ルードの災難
ミロー様は、ルードにべったりになってしまった。
マナは、ちょっと苛々。
ルードは私の眷属なのに!ルードの主は私なのに!
「どうしたの?お兄ちゃんとられてヤキモチ焼いちゃった?」
ご飯の用意をしながらルビー母さんがそんな事を言ってくる。
「ルビー母さんは嫌じゃない?眷属仲間を盗られて」
「ないわね。これがマナだったら苛々するでしょうけど」
私が主だからか。これじゃあ将来、みんなに大切な人が出来ても素直に祝福できないじゃん。心が狭いな。
前にもこんな事あったな。相手は貴族の女の人で。
今回はルードの様子見てるとミロー様の一方的な片思いっていうか、ミロー様も本気っぽくない。
ただ可愛がっているみたいな。それと、引っかき回して楽しんでいるみたい。
「ミロー様、スカイの方が若くていいですよ?」
「スカイちゃん?うーん。悪くはないけど、神格得るの遅そうだし、ルー君の方が可愛いから好みだわ!」
「もう、許して…」
おお。ルードが弱音吐いてる。珍しい事もあるもんだ。
「マナー!」
隙をついて逃げてきたルードが、マナに抱きついてくる。
「ミロー様、可愛いがり過ぎは逆効果だと思いますよ?」
言いながら、ルードの頭を撫でる。
愛の神、その道のスペシャリストなんだから、分かると思うけど。
「ルー君みたいなお子様は、可愛がってくれる人が好きなのよ」
「そうなの?」
「限度があるよ。猫だって可愛がり過ぎると嫌がるだろ?」
そうなんだよねー。ユキからもふもふしてって来たくせに、撫でまくっていると逃げちゃう時もあるんだよね。
ていうか神様から見るとルードもお子様なんだね。
「ていうかあと六匹はまだ見つからないんですか?」
「正確にはあと四匹ね。土竜は人に狩られたし、金色本体の分体はいないから」
そうなんだ。
「おかげで大変だったのよ。人側は素材が欲しいし、ワタシ達は残しておく訳にはいかなくて。まあ、ドーバに丸投げしたけど」
「だから疲れた顔してたのかな?」
「神にまでなった光の勇者に憧れる冒険者は多いものね」
ミロー様は甘い物が好きみたいで、出荷箱から出てきた甘い物は、ルミナス様と半分こしていたらしい。
特にチョコレートが好きで、苦いだけの実をこんなに美味しくしてくれたと、とても感謝された。
「前世の知識とスマホのお陰です」
例えカカオが見つかってもスマホがなかったら、チョコレートにする事はできなかったと思う。
「そうよねー。材料だけあっても使い方を知らなければ何にもならないものね。それとモーモーのミルクね。何とか流通させたいわね」
「それは思います!生クリームとかバターとか、絶対考える人出てくると思うんですよね!チーズだって色々種類あるのに」
「マナちゃん、頑張ってね!豊かな食文化はこれからのマナちゃんにかかっているのよ!まあ、まだ先だけど」
うーん?サマルト様は何とかしてくれないのかな?
「ルー君、いつまでもマナちゃんに甘えてないで、ワタシの所にも来てよ。恋愛の真髄を教えてあげるから」
「要らないです!本当に」
「そう?残念ね。無理強いも良くないし、今はワタシの気持ちを分かってくれればいいわ。気が変わったら、いつでも言ってネ!」
ドーバ様もだけど、ミロー様も寝ないみたいだ。
眠る事自体はできるらしいけど、本来の仕事もしなきゃいけないとか。
全然忙しく見えないんだけどなー。特にミロー様。
ルードからかって遊んでないで仕事すればいいのに。…あれ。私、まだちょっと苛々してるかも?
本人が嫌がる事をやったら可愛くて構っているだけでもいじめだよね。ましてや相手は神様で、こっちは強く出られない。パワハラだね。困った神様だな。




