討伐依頼 1
二人組の冒険者は、戦士系がミリアさん。魔法使いがシャロンさんで、友人同士でパーティーを組んでいるそうだ。
パーティー名は紅の翼。
「そういえば、私達はパーティー名とか考えてなかったよね?どうする?」
「…どうでもいい。眠い」
「マニャと愉快な仲間達にゃ」
「ユキってば、それじゃ私がリーダーみたいじゃん?」
センスも微妙だし。
「あら、いいと思うわよ?」
「ルビー母さんまで…母さんが一番年上だから、母さんがリーダーになってよ」
「私はギルドに登録したばかりだもの。一番の経験者はルードじゃない?」
「ルードと愉快な仲間達にゃ?」
「却下。ていうかそのネーミング、センス悪い」
「起きてたの?ルード」
寝てたらリーダー押しつけちゃおうと思ってたのに。
「お姉さん達、何かいいアイデアありませんか?」
「白い翼…ルビーさんとユキさんの髪の色から取って」
「ちょっとシャロン、それじゃ私達のパーティー名の決め方と同じじゃない」
「ちょっと違う…ミリアの髪は赤いけど、私は目が赤い」
「でもそれじゃあ、リーダーのルードさんに関係なくない?」
「銀色は白に似てるから、ギリOK?」
「リーダーはマナだよ」
「ええ?一番年下の妹さんにリーダーさせるの?」
「ユキの方が妹だもん」
「ええと、家族的な意味で一番の新顔なのよ」
「なら、もふもふ家族でいい?」
「意味不明ね…ユキさんとそのサンダーホークはもふもふしてそうだけど」
「テイマーは素質がないとなれない。マナちゃんがリーダーでもいいと思う」
「まあ、私の我が儘にみんなを巻き込んでいる事が殆どだし、仕方ないか」
馬車は、森の手前で止まった。
「先にスカイに様子を見に行って貰いますね」
スカイは、森の奥へと飛んで行った。
「従魔と契約して長いの?」
「スカイと契約したのは私が二歳の時なので、もう4年ですね」
「凄いわね。サンダーホークは人里では滅多に見ないのに」
「田舎育ちなので。罠にかかっている所を助けたら、契約してくれたんですよ」
「いいわよね。私もテイムしたい」
「ミリアは才能ないと思う。シルバーウルフに手、ガブガブされてたし」
「愛情は、いつか通じるわ!」
スカイが戻ってきた。
(見つけたよ!数は300位かな?ハイオークとか、オークソルジャーの姿も見えたよ?)
マナは、スカイに聞いた事を二人に話す。
「んー。その規模ならオークキングがいるかも?今更だけど大丈夫?何なら僕たちだけで行くけど」
「ちょっと!そんな小さな子は連れて行って私達は無理だと思うの?」
「ハイオーク以上の奴と戦った経験は?」
「キングはないけど、大丈夫よ。そっちこそ、みんな私達よりも年下じゃない!特にマナちゃんは、まだ小さいし」
「マナの事は心配してないよ。その辺は自己責任だからね?」
「い、言われなくても」
「どうする?先に雑魚は減らしておく?」
「ユキ、獣化して先にキングを暗殺して。マナはフォロー。そうしたら合図して、大規模殲滅魔法を使おう。二人は集落から漏れたのをお願い」
「危険過ぎるわよ!」
「ランク的には僕が一番高いし、家族の能力も分かってる」
「私もルードの作戦がいいと思うな。強いのは大規模殲滅魔法じゃ死ななそう。この距離なら念話も通じるし」
マナは、光魔法を元にした不可視の魔法をかける。
「!消え…気配もない?」
「後は大丈夫。君は何の魔法が得意?」
「風なら、上位魔法使える」
「なら詠唱待機しておいて」
ルードは、マナの目を通して状況を把握する。
ログハウス風と言えば聞こえはいいが、その辺に生えている木や枝葉を利用した、いわゆる掘っ立て小屋だ。
ユキは四足歩行になって進む。二足歩行での忍び足はまだ難しい。
マナも、魔法を発動させながら気配を絶ち、忍び足で歩く。
真ん中に掘られた井戸の近くに、一際大きな掘っ立て小屋があった。
外には、人サイズの鎧やギルドカードも見つけた。
マナはそれらを収納しながら人の気配を探る。
集落に人の気配はない。救出は考えなくていいだろう。




