絡まれたマナ
亜空間移動を、やっと覚えた。今まで亜空間を開いた所ならどこでも行けるようになった。
ドラ○もんのどこでもドアはきっとこんな感じなんだろうな。
亜空間の外はやっぱり亜空間なのかな?そもそも収納庫も亜空間も、現実とは違う、位相のずれた世界のようだ。
時間停止するかどうかの違いはあるけど、どちらも亜空間って事になる。
だからきっと、亜空間の外は亜空間なのだろう。
ドアをイメージするからドアに見えるだけで、実際は空間をつなげて使っているのだと思う。
湖の街に来てみた。夜行性なユキは、昼間は寝ている事が多いから、今日はスカイだけだ。
薬草採取の仕事をしたいと言ったら、ルードは寝ているそうだ。
スカイを頭の上に乗せてギルドの受付をしていたら、話しかけられた。
「おいお前!無視するな!」
肩を掴まれて振り向かされて、初めて私が話しかけられていたと気づく。
「は…?」
後ろにいたのは、二十歳位の派手な服を着た青年と、屈強そうな男。
「その頭の上の、毛色の変わったサンダーホークを買ってやる。金貨5枚でどうだ?」
「売りません。スカイは従魔で家族ですから」
しかもサンダーホークじゃないし。
「お前のような子供が、サンダーホークと契約できるはずがない!お前もどこかで盗んできたんじゃないのか?」
「…これが、拘束しているように見えます?」
「な、なら、お前ごとウチで雇ってやる。悪い話ではあるまい?このような所で小銭を稼ぐよりは、良い仕事をさせてやる」
「お断りします。家で家族も待っていますので」
「私を誰だと思っている!ガランド子爵家の者だぞ!」
「だから何ですか?…スカイ、少し離れていて」
マナは、護衛の男がスカイを捕まえようとしているのに気がついて、外に出した。
「何故逃がす!」
「捕まえられそうになっていたからです」
「この町に住めないようにしてやってもいいんだぞ?」
「構いませんよ?私、この町に住んでいる訳ではないので」
「ぐ…!とにかくサンダーホークをよこせ!命令だ!」
「聞く必要はありませんねでは私は依頼をこなさなきゃならないので」
本当に面倒くさい。
(スカイ、影に入ってて)
(うう…僕はマナの護衛なのに)
(こういう状況なんだから仕方ないの。私がいいって言うまで出てきちゃだめだよ)
影に入ったのも当然見られただろうし、後も付いてこられている。依頼期間は三日あるとはいえ、出直すのも悔しい。
もし私に手を出すなら、容赦はしないつもりだけど。
薬草を採っていたら、すっかり囲まれていた。
「大人しくサンダーホークを渡せ!それとも痛い目を見たいか?」
「貴族って、民の見本なんじゃないですか?それをこんな小さな子供を脅して家族を取り上げようとするとか、いいんですかね」
見せつけるように剣を抜いてきたので、マナも短剣を抜いた。
剣で斬りかかってくるけど、遅い!私は、剣の根元を狙って剣を振り抜いた。
剣が根元から落ちる。
「…何!」
おっさんは驚いているけど、そんななまくらじゃ、斬れないと思う。
私は護衛の武器を全部ダメにしてやって、貴族を見る。魔法を使おうとしているみたいだけど、詠唱が遅い。
マジックブレイクで魔法をキャンセルさせるけど、何が起こったか分かっていないみたいで、また初めから詠唱をやり直している。
マナドレインで魔力を奪ってやったらあっさりと膝をついた。大分手加減したつもりだったけど、もう魔力なくなった?
私を捕まえようとしていた男達も、主人が突然倒れて焦っている。
とりあえず規定の本数は摘めたので、ギルドに戻って納品した。
「大丈夫だったの?何かされなかった?」
「平気ですけど、この町にはしばらく来ない事にします」
「他人の物を奪うのは法律違反だから、相手が貴族でもあなたは悪くないわ。堂々としてて大丈夫よ?」
「向かってきたら迎撃しても大丈夫ですよね?」
「それも問題ないけど…襲われたの?」
「武器をダメにして、あの貴族の人は魔力を奪ってやりましたけど」
「!ええ…あなたが?」
「はあ。そこそこ強いつもりなので」
「ええ?!…食肉採取の依頼で、ハイオークにグリーンバイパー?キラーフィッシュも…」
「兄も母もいましたけど。どっちも私より強いので」
「…ギルドでも有名人だったりする?」
「兄は私と同じFランクですけど。母は冒険者じゃありませんし」
「えええ…。そうよね。従魔もサンダーホークにアサシンキャットですものね…本当に5歳?」
「先日6歳になりましたけど」
「なら、お兄さんも一緒に試験を受けてみない?合格すればランクアップよ?」
「あまり目立ちたくはないんですけど…兄には伝えておきます」
マナはギルドを出て、路地から亜空間移動した。




