魔の森探検と、新しい従魔
スマホ内では念話が通じない。おまけに時間感覚も現実時間とずれるから、つい夢中になってダンジョン攻略していたら、うっかり夜になっていた。
「ゲームに夢中になって、ご飯の時間を忘れないでね」
「ごめんなさい」
はあ、中でも時間が分かればいいのにな。
『スキル 刻の知覚を覚えました』
便利魔法キター!
こちらの世界風の6時が一刻で、あとは二時間刻みに増える時間が、分かる物らしい。
因みにゲーム内では、時間が3倍位体感時間で長く感じる。おかげでゆっくり釣りも出来る訳だけど、早く年齢が上がる訳じゃないから、何の支障もない。
昨日植えた米も沢山収穫できたし、異世界果物の苗木も植えた。今の所、どこまで反映されるか分からないけど、まだ出てこない種もあれば、謎の名前の異世界野菜の種も売っていたりする。
今日植えたから、明日の収穫が楽しみだ。
と、思ったら、次の日はルードに魔の森探検に誘われた。
忘れないうちにマップに印を付けて、ダンジョンと街の大体の位置も聞いて印を付けた。
マップによると、魔の森の南側にいい感じの湖があるようだ。とりあえずそこを目指してみようという話になって、二人で南を目指した。
ルビー母さんには、大きな甲羅の安定を良くしてお風呂として使えるようにして欲しいと頼んである。
スカイは誘う前に遊びに行ってしまったので、ルードと二人だけだ。
「ルード、守護の力をありがとう。でも、負担になっていたりしない?」
「全然。自動回復の範囲内だよ。本当は加護として与えたかったんだけど、僕が半人前だからか、祝福しか与えられなかった」
「いつのまにかさ、ルミナス様とミロー様からも加護を貰っていたから、ルードにないスキルをあげたいと思ったんだけど、特殊スキルは祝福であげられないから、補助魔法か創造魔法なんてどう?」
「それはどんな魔法?」
「創造魔法の方は、既存の魔法を元にして、…例えば水魔法の水を温水で出したりとか出来るようになるの。創造力次第って感じ。補助魔法は、謎が多い魔法なんだよね。出来たらいいのにと思う事を叶える魔法…かな?私も二つしか覚えていないから良く分からないんだけどね」
「それをマナが、与えてくれるって事?…特に必要性は感じないけど、なら補助魔法かな?どんな魔法を覚えられるか楽しみだし」
マナは、ルードに祝福を与えた。
「うん。確かに補助魔法を覚えたけど、何が出来るか分からないね」
「私も最初はハズレスキルかと思っていたもん。今はスマホを手元に呼べるのと、ゲーム内でも現実時間が分かる魔法を手に入れたけど」
「へえ。僕も何か覚えたら、教えるね。ルビーとスカイには何を与えたの?」
「ルビー母さんは時空魔法。スカイはまだ決めかねているみたい。覚えていないスキルだらけだからね」
「そう幾つも与えられる訳じゃないんだね?」
「うん。今の所従魔に対してだけ、一つきりって縛りがあるみたい」
「ミロー様の加護か、いいな。僕もマナに渡したいスキルがたくさんあるのに」
「例えば?」
「そうだね…高速飛翔とか」
「…それ祝福があっても無理だと思うよ。羽根がないんだから、人は空を飛べません」
「一緒に飛べたら楽しいなと思ったのに。僕が掴んで飛ぶのはどうしても嫌なんだろう?」
「当然でしょ!好んでスリルを味わいたい人種じゃないもん」
しばらく歩いた所で、猫の争いあう声が聞こえた。
見ると、一匹の毛色の違う魔物の猫が、他の猫の魔物に虐められていた。
ボロボロになった魔物を、素早い動きで攻撃しようとする魔物から、結界魔法で守る。
「…にゃ?」
虐めようとしていた魔物は、ルードの威圧で去って行く。
マナは、ヒールとキュアで猫の傷を治した。
鑑定 アサシンキャットの特異体の幼体 通常のアサシンャットよりも攻撃力で劣る
アルビノなのかな?毛色も白いし、瞳も赤い。
通常のアサシンキャットは、焦げ茶色の毛に黒い斑点模様。青い瞳だった。
「弱いから、虐められていたの?…私の所に来る?」
「にゃー?」
「あなたの名前はユキだよ」
『ユキのテイムに成功しました。経験値がシェアされます』
「よろしくね、ユキ」
ユキ(2) マナの従魔
アサシンキャットの特異体
レベル 38
スキル
ソニックウェーブ 闇魔法 暗黒魔法
木魔法 跳躍 空間機動 爪斬撃 高速移動
縮地 物理耐性 索敵 気配隠蔽 忍び足
夜目 罠 絞扼 暗殺術
特異体でも強かったんだ。そうだよね。魔の森で二年生きてきたんだから。
ただ幼体なので、空間機動と縮地は使えなさそうだ。
木魔法は主に罠に使うらしい。ソニックウェーブは、鳴き声で空気に振動を作り、エアカッターのように飛ばせるようだ。
残念ながら念話はないけど、スカイのように念話で話しかけていれば、覚えるかもしれない。
絞扼は、長い尻尾を巻き付けるスキルみたいだけど、木魔法と被る気がする。試しにユキに使ってもらったら、木の枝に尻尾を巻き付けてぶら下がったり、細い枝をたぐり寄せてジャンプするのに使っていた。空間機動に必要な尻尾なのかもしれない。
何はともあれ新しい家族が増えた。




