帰ってきたミロー様と光竜
亜竜討伐も、残りあと二匹だ。ルードは先に見つけて倒してしまえば心の平穏が戻ってくるからと、張り切っている。
張り切って寝るっていうのも変だけどね。
「ミロー様がいなくなってもう三日ね。忙しいのかしら?」
存在感ありまくりだっただけに、いなくなるとちょっと寂しい。
ルードもいつもの場所でずっと寝たままだ。
(見つけた!亜竜だ!)
「本当?ゲートは開いている?」
「ちょっと遠いけど…その前にご飯」
「はいはい。ずっと寝てたもんね。すぐ用意するね」
まるで三日分を取り戻す勢いの異次元腹に、このまま進めていいのかなとも思う。
まあ、最悪出荷箱に入れれば神様の所に届くしいいよね?
午後から、谷間を上流に向かって進む。途中に生えているキノコや山菜を採りながら、緊張感の欠片もない。
スカイに飛んで行ってもらえば速いけど、こういうのも、ピクニックみたいで楽しいし、採取もできるから一石二鳥だ。
この辺には強い魔物はいないのか、ゴブリンやコボルト、ホーンラビット位しかいない。まあ、私達には却って珍しいけど。
まだ先は長そうなので、この辺で一旦戻ろうという話になったけど、どうせならご飯は現地調達する事にした。
石でかまどを組んで、解体したホーンラビットを塩コショウでソテーするだけ。
学校のみんなでキャンプした時を思い出すなあ。
簡素な食事だけど美味しく感じる。成長期のルードには足りなかったみたいで、適当に捕まえて食べていた。
テントの用意はないから亜空間でいつものように寝た。
次の日も、ひたすら上流へ進む。
上流の開けた場所に、光竜がいた。呪いの発動と、光竜のレーザー光線のようなブレス攻撃がほぼ同時だった。
攻撃は気にせず前衛の三人には光竜に向かってもらう。今回はアカツキも出した。
人の気配はないので、今回はユキにも支援をお願いした。
精霊達の支援で、アカツキもかなり素早く動ける。
光竜は自動回復しないのが不思議なのか、傷を気にする素振りを見せるが、それはルビー母さんやルードには隙にしかならない。
他の竜よりも硬い鱗に、今回は苦労したみたいだけど、何とか倒す事ができた。
「まあまあ!ちょっとだけ遅くなっちゃってごめんなさいねー!」
まだ竜姿だったルードが項垂れる。
「ルー君、疲れちゃった?ワタシがなでなでしてあげるから」
光竜の死骸を回収して、みんなで亜空間に入った。
「ミロー様、お疲れ様です。まずはお茶でも飲んで下さい」
ミロー様が行くと、ご褒美じゃなくなっちゃうし!
マナが鱗用のブラシを出すと、ルードが尻尾をバタバタ振って喜ぶ。
「尻尾は危ないから振らないでね…場所の特定も、退治もご苦労様」
もう、黒竜さんと大きさ変わらないんじゃないかな?長くなったな。頭から尻尾まで何メートルあるんだろう?
まあ私も、誕生日から少しは伸びたし!
「マナちゃん、ワタシにもやらせて?」
「いえ、大きいから大変ですよ?それに私なら慣れているし」
「あらマナちゃん、ワタシに譲ってくれないの?」
「えー…本人が喜ばないとご褒美って言えないと思うんですよね!」
「ふう…ん。その独占欲は、主として?」
「独占欲っていうか…労ってあげるなら、私がやらなきゃと思って」
「労うなら、眷属全てよね?」
「そう…ですね」
「次はにゃーの番!」
(えー、マナにブラッシングして欲しいな)
「ごめんね、ルード…また後で」
もうユキのブラッシング始めちゃったし。
ユキをもふもふにして、ルードの方を見ると、前足に顎をのせてふて腐れている。結構態度で丸わかりなんだよね。
そして私も、どうしてか結構苛々してる。
正体不明の苛々に、スカイの羽が引っかかったまま引っ張ったから、羽根が抜けてしまった。
「ごめんね、スカイ」
(マナ、どうしたの?何か変だよ?)
「分かんない。私も変だと思うけど、どうしてか苛々する」
ルードは見ての通り竜だし、人化しても私にとってはお兄ちゃんで…。
「マナ、夕ご飯の用意手伝ってもらえる?」
「はーい」
今日はポテトとマカロニのグラタンだね!うん。ベーコンも入れよう。
「マナ、ルードの事、特別だって思う?」
「え?…正直、よく分からないよ。種族だって違うし、好き…なんて今まで考えた事もなかったもん」
う…言葉にすると恥ずかしい。
「そんな事言ってると、ミロー様にとられちゃうかもよ?」
「ルビー母さんは平気なの?前に番の話した時は嫌がっていたじゃない」
「それはマナの気持ちを無視していたからよ。平等よりも、マナの気持ちの方が大事よ」
「私の気持ちか…どうなのかな?」
二度目の人生だけど、そういう経験は全くないからな。




