船旅と、憑依
マナ達は、大きな船に乗り込む。Aランク冒険者は割引がされるので、半額で乗れた。
ただし、有事の際には手を貸さなければならない。
「マナも黙っていれば子供料金で乗れたのに」
「それは私が5歳に見えるって事?」
「だって、受付の人がそう言ってたし」
「私は6歳だもん!もうすぐ7歳だし」
「なんで1歳位でこだわるかな?それが分からない」
「小さく見られるのは嫌」
「女の人って、若く見られるのは嬉しいんじゃないの?」
「大人はね」
ルビー母さんは80過ぎてるけど、年齢にはこだわっていないみたいだ。
「ルードだって、56歳なのに」
「僕も早く一人前と認められたいよ」
(スカイ、どうしたの?具合悪い?)
(揺れてて気持ち悪い)
うわ、きらきらが。
マナはクリーンとピュアできらきらを綺麗にした。黒い甲板まで綺麗な木目が見える位、綺麗になった。
ていうか、鳥って船酔いするの?
(でもスカイも、状態異常耐性あったよね?)
(種族が変わった時についたけど…日も浅いし。うう…)
うわ、また。
(影に入る?)
(少し飛んでくる)
「スカイ、情けないにゃ」
「それでこそスカイって気がするけど」
確かに、ルビー母さんの言うとおりだ。
「潮風が気持ちいいね」
「マナ、随分楽しそうだ」
二つに結んだ薄紫色の髪が、風になびく。…!
(マナ!偽装)
いけない。気が緩んでた。いきなり髪の色が変わったりして驚いている人はいなさそうだ。誰も見てない。
(でもさ、像は白いし、私は女の子なんだから、誰もサマルト様の関係者だと思ったりしないと思うな)
(髪はね。でも目は駄目。金色が神聖なのは、常識だから)
孤児はポイント0だったのに、神様が体作るとか、貴族の20000ポイントより待遇良すぎる。ミルクの件もそうだけど。
お陰でみんなに会えたけど。
余り考えなかったけど、何でかな?ポイントも使われてないし。まさか運に一万振ったお陰かな?
(僕の常識も母様に教わったものだから、人のそれとは違うし。1年位学校に通ってみたら?)
(義務じゃないんでしょ?)
(違うけど、初等学校は大概の子が通うね。家の事情もあるから、年数は変わるけど)
確かに常識知らずは認める。
(でも私、もうすぐ7歳だよ?)
(だから、その辺が家庭の事情?マナは亜空間移動使えるから、いつでも戻ってこられるし)
(通うとしたら、春から?)
(え?新年からに決まっているでしょ)
そこからして違うのか。常識知らずなのも人としてどうかと思うし、今の私なら、結界魔法もあるから、痛い思いもしないで済むし、1年位なら、乗り切れるかな?
現金を手に入れる為にはギルドとかで働かないといけない。人と全く触れあわないで生きるのはやっぱり無理だよね。
(分かった。ルードの言うとおりにしてみる)
(よかった。僕だけじゃ、マナに常識を教えるのには不安があったから)
(ルードはいつか、私が森を出ると考えている?)
(そうは思わないけど、食材を求めて今もこうして旅に出ている訳だし)
(むう)
私が食い意地張ってるみたいじゃん。ゲーム内でもカレー粉は手に入るけど高いし、カレーの実の方がいいと思ったんだもん。
まだカレーの実の苗木は解禁になっていない。どういう基準で解禁になるか分からないけど、カレーは好きだし、カレーうどんも作りたい。
船は初めてだったから、私も船酔いするかと思ったけど、私には健康体の加護スキルがあったからかな。
さて、今晩の見張りはどうしよう?順番的にはスカイだけど、朝になったら亜空間の周りがきらきらだらけだったら嫌だな。
それに、宿なんかに泊まるたびに誰かが我慢しないといけないのも考えものだし。
でも亜空間に入っちゃうと、外の様子は分からないんだよね。
「何かいい方法無いかな?」
見張りの代わりがいればいいんだよね?
「ルビー母さん、私の人形って作れる?目と耳も付けて」
「ふふっ、珍しく子供みたいな要求ね」
「いや、そういうんじゃなくて、並列思考があるから、人形に視覚なんかを同調できないかなって」
「よく分からないけど、出来たわよ?これでいい?」
何魔法から作ればいいかな?暗黒魔法のネクロマンシアから、人形を操る?
『補助魔法 憑依を覚えました』
憑依って…怖いけど、意識の一部を残しておけそうだ。
「補助魔法覚えたから、今日から見張りは大丈夫だよ」
(よかったー!僕、まだ体調が悪くて)
(スカイは慣れてね?状態異常耐性の基礎レベルが低いからだと思うから)
(あう…でも今晩は、ゆっくり寝ていいんだよね?)
(うん。明日また頑張ってね?)
マナは、憑依の魔法を使った。うん。維持も問題なさそう。
試しに亜空間に入ってみたけど、効果は維持されているようだ。




