江戸時代?
シャポーの港に着いた。…あれ?日本?江戸時代?
「変わった民族衣装だね」
「そう、だね」
「明日の朝一刻には出航するからな。居なかったら置いて行くぞ!」
ちょんまげ、腰に差した日本刀。女の人の中には、着物や袴をはいている人もいる。ただ、普通にシャツとズボンやスカートの人もいる。
黒髪黒瞳の人は稀にしかいない。あ、獣人さんも普通にいるんだ…狐、かな?
倉庫の影にゲートを開いて、町に出る。どことなく和風な街並み、だけど普通に冒険者風な人もいる。
「ルード、私、武器を見たいな」
お子様抱っこされているので、私に自由はない。
「ええ?…いいけど」
マナは自分で作れるじゃないか、という言葉を飲み込んだ。
やっぱりあった!刀だ。武器マニアって訳じゃないけど、ちょっとした憧れがある。
「抜いてみていいですか?」
「あー、怪我するぜ?」
いや、その前に腕が短くて抜けない!…酷い。
「外国の人は俺らの武器が珍しいって買って行くんだけどよ、手入れが難しいからって後から文句言ってくるんだ。あ、こら!それはだめだ!」
小太刀を手に取ったマナは、それをすらりと抜く。
「…抜いちまったよ…そいつは爺さんの自信作で、生半可な腕じゃ抜けないんだ。まさかその歳で凄腕の冒険者か?」
「冒険者だよ。おじさん、これ下さい」
「いいけど、高いぞ?」
「何の付与も付いてないし、おまけしてくれるよね?」
「ちっ…鑑定持ちか。いいぜ。そいつは人を選ぶから、抜けた奴にしか売らない事にしてたんだ」
ギルドカードの残金が少なくなってしまった。でもマナは満足だ。ベルト式の剣帯も買って、腰に装備した。ベルトを切る前にサイズ自動調節を付けてみたけど、私サイズまでは縮まなかった。残念。
「おいおい。職人の魔法まで使うのかよ」
ベルト穴を開けながら呆れたように呟く店主。
「お兄ちゃん!次はこっち!」
「こら、マナ!走るな!」
「ふふっ、いいお兄ちゃんね」
「ずるいにゃ!ユキはお姉ちゃんになるにゃ!」
(いいなー、人化。僕もしたい)
食べ物は変わりないかな?あ、団子売ってる!懐かしい。
うーん。みたらしだけか。
「あんこはないんですか?」
「はい?あんこってなあに?お嬢ちゃん」
後ろからひょいと持ち上げられた。
「こら、迷子になるだろ?」
「小豆を甘く煮たものだよ」
「うーん?この辺にはない食材だね」
何と!それじゃあ和菓子もないの?
「次は食材屋ね!」
「はいはい」
「にゃーもマニャを抱っこするにゃ!」
「ユキはもう少し二足歩行に慣れてからな」
「ルードはずるいにゃ!」
「ていうか、私だって一人で歩いていいじゃん。迷子になんてなりようがないんだし」
つながりがあるから、気配を辿るのも簡単なのだ。
「だーめ!人ごみで見えなくなるから」
「もう私も7歳だよ?いいかげん子供扱いはやめてほしいな」
次来る時は、ゆっくり見てまわりたいな。
朝いちで出てしまうので、今日は船で寝る。スカイは嫌がったけど、どうせ亜空間に入ってしまえば一緒だ。
宿も気になったけど、寝起きの悪いルードを起こす方が憂鬱なのだ。
反物が気に入ったルビー母さんは、柄は無理だけど、絞り染めのやり方を教えてあげた。
出航時、魔法使いの人がまだ具合が悪いので、スカイが風魔法を使って出航させた。
次の南国アズバンまでは長いので、一旦ツリーハウスに戻る。昼食は食材持ち込みの注文形式なので、今日は夕食前に戻ればいい。
ルビー母さんは、早速絞り染めの実験をしてみるようだ。布の状態から服にする訳ではないので、思い通りの模様が出せる。
私は農園に入って、いつもの収穫と種まき作業をする。
米や小麦の値段が下がったおかげで、金策に走らずに済んでいる。
そういえば、カレーの実は果樹の部類に入るのか、それとも畑か。それすら知らない。
少なくなってきた染色の為の花の種もまいて、農園を出た。
亜空間からゲーム内に入ったので、ルードは竜に戻って寝ていた。
ユキはもふもふクッションで丸くなっているが、私が出てくると、ソファの方に来た。
久しぶりに小説が読みたかったので、サイトを開いた。
わ、この小説、いつの間にか完結してる!読まないと!
読んでいたら、ユキに抱っこされて、膝の上に乗せられる。
「重くないの?」
「大丈夫にゃ。気にしないでスマホを見てていいにゃ」
後ろからすりすりしてきて、嬉しそうだ。まあ、ユキの好きにさせておこう。
いつの間に起きたのか、ルードが首を上げてこちらをじっと見ている。
な、何?…うーん。これから先、一人で座れなくなるかもしれない。




