狩り
蒲焼きは、絶品だった。少し皮が固かったけど、身はとろっと柔らかく、タレも上手くいった。
初めは食べるのを躊躇っていたルビー母さん以外も、私の食べる様子を見て食べ始めたら止まらなかった。
大きな網を作ったはずだけど、それよりも想定外に大きくて、焼くのが大変だった。
この調子で食べたら30メートル級の鰻も、あっという間に食べ尽くしてしまうだろう。
また狩れたらいいな。サンダーイール。今度は私がとどめを刺したい。
美味しい物といえば、ミノタウロスの在庫も少なくなっていたんだ。
そろそろ寒くなるから鍋の美味しい季節だし、大根と白菜も作っておかないと。残念ながらにがりがないので豆腐が作れないけど、海はあるんだからどこかにはあると信じたい。
ゲーム内ダンジョンでは、少量のオリハルコンが採れた。
加工が難しい金属で、私の錬成に抵抗してくる。金属自体も重いので、今の私にはまだミスリルで充分だ。
それだって、5歳の子がミスリルの武器を使っているのは、外では目立つだろう。だから最近は、ルードにも訓練をしてもらっている。
ルードは対人戦の経験もあるので、その辺も教わっている。そんな技は使わないに超したことはないけど、何があるか分からない。
人の世界で生きるつもりはなくても、リアルダンジョンは潜りたい。
「ルビー母さん、収納庫は覚えられそう?」
「難しいわね。マナの言う通り、空間指定は使っているけど、才能もあると思うし」
確かにスカイは幼体じゃなくなったら、いきなり収納庫使えていたしな。
「ちょっと狩りに行きたいんだけど、行ってきていい?」
「いいけど…ルードとユキはお昼寝中なのね。ちょっとスカイだけじゃ不安ね」
(ええー!僕も戦えるよ!)
「ミノタウロスが欲しいんだけど、大丈夫?」
(……)
「私も行くわ。スカイも、自分で狩れるように練習なさい」
ルビー母さんは、私の新しいブーツ作っていた手を止めた。
大きめには作ってもらっているけど、成長期だから、すぐに履けなくなってしまう。
自動調節も、元の世界からすると凄いけど、余りにもサイズが違うと、調節してくれない。
皮はウォーターベアの皮を使ってもらっている。
水を弾く素材なので、湖近くのダンジョンに履いていきたい。
そうなるとマントの素材が足りなくなるので、出来次第、ルードの亜空間移動を利用して行きたい。
ミノタウロスの群れを見つけた。スカイのサンダーストームは、目眩ましにしかなっていない。
でもその目眩ましの間を縫ってルビー母さんが、破壊光線を打つ。私も、マナドレインで魔力を奪い、意識を奪う。そうしておいて、ミスリルの短槍で、頭を突く。
後ろからきた奴には重力波を当てて、脳みそを揺さぶってやる。
レベルアップ酔いを歯を食いしばって耐えて、ルビー母さんに後ろから襲いかかる奴に、足下に蔦を絡めて転ばせる。
スカイは上から援護してくれているけど、体力があるミノタウロスを倒すに至らない。
ダークソードで深く傷つけて、スカイの方に飛ばす。
経験値シェアはあるけど、やっぱり本人がとどめを刺した方がいい。
あ、スカイが落ちた。スカイを亜空間に入れて、最後の一匹にとどめをさす。
今回は何匹仕留めたっけ。この間のサンダーイールではルードがとどめをさしたにもかかわらず、めまいがあった。まだまだ私が魔の森の中では弱い証拠だ。
ルビー母さんと手分けして首を落としたミノタウロスを蔦を使って木にぶら下げて、血抜きをする。
「今回は大丈夫?マナ」
「ちょっと…スカイが酷かったみたい」
「仕方ないかしらね。元々こんな奥地に住む魔物じゃないし」
「そのうち慣れるよね?」
「大丈夫でしょう。大食いメンバーも増えたし」
「従魔どうしでも経験値シェアされるんだよね?」
「従魔と主程じゃないかもしれないけど、この間のサンダーイールの時はちょっときたわね。レベル自体がどういう基準で上がっているのかも感覚でしか分からないから、何とも言えないわね。さ、そろそろ撤収しましょう」
今回は12匹か。ルードの好物だからすぐなくなっちゃうんだよね。
ツリーハウスに戻ると、置いていかれたと拗ねていた。ユキまでご機嫌斜めだ。
ドラゴンは寝ているのが通常運転だし、ユキは夜行性だから仕方ない。
今度はみんなでダンジョンに潜る約束をして、何とか納得してもらった。




