巨大ウナギ
ユキは、マナの腕の中で喉を鳴らしながら眠ってしまった。とはいえ、身長はマナとたいして変わらない。
「可愛い」
クリーンもかけたので、もふもふのふわふわだ。
「ねー、探検は?」
「また後で、みんなと行こう」
「えー。マナと二人が良かった。あとさ、あんまり従魔は増やさない方がいいよ?リスクを減らす意味でも。従魔の罪は主の責任になるから」
「…分かってる。それでも、虐められているこの子を見捨てられない」
「自然の状態で、弱い者は生き残れない。ユキもきっと、弱いから群れを追い出されたんだ。
それだって、ごく当たり前の事。暗殺を得意とするアサシンキャットが、この毛色では、目立ってしまうから」
ルードの言うことは最もなんだけど、それだってユキが悪い訳じゃない。生まれつきで、どうしようもない事だ。
ツリーハウスに戻ると、スカイがユキを見てびっくりしていた。
(今度はアサシンキャットー?!マナ、僕はやっぱり獲物として狩られる運命なんだね…)
「マナ、頼まれていた物は出来たよ。…毛色が違うけどアサシンキャットだね。良く言い聞かせておかないと、本当にスカイが餌にされちまうよ?」
「わかってる。ユキだよ、よろしくね。ユキ?サンダーホークのスカイは家族なんだから、食べちゃだめだよ」
「にゃーん!」
「ふふっ、ユキは甘えっ子だね。お昼ご飯の用意するから、大人しくしててね」
猫には魚かと思ったけど、ユキは肉が好きだった。
そりゃそうだ。湖はあるけどそこで狩りをするのは難しい。
(おいしい?ユキ)
「にゃーん!」
スカイとルードは、複雑な表情で見ている。
対してルビー母さんは余裕の表情だ。
「二人共、まだまだ子供ね。ユキが増えて、マナの愛情が減るとでも思っているのかい?」
(僕の強みのもふもふも、ユキは持っているしー!)
「マナは、僕にはあんな風にブラッシングしてくれない」
「あんたはそもそも鱗だろう?スカイも拗ねないの。普段一番スキンシップとっているのはスカイなんだからね」
「私はみんな大好きだよ?」
ユキを足下に置いて、スカイをもふる。
ルードがむっとしてるけど、人化しているルードには、ちょっとためらいがある。ドラゴンの姿だったら躊躇なく抱きつけるんだけど。
というか、従魔じゃなかった頃のドライなルードはどこに行ったんだ。
その日はみんなで私の亜空間で寝て、次の日みんなで湖を見に行くことになった。
南に二刻程進んで、大きな湖を見つけた。
「魚はいるかな!」
しかし、何か大きな存在を感じた。
「!何かいる…!」
強い殺気。大きな雷が落ちた。
水面が大きく揺れ、黒い何かが姿を現した。
「ちっ…サンダーイールか!」
雷を結界魔法で弾き、魔法を打とうとするが、雷を放つと同時に湖に潜ってしまう。
(ルード、次に出た時、ルードに注意を向ける事出来る?)
(出来るけど)
(私がマジックブレイクで雷を消す。その隙にホーリーで頭を狙って)
(分かった!やってみる!)
頭の消失したサンダーイールが湖に浮かぶ。全長30メートルはありそうだ。
マナは嬉々として死骸を収納庫に入れる。
「…マナ?まさか食べるつもり?」
「だって鰻でしょ?絶対美味しいよ!」
逞しい…。
笑顔満点のマナを見て、従魔達は思った。
「こんなにあれば色々作れるよね!鰻丼鰻重ひつまぶしに白焼き蒲焼き!」
「にゃあぁ」
「うん。マナはこういう子だからね?」
「ふふっ、さすが私の娘!マナ、そんなのツリーハウスに持って行ったらぬるぬるになるよ?ここで捌いちゃいましょう!」
肝の部分は雷の発生源になっていたので、そこは捨てた。出てきた魔石は、今までで一番質が良く、大きかった。
蒲焼きのタレはないけど、醤油とかみりんとか合わせて適当に作ってみよう。似た味が出来るといいけど…味の記憶は曖昧なんだよね。
というか、愛美だった頃の記憶も薄れてきている。
それだけ今が楽しいのかもしれないけど、この世界にもある学校には行きたいとは思わなかった。
ツリーハウスに戻ってから炭の作成をルードに頼んで、マナはゲームの世界に入った。勿論、鰻を焼く為の網を作成する為である。
そっちは錬成で作れるけど、蒲焼きのタレは難しい。
「私には、心強い味方があるじゃん!」
スマホだ。何の為に料理アプリ入れたのか分からない。
検索サイトだって調べられるはずだし。
ググッたら、あっさり出てきた。突っ込みたくはないけど、どうやって電波が繋がるのかな?




