでいい」

「こらそこ!自分だけぬけがけしないの!」

 えー?ちょっとしゃべってただけじゃん?眷族達は、普段は仲良しなのに、私が絡むと心が狭くなるんだよね。


 11階層からは、スカイとユキを出してあげた。随分涼しくなってきたからだ。

「大丈夫?行けそう?」

「もう大丈夫にゃ。こうやってマニャの顔が見れた方が嬉しいにゃ」

(僕も活躍する!)

「まだ人がいるから、スカイは気をつけて」

 従魔の足環ははめているけど、間違って攻撃されかねない。

 スカイは、私の頭にとまる。痛くはないんだけど、結んだ髪がぐちゃぐちゃになるんだよね。


 12階層では、鉱石が採れるようだ。あれは、外にいた荷物持ちの子供達かな?背中に背負った籠に沢山の鉱石を入れている。

 冒険者の男が掘り出した鉱石を受け取り、籠に入れてるけど魔物の警戒は子供達に任せているようだ。

 飛来したジャイアントバットに、足下に落ちている石を投げているけど、大きくて重い籠を背負っているせいか、速く動けない。

 魔物自体はそう強くはないけど、飛んでいるから、手が出しづらい。

 私が魔法を使う前に、ルードに止められた。確かに魔物の横殴りは禁止だけど、冒険者は鉱石掘りに夢中だし、子供達だけでは難しいんじゃ?

 別の子が、鉱石を投げて攻撃した。よし、当たった!

「おいお前、俺が採取した鉱石使ってんじゃねえよ!」

「ごめんなさい!でも、飛んでる魔物だから」

 子供達の使っている武器は、魔物の骨のようだ。

「お前らも何見てんだ?」

「別に?ただ、自分は何もしないで冒険者として恥ずかしくないのか?」

 キラーバットがジャイアントバットを引き連れてきた!

 よく見ると、子供達が鉱石を当てたジャイアントバットは生きている。仲間を呼んだのだろう。

「加勢するか?」

「要らねえ!さっさと行きやがれ!…ったく、なんだって今日はイエローテイルじゃねぇんだ?」

 男の剣は当たらない。

「やっぱりお前ら助けろ!素材は出たらやるから!」

 嫌だけど、子供達が可哀想だ。群れのボスのキラーバットに魔法でとどめを刺すと、ジャイアントバットは逃げていった。

「何だ?魔法使える荷物持ちがいるのか?お前!こっちに来い!そっちの倍の賃金支払ってやるぞ」

「私は冒険者だよ」

「はあ?…いや、でも格好が…」

 男が、マナのマントに手をかける。

「あんた、何うちの妹に手を出してんだよ!」

 ルードの威圧にびびった男は、数歩下がる。

「大体、一人で子供達を守りながら戦ってくるなんて、無謀じゃない?」

「ううん…10階層で、二人殺された。僕達は、替えのきく荷物持ちだから、あまり守ってもらえない」

「ちっ…こいつらだって経験値も金も欲しい。持ちつ持たれつだろうが」

「最低!人の命なんだと思っているの?」

「マナ、もういい。行くよ」

「でも…」

「ルードの言う通りにしましょう、マナ」

「ルビー母さん…分かった」

 世の中には、いろんな人がいる。考え方だって人それぞれだ。

 マナは、頭の上のスカイを捕まえてもふる。ささくれだった心が、少しだけ和らいだ。



 




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