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ルビー母さんの眷族化

 蜘蛛の巣に朝露がかかって綺麗だ。それを見ながらマナは日課のストレッチをする。

 マナの体は毎日のストレッチのおかげでかなり柔らかい。最近はそこにネットで検索した太極拳の動きも取り入れている。

 ルビー母さんは、最初私が踊っているかと思ったみたいだ。けど、柔らかい体を保つ事が戦いに有効だと知ってからは、上半身だけストレッチに参加している。

(マナ、お土産)

 収納庫からスカイが魔石を出してくれる。何を食べてきたかはあえて聞かないけど、スカイは早起きだからもう食事をしてきたのだろう。

「ありがとう、スカイ」

 頭の上にスカイを乗せたまま、朝食の準備にかかる。

 

 今日は特に冷える。この辺は日本のようにうだるような暑さも凍えるような寒さもない、暮らすのには楽な場所だけど、今日は珍しく雪も降っている。

 私はマントをしっかり着込んでユキの隣に寝そべって小説を読んでいた。

 突然の大きな気配と暴風に、私は呆気なく飛ばされるけど、間一髪蜘蛛の糸が私を捉えた。

(金の姫の幼子よ。私はこの地を離れる)


 空の光を遮る程の黒竜が、ルードに語りかけている。

(黒竜殿、あなたがこの地を離れるほどの脅威が?)

(脅威というより煩わしいな。勧誘が鬱陶しくて、寝てられん。暫くは金の姫の護衛でもしようかと思っている)

(了解した。母様によろしく)

(騒がせて済まなかった、小さき者達)

 黒竜は飛び立って行った。

 

 アンカーのようにがっちりと木に爪を立てていたユキも、やっと警戒を解く。

(マニャ、大丈夫にゃ?)

(うん。びっくりしたね…?スカイ?)

(飛ばされたー!今戻る)


 スカイも戻ってきて、ルードに話を聞く事にする。

「さっきの竜も知り合いなの?」

「一応は。生まれたての頃に一度会ったきりだったけど、僕が魔の森に住みだしたのは聞いていただろうし」

「ルード?一人で調査に行こうなんて考えたらだめだよ?私の鑑定が、看破に進化したから私も役に立てると思うし」

「ええ?…本当に凄いな、マナは。そして僕の考えもお見通しだ」

「そりゃそうでしょ、パスがつながっているんだから」

「でもマナは、やっぱり連れて行けない」

「それは私が弱いから?」

「そうだね」

 うう…悔しい。単なるレベルだけではない。私の技術が足りていないんだ。

「なら、私を強くしてよ!怖い所にルードを一人で行かせるのは嫌なの!」

「これ以上マナが強くなったら、人としての領分を超えちゃうかもしれないよ?」

「私だって守られてばかりは嫌!家族みんなで魔の森で暮らしていくんだから、強くなりたいよ!」


 私は、みんなの強さを観察した。一人一人の存在をもっと強く感じて、感覚を共有できるように。

 まずは狩りに行くルビー母さんからだ。蜘蛛の糸はどんな風に出しているんだろう。その機動力は、どうやって?

 人間から糸が出る訳はないけれど、ルビー母さんは、魔力で糸を作り出しているのは赤ちゃんの時に見た時から知っている。

 繋がるパスが、強くなっていくのを感じる。そして、実の子供以上に愛されていたことも。

 ルビー母さんも私と深くつながっているのを感じるのか、うれしそうに笑って、手本を示すように魔物を屠る。

 ルビー母さんは感覚で糸を操っている。深く同調しているから、それが手に取るように伝わる。

『補助魔法 ライントリックを得ました。ルビーが眷族になりました』

 硬い下半身の鎧のような防御力も、結界魔法に取り込まれて私の結界は、強くなった。同時にルビー母さんも、人化の能力を得たようだ。

 人前に出られず、いつもお留守番だったルビー母さんは、淋しかったんだ。

 ライントリックの魔法を使うと、魔力の糸を自在に操れる。本物の糸じゃないから残すことはできないけど、戦いの幅が広がったし、何よりもルビー母さんとより強く繋がれて嬉しい。

 

 ツリーハウスに戻った私は、ルビー母さんに人化してもらうように頼む。

 タンクトップ一枚の南国風美女の裸体に、焦った。

「あわわ、何か穿いて!」

「そうねー?」

 考えたルビー母さんは、タンクトップにミニのフレアースカートを編み足した。

「普通に歩ける?」

「大丈夫だけど、戦闘力は落ちるわね。これなら下半身蜘蛛になっても服は破れないから、戦闘時は元に戻るわ」

(ずるいにゃ!ユキも眷族にするにゃー!)

(マナの役にはたたないかもしれないけど、僕も混ぜて!)

「…本当にマナは規格外だな。眷族を得るなんて」

 口ではそんな事を言いながらも、ルードも羨ましそうだ。



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