襲撃
ルビー母さん!スカイ!…私…。
(どうしたの?マナ)
「スカイ!ごめん!ルビー母さんも、ごめんなさい!」
「一体どうしたの?」
「眷族化したから…私が死ぬ時は、多分一緒に死んじゃう!」
「うーん、そうねー?そうなるわね」
(でもマナ、僕は全然大丈夫だよ?元々マナに救われた命だし、むしろ感謝しているよ。マナのおかげで進化だってできたし)
「母さんだって、もうマナ無しの生活には耐えられそうもないから、いいのよ」
「でも…ルード?もしかして知ってた?」
「むしろマナが物を知らなさすぎ?」
「うう。引き篭もりの弊害か」
「それでも僕は、眷族化を望むけどね」
(ユキもにゃー!)
「どうして?特にルード、竜はすごく長生きなんでしょ?私の眷族になったらあと長くても100年だよ?」
(ユキはマニャが大好きにゃ!それに白い毛の魔物は、長生きはできないにゃ。きっとユキの方が先に死ぬにゃ…)
「竜は上位存在だし、僕を眷族化できるかどうかは分からないけど、僕だってマナが大好きだよ。インペリアルドラゴンの役目は…母様に万一の事があった場合だって、卵が孵れば僕の役目はなくなる」
「え…何かその言い方だと、ルードはお母さんの代わりに聞こえるんだけど?」
「そうだよ?神の代行者がいなくなる訳にはいかない。すべてのリスクを考えた上で僕はマナの従魔になったんだから、覚悟の上だよ」
「うう…そんな覚悟要らないよ」
「仲間外れは承知しないよ?神の娘のマナなら、僕を眷族にできるよね?」
そして妙なプレッシャー。どちらにせよ今すぐは無理だ。
魔の森の木々も、ほんのり色づいてきた。もうすぐ春が来る。体内の魔素も安定したけど、ユキの眷族化には踏み切れていない。
自分の命よりも主人を守る事を望む眷族は、命を投げだしても主を生かすだろう。ルビー母さんとスカイが眷族になった事で、感覚として分かる。
この世界は、特に魔の森では、命が安い。弱ければ死ぬしかないし、私も多くの命を糧にしてきた。
生きる為には強くならなきゃいけない。分かってはいるし、その事にためらいはないけど、大切な従魔や眷族を犠牲にはできない。
寝ていたルードが、首を上げる。マナも大きな気配を感じて、警戒する。
現れたのは、通常のワーウルフよりも更に大きな魔物。
看破 ワーウルフの特殊体 **の恩恵で特殊進化したワーウルフ **の祝福
「まだ子供だが、確かにインペリアルドラゴンのようだな。我が主の軍門に下れ!我が主は、いずれこの世界を支配するお方だ。従わぬなら、いずれ脅威となるかもしれないお前の命を絶てと命じられている」
「主とは何者だ?お前程の強き存在が従うほどの者なのか?」
「勿論だとも。主はオーガロードだが、只のオーガロードではない。この世界の支配者となる。主のお力ならドラゴンさえもひとひねりだ。さあ、どうする?」
「断る!インペリアルドラゴンは神以外に仕える事はない」
「ならば死ね!」
ワーウルフが、大きな剣を振りかぶる。ルードの鉤爪が、それを弾く。
魔力ブーストを使ったドレインは、何かに弾かれた。
「マナ!亜空間に入るんだ!」
「んん?お前が従魔になっているという噂は本当なのか?ならばお前から死ね!」
ルビー母さんが、ワーウルフの腕を絡め取る。その隙にスカイが炎翼斬を放つが、すぐに傷口は再生する。
糸がちぎれ飛び、バランスを崩したルビー母さんがよろける。ルードの一撃が躱され、結界魔法も斬り裂かれる。
再びの攻撃に、躱そうとするが、間に合わない!
覚悟していた痛みはなく、目に映ったのは、腹部を切り裂かれたユキの姿だった。
「ユキ!」
すぐに魔力を込めたエクストラキュアをかけるけど、間に合う…?
ルビー母さんの破壊光線にワーウルフが後退する。
こぼれ落ちる命を繋ぎ止めたくて、もう一度エクストラキュアをかける。傷口は何とか繋がったけど…マナは、ユキを影に入れた。
許さない!ユキを傷つけた事。私の家族を狙った事。
金のオーラがマナを包む。そのまま右手を上げ、ワーウルフに向ける。
金の光は前にいたルードを傷つける事なくワーウルフを包み、消滅させた。
マナは、そのまま倒れた。
「何だったの…?今の力は」
「消滅の力はホーリーに似てたけど、別物だね」
人化したルードが、マナを抱き上げる。
「ユキも無事みたいだけど、…存在進化待機?」
風圧で飛ばされたスカイも戻ってきてルビー母さんの肩に止まる。
「あの魔物も、普通のワーウルフじゃないわね」
「僕の鑑定も弾かれたよ。何か強力な力に守られていたのだと思う」
何か、邪悪なもの…手下でさえ苦戦したのに、僕の力でやれるのか。




