港町ルキア
スカイのゲートを使って、港町ルキアの近くまで来た。
結構大きな町で、まずは買い物する事にした。
岩海苔が干された状態で売っていた。それにみりん干しや、いかの一夜干しも売ってる!
ゲーム内では、干して乾燥させるという作業ができない。干し芋でもその作業で失敗した。日にちが経って時間は充分な筈なのに、まるで収納庫のように変化がなかった。
だからそれを知ってからは干し椎茸や切り干し大根はツリーハウスの一角で作るようにしている。
米やそばの実は何故か干された状態で収穫できるから、すぐに精米できるのは不思議だけど、何しろスマホの事なのでわからない。
椎茸や大根は大丈夫なんだけど、魚系は臭いで魔物が寄ってきちゃうんだよね。
「マナ?とりあえず船の確認に行かないと」
「そうにゃ。お買い物は後でもできるにゃ」
うーん、それはそうなんだけどね?みんなの美味しい食事は材料がないとできないのさ!
しかもこうして新しい食材を見つければ、ゲーム内で出てくる可能性もある。
まあ、スマホ内で収穫した食材が実際に取り出せるだけ充分チートだ。
南国アズバンまでは、島国シャポーを経由していくと8日。直通だと、6日で行けるようだ。直通便は明日。経由だと五日後だけど、経由して行く方に決めた。知らない国を廻って亜空間を開けられるなら、その方がいいからだ。
その空き時間の間に、ルビー母さんとユキの、冒険者登録をした。ユキは従魔でも登録してあるけど、アサシンキャットでだし、人として登録した方がいいと思った。
最低ランクだけど、ランクアップの試験さえ受けられれば、二人とも高ランク間違いない。
ただし、実績が全くないので、高ランクの素材を売る時は二人に売ってもらう。
ダンジョンにも潜るつもりだし、素材は簡単に集まるだろう。
それ以上に嬉しいのは、珍しい食材が手に入る事だけど。
一応五日間は宿に滞在予定だ。家族なので4人部屋で、従魔オッケーな宿にした。一人は見張りで急に人が訪ねてきた時に備えて、あとは亜空間だ。
眷族化の恩恵で、いつでも私の亜空間に出入り自由だから出来る。
それと、王都で見つけた大きなベッドをもう一つ買って、繋げて使っている。みんな私と接触して眠るのを望んだからだ。
ユキは人化を解いても大きさは殆ど変わらないけど、ルビー母さんとルードはたまにしか一緒に眠れない。
特にルビー母さんとユキは、人化を覚えてから日が浅いので、スキルが負担になっている。
ツリーハウスの管理もしなきゃならないルビー母さんも、眷族化してからは蜘蛛の巣よりも私といる方を選んだ。正直嬉しい。あまり罠にはかからないし、こういう旅の間はたまに様子を見る事もあるけど、亜空間移動で一瞬だ。
「折角だから、食肉採取の依頼とか受けてみる?」
中途半端な時間だし、流れだけでも掴んだ方がいいだろう。
(戻らないの?)
(んー、ここにいる感じで、ツリーハウスが心配なら戻るよ?)
(あ、蜘蛛に戻りたい?でも、慣れた方がいいと思うな)
私の偽装と同じで、スキルは慣れないと使いこなせない。
(無理だと思ったら、影に入っていいから。ユキもね?)
獣人は獣化っていうのがあるらしいけど、ルビー母さんはまんま魔物だから、危ない。
近場でやたら弱いホーンラビットを狩ってギルドに持っていくと、ギルド内が妙にざわついていた。
「何かありました?」
「少し先でオークの巣が発見されたのよ。…え?実力はAランク相当って…あなたが?」
「そうですね。お兄ちゃんは正真正銘のAランクですけど」
「本当?助かるわ!」
「マナ、呼んだ?」
「オークの巣だって」
「えー、面倒。オーク位なら中級ランクで対処できるじゃん」
「それが、規模が大きいのよ。他にBランクの二人にも声かけているし、お願いできないかしら?」
「むしろ僕たちだけで行きたいけど」
「そうだね。ルビー母さんもユキもいるし」
(僕もいるよー?)
「え?確か今日登録したばかりよね?」
「ルビー母さんは私より強いし、ユキも結構強いですけど」
「登録したてだから弱いっていうのは了見が狭過ぎると思うな」
「明日、朝一で出発すると思うから、一刻に来てね」
大変だった。一番大変なのは半分眠っているルードを連れて来た事。その後も大変だった。私が5歳位とかいうんだよ。もうすぐ7歳なのに酷いよ。
Bランクの二人は、20代女性二人で、私達は家族だと説明した。
ギルドが馬車を手配してくれたので、みんなでそれに乗ってやっと出発だ。




