両片思い
恋人同士?になったからといって何が変わった訳でもない。
ルードは嬉しくて浮かれてるみたいだけど、逆にマナの心は鬱々としている。
「ちょっと、戻る前にダンジョン潜ってもいい?」
「いいけど…マナは嬉しくないの?」
「嬉しいと思う。…多分」
「何で多分なのさ」
嬉しいと口では言いながらも伝わるパスは不機嫌。ルードには理由が分からない。
パルタの町ダンジョン一階層。ジンギスカンが欲しい訳じゃなくて、もふもふに埋もれたかった。
モコモコの攻撃なんて、ちっとも痛くない。
「マナ!相手は魔物!」
引き剥がされて、目の前で毛玉を残して消えていくモコモコに、マナは悲しくなった。
「ルードの意地悪!」
「あのさ、確かに当たってもそんなに痛くないけど、それはマナだけだからね?」
やけになって、マナはどうしたんだろう?何かがまずかったのか。
確かにルビー母さんの服はその辺の革鎧なんかよりも性能のいい防具だ。
やけになっても仕方ない。とりあえずでも何でも一応は恋人になれた。喜ばしい事のはずなんだから、前向きに考えよう。
戻ってルビー母さんに相談したら、聞いていたユキが、ずるいって言い出した。
「ルードはずるいにゃー!マニャはにゃーの番にゃ!」
「もう。そんなんじゃないから」
「でも、ちょっと残念な感じだけど、言えてよかったんじゃないかしら」
「種族が違うからって拒否されるかと思ったけど、そうはならなかった。でも、価値観が違いすぎる」
「そうでもないと思うけど。ルードはマナの事ずっと大好きだったけど、言えるタイミングが分からなかったんじゃないかしら?」
何で?
「だってマナ、ずっと小さな頃から一緒にいるし、種族が違うと成長ぶりって分からないものよ?」
…まあ、確かにスカイの大人姿には驚いたけど。ユキも本人が言うには大人らしいし。
私自身、色気とは無縁の生活を送ってきた自覚もある。
じやあ、ポーラの事を見てルードなりに判断してあんな事言ったって事?…うわ。
すごく恥ずかしいんですけど!
夕ご飯を食べて、お風呂に入って、絨毯の上に寝そべっているルードを見る。
そのままベッドの方に行こうとしたら、パジャマを咥えられた。
(マナ、今日は僕と寝る番)
そうなんだけど、なんとなく気恥ずかしいんだけどな。
「ね…しばらくベッドで寝ていい?」
(え?何で?)
何でって…ルードには乙女心が分からないの?…分からないんだろうな。
はあ…まあいいや。ここでベッドで寝たら絶対拗ねる。
もふもふ毛布にくるまって、鱗にもたれかかると、頭を寄せてくる。
(マナ?…迷惑だったかな?)
「そんな事ないよ。…おやすみ、ルード」
鼻先を撫でて目を閉じた。
単純で分かり易かったマナの心が、今は分からない。
やっぱりマナには早かったのかな。こういう話は。個人差はあると思うし。
ああでも、先越されたくなかったし、もう言っちゃってるし。
それにマナは、僕の好きとマナの好きは違うって言ってたから、ダメって事?でも、付き合う事は多分了承していたよね?
僕はどうしたらいいのかな?




