学校
折角の旅行中なのに、学校見学に来た。一応森からは一番近い大きな町だ。
どこの国も領有権を主張しないので、魔の森はどこの国にも属さない。
ツリーハウスから一番近いのは、ギルティア国の町メーダ。
学校のシステムはどこの国でも似たようなもので、初等学校が2年。中等学校が2年。高等学校が3年ある。
平民の子は初等学校だけ行くのが基本で、これにはギルドも絡んでいる。文字が読めない、依頼人との交渉も出来ないのでは話にならないからだ。
文字や計算、一般知識の他にも戦い方や魔法も教えてくれる。
私が知りたいのは常識。あとは他の子に適当に合わせていればいい。
私は遠くの村外れに住んでいる事になっているので、寮に住む事になる。
職員が私のギルドカードを見てびっくりしていたけど、失敗したかな?
でも学校ではギルドに登録するし、二重登録は出来ない。それだとルードがどうして二重登録出来たかというと、前のカードは破棄したし、魔力まで偽装出来るらしい。
長生き種族も大変だ。
あとは後日クラス分けのテストを受ける為に来るようだ。
魔の森に近いせいか、町を囲む塀も頑丈そうだ。
高ランクの冒険者が多いこの町は、魔の森の脅威から国を守っている。ギルド本部のあるこの国での冒険者の地位は高い。
有難い話だ。ランクさえ上がれば、もうこそこそと生きなくていい。誰も私を虐めたりしない。
私は少しだけ大きな校舎を振り返った。不安はある。でもここには私の過去を知る人はいない、かつてのクラスメイトもいない。
今度こそ。
スパイダーシルクの服は見る人が見れば分かってしまう。なので、普通の服も何枚か仕入れた。
ルビー母さんは残念がったけど、貴族でない私が服で目立つ訳にはいかないのだ。
「おお、お嬢ちゃん達は大丈夫だったか?」
「何がですか?」
「いや、今は収まったがめちゃくちゃ揺れてただろ?」
「だ、大丈夫です」
確かに置いておいた人形はころころ転がっていたけど、そんな事があったんだ。普通に波があるから転がっていると思ってた。
「ほう。さすがちっちゃくても冒険者だ」
だから、一言余計。
その時、船が大きく揺れた。
「なんだ!」
ガツンと激しい音。慌てて走り出す船員を追ってマナも走る。
「エンペラークラーケンだ!」
うん?えんぺらのイカ?ふふっ。えんぺらは大好きさ!
「ほら、緊張感のない顔してないで、行くよ?」
甲板に走り出ると、他の眷族達も来た。ルビー母さんの斬糸が、脚の一本を切り飛ばすが、再生能力が高く、すぐに新しい足が生えてくる。かといって足は無視出来ない。縦横無尽に動いて攻撃してくるから、切らないと本体に近づけない。
空歩で足場を作り、ユキのソニックウエーブに合わせてダークソードで足を切断するが、やはり再生してしまう。
それらを回収しつつも、脳を直接狙う方法を考える。
(ルビー母さん、ルード!私が反重力で本体を浮かせるから、脚の付け根の上を狙って!)
私は空間把握でイカ本体を見て、込める魔力を増やす。
浮いたと同時にルードはホーリーを、ルビー母さんは破壊光線を打つ。
脳を消滅させられたイカが海に沈む前に、収納庫に頂く。
(にゃあぁ…)
がめついんじゃないよ?倒した者の権利として美味しく頂くだけだし。
(ごめん、マナ。やっぱり僕は何も出来なかったよ)
(雷魔法使わないだけ進歩したよ)
これだけ大きいんだから、身も厚いよね。イカステーキにしよう!




