王都
まだ未発見のダンジョンもあるらしいけど、大体の場所は分かった。
「強い魔物はおいしいんだよね?」
「大概そうかな?」
「じゃあ、ルードも?」
「!…ええ…竜の肉は美味しいらしいけど、食べないでね?」
「やだなー、ルードを食べる訳ないじゃん。あはは」
「…そのうち本気で食べられそう…マナも美味しいかも?」
「うーん、子供の肉は美味しいらしいけど、食べないでね!」
「腹の足しにもならないよ」
食べるなんて勿体ない。
珍しくルードは明け方近くに目を覚ました。やけに暖かいと思ったら、隣のベッドに寝ていたはずのマナが、入り込んでいた。
くっついて寝るのは珍しい事じゃないけど、人の姿で二人きりなのはなかったかも?
マナの魔力は心地よい。神の娘だから当然なのかもしれないけど、清冽で、体の奥までしみわたる。
プレゼント代わりのマナの我が儘を聞いてやるつもりだったけど、これじゃご褒美だな。マナをこんな風に独占できるなら、街に来るのも悪くない。
王都二日目。今日も図書館だけど、ルードはあまり本に興味がないのか、途中で寝てしまった。
残念ながら魔法関係の本は、殆どが平民は閲覧禁止になっていた。
孤児なんだから仕方ないけど、不条理だ。それだけ貴重な本が多いのかもしれない。
適当に興味をひく本を読んでいたけど、子供が飽きもせずに本を読んでいたからか、他人の視線が鬱陶しい。
声をかけられて、はっと気づいた。いつの間にか閉館時間が迫っていた。慌ててルードを起こして図書館を出た。
「お話と同じように、竜は寝ぼすけなの?」
「僕はまだ子供だから、そこまでは寝ないけど、何日も寝たままなのは珍しくないよ。母様位になると、何年も起きないし」
「何年もはすごいな。お腹空かないの?」
「空くけど、獲物の魔物はそこら中にいるし、魔素が濃い所なら、そこまでお腹は空かないかな?」
その割にはルードは大食いだけど。
もうこの時間になると、開いているのは食堂や飲み屋位しかない。
「ね、たまには外で食べない?」
「人間の作る食べ物は好きじゃない」
私の作ったものは食べるのに。大量に。
「ストックがあるから、マナが食べるのは付き合うよ」
殆ど食べない人の前で食べるのは、気が引けるんだけどな。
肉料理を出す店ならルードも食べるだろうと、そこそこ繁盛している店に入った。
オーク肉のステーキを二人前頼んだけど、無発酵のパンは固いし、量も多かった。ステーキは、半分食べてお腹いっぱいになった。ルードにあと半分あげて、宿に入った。
王都に来てから農園に入れていなかったので、少しだけ、収穫と種まきだけやった。
小説も忙しくて全然読めていなかったけど、今日は眠い。
やっぱり幼児には睡眠は欠かせないのだと諦めて目を閉じた。
次の日は買い物だ。ルビー母さんの服は幾つも付与の付けられる優秀な服だけど、白い糸しか出せないので、白い服しかない。
服屋の一角にあった数種類のリボンを手に取る。
「どの色が合うかな?」
偽装した茶色の髪ではなく、元の色に。
「さあ?」
やっぱり男の人はこういうのには興味がないのだろうか?
好きな色を何本か選んで買った。
甘芋が安売りされていたので干し芋用に沢山買って、店を出た。
(スマホ内で育てられるんじゃないの?)
(実際に動いて収穫しているから結構大変なんだよ?種も買わないといけないし、ルードはいっぱい食べるし)
(そっか…何かごめん。マナの作るご飯は美味しいから)
(大丈夫だよ。みんなが喜んでくれるのは嬉しいから)
むしろ料理の腕が上がって嬉しいし。
それにしても王都は広い。お子様抱っこ状態なので、自由に動けないけど、それから何軒かお店に入った。残念ながら肉や魚は自分たちで手に入れた方が新鮮なので、購入は見送った。
「そろそろ帰ろうか?」
「もういいの?」
「うん」
「まだ見ていない所もあるし、また来よう」
「意外。ルードから言ってくれるなんて」
マナを独占できるからなんて言えないな。
「図書館以外は楽しかったよ」
「そう?」
まあ、ルードも楽しめたなら、何よりだ。




