九頭竜とミロー様の襲来
九頭竜本体は、魔の森に住み着いているらしい。
とはいえ、魔の森は広い。大体の位置情報はライナー様から送られているみたいなので、ドーバ様の力で転移する。
ゴツゴツとした岩場かと思ったら、遺跡だ。旧文明の遺産らしい。
慎重に進んでいくと、いた。巨大な胴体から生える九つの首。それぞれの属性の色をしていて、中心の首は金色だ。
マナの呪いの発動を待ち、ドーバ様率いる前衛が攻撃を仕掛ける。
斬られた箇所が、再生していく。
(マナ!金色の奴を狙え!もう一度だ!)
慎重に魔力を練り、今度は言うとおり、範囲を絞って中心の金色を狙う。
その間にも飛んでくるブレスをユキの精霊達が防いだり、スカイの魔法でそれぞれのスピードが上がる。
その間にもドーバ様が緑の首を落とすが、ゆっくりと生えてくる。
呪いがかかると、緑の首は中途半端に再生を止めた。
ルードが紫の首を食いちぎると、その首も再生しない。
…っ!呪いが破られた!もう一度、マナは呪いをかける。
精霊達の幻惑に、竜の頭が一瞬硬直する。その隙に、ルビー母さんの槍が黒い首を貫く。ドーバ様が首二本を落とした所で、また呪いが破られた。
今度はさっきよりも魔力を多めにかけて呪いをかけ直す。
金色の首は中心に生えているので、攻撃するにはある程度周りの首を落として、攻撃しなければならない。
ルビー母さんの不可視の蜘蛛糸が舞い、拘束された首をルードが引き千切る。
金色の首にドーバ様の剣が刺さる。
「やったか?」
それはフラグですドーバ様!
金色の頭はドーバ様の剣を他の頭で引き抜く。
ドーバ様は新しい剣を出して、ルードが噛みついた首に斬りかかる。
呪いも解けそうになるけど、ユキの扱う精霊達が再び幻惑する。
障壁が弱くなったのを感じてルードがブレスを放つ。
鱗がぼろぼろになり、そこにルードの爪が振り下ろされる。
ドーバ様の剣も首に刺さり、ようやく邪神は活動を停止した。
そうして、邪神の体が消えていく。
「邪神はどこに?」
「悪いな。邪神は体も魂も消滅させる決まりだ。そうしないと、復活の恐れさえあるからな。亜竜も然りだ」
それは仕方ないかな。じゃあ、私達以外が亜竜を倒したら…
「その時は、いつの間にか消えてるって寸法さ。残してはおけないからな」
今までにない強敵だと思ったんだけど、ドーバ様によると発見が早かったから、邪神本体もまだそれ程の力を発揮していたわけではなかったらしい。
だからこそ今回は私達も参加させてもらえたのかも。
ツリーハウスに戻って一休みしたら、ドーバ様は急用とかで消えた。
そのあと帰ってきたドーバ様は、愛の神ミロー様と一緒だった。
教会にある神像も豪奢な装いだったけど、実際目にすると、もっと凄い。
「あー。俺は忙しくなった。残りはミローと一緒に頼む」
「うふっ。よろしくね!マナちゃん」
パチンと、音が立ちそうな位大きくウインクされて、マナはちょっと引いた。
「あの、ミロー様って戦えるんですか?」
「いやあねぇ。ワタシが戦えるはずないじゃない。あ、でも魔法なら多少使えるわよ?ワタシの役目は亜竜の回収よ!」
「そ…そうですか…」
「思ったよりルー君の実力があったから、より困難な所に廻されたのね!」
「ルー君て…」
「うふっ」
ミロー様は、ルードにウインクする。ルードは思いっ切り引いている。
「マナちゃんは、好きな人はいないの?オンナは恋をしなきゃダメよ!」
「い…今の所興味ないです…」
「そう?ならルー君の恋人にアタシ立候補していい?」
「へ?ルードが良ければ…」
「ごめんなさい!」
「種族が違うとか神とか気にしになくてもいいのよ?マナちゃんが神格を得ればみんな眷属神だし、そうしたら仲間よ?」
「いや、そういう問題じゃなくて、僕はマナが一番大事で」
「それは、今は普通に眷属だものね。けど同僚になったらまた変わってくると思うわ」
ルード、最大のピンチ!
「な、何で僕?ていうか同性は…」
「いいオトコだからに決まっているじゃない!それにワタシは乙女よ!それとももう心に決めた人がいるの?」
「僕は…マナが」
「マナちゃんはどうなの?」
「ええっ?!ルードは大切な眷属で…」
「分かるわ。二人ともちゃんと恋した事ないのね!眷属や主を大切に思う気持ちと恋は別物なのよ!」
「そ…そうですか」
私はともかくルードは見かけ以上に年上なのに。
雌の竜とかいなかったのかな?
何かトラブルの予感しかないな…




