討伐と、やっぱり非常識?
スーレリアに留まり、二日程スカイの亜空間内に入って観察していたけど、今の所変わった様子はない。
棚に飾られていたきらきらは、ガラス製の物を除いて頑丈な宝箱に仕舞われている。馬車を倒しても亜空間は倒れたりしないので、それなりに見えるように幌と馬車の骨組みだけは横倒しで作ってある。
馬車が、盗賊に囲まれた。規模はおよそ30人か…思ったより少ない。
「じゃあ、手筈通りに」
私とユキ、ルードは亜空間移動した。
集落全体を覆う大きな結界を張り、中に麻痺の魔法を放つ。外側に出ていた者は、気絶させた上で蔓でぐるぐる巻きにした。
状態異常避けの護符を持っている者以外は倒れたはず。マナは結界に隙間を作って二人を入れた。
中には、残り全ての人数はいないっぽいな。もしかすると他の相手を狙って活動中かも?
マナの所にも、離れて偵察していた盗賊が剣を抜いて走ってくる。
体半分位置をずらして剣を避け、カウンターを鳩尾に叩き込む。
反対側から走って来た奴には、蹴りを入れると、呆気なく吹っ飛んだ。
レベル差って怖いね。
気絶している二人も蔓でぐるぐる巻きにして、そのまま転がしておいた。
結界内ではルードとユキが走り回って拘束している。
その間に、別動隊が戻ってきた。…タイミング悪すぎ。
ただ、丁度スーレリアの騎士達が間に合った。最初は盗賊達もしらばっくれていたけど、騎士達が拘束し始めると、反撃に出た。
マナは結界の維持だけして応援に向かった。
後ろから走り、蹴り飛ばして拘束する。土魔法で足元に穴を開けてやり、バランスを崩した所でまた拘束。
怪我人を治しながら、体術と魔法だけで今回は対処出来た。
さすがに死人ゼロという訳には行かなかったけど、上手く分散していたお陰で数は少ないと思う。
ただそのせいで生き残りが多くて馬車に入り切らず、ルードの亜空間に入れる事になってしまった。
どうせルードの亜空間は、絨毯一枚しかないんだからいいじゃん?
スカイ達と合流して、スカイの亜空間に入れていた盗賊達もルードの亜空間に移す。馬車は、スカイの亜空間に仕舞った。
こちら側の被害は騎士達も合わせてゼロ。盗賊達はスカイ達の方であまり上手くいかなくて、全部で20人程になった。
貴族の馬車っぽくなかったからかな?
騎士達と一緒に王都に帰還して、手続きを済ませて、そのままギルド本部まで移動した。
「おお、もう終わったのか」
「連絡はまだきてないんですね」
「亜空間移動のが早かったな。あー、羨ましい」
「先生はまだ覚えないんですかね?」
「いくら時空魔法の適性があってもお前と一般人を一緒にするな」
私も亜空間移動を覚えるのは結構苦労…あれ?したっけ?ただ亜空間は住んでいたから毎日使ってたしな。
「おお。報告が上がってきたな。生存者数も多い…ん?この馬車の方のアカツキって…」
「私のゴーレムですよ?」
「何でテイマーと一緒にいないのに従魔が動けるんだ?」
「え…普通じゃないですか?」
「断じて普通じゃないぞ?ゴーレムは前例がないから何とも言えんがその口ぶりだと、昔従魔だったサンダーホークやアサシンキャットも主の命令無しに動いていたのか?」
「え…だって気持ちは伝わるし、自分の意志で私の為に動いてくれたよ?」
念話を覚えてからは、より正確に意志は伝わったし。
「…まあ、テイマー自体が少ないから、学校では習わないか。テイムした魔物は、主の命令でしか動かないし、普通は傍にいて命令して使う物だからな?テイムされた魔物の行動は主の責任だから、何かあってからじゃ遅い」
「確かにアカツキは私にべったりな所があるけど、ちゃんと善悪の判断は付きますよ」
「マナに逆らおうなんて思いませんよ」
「あー…そういえば兄ちゃんは」
グランドマスターは、そこで口籠もる。
「ふっ…」
「それに、念話覚えてからは、会話も楽にできましたし」
「ね、念話ー?…そんな事までできるのかよ…」
「テイマーなら割と必須だと思いますけど?念話。こっちが念話で話しかけていれば、覚えてくれるし」
「…あー、マナと話していると、常識に自信がなくなってくるな」
「あははー。グランドマスターも常識知らずですか?」
「お前だお前!」
あ、私の事言ってるのか。
「俺になら構わないが、他人……特に権力者にスキルの話は絶対するなよ?」
「はーい。でもそんなに難しいスキルなんですか?念話って」
「まあ、テイマーが自分の従魔と話したくて何年もかけてやっと覚えられるかどうかって所だな。だからって従魔の方も覚えるとは限らないからな?」
へえ。私の家族は全員使えるし、黒竜さんとかルードのお母さんも使えるから、割とポピュラーなスキルだと思ってた。
うーん。念話は便利なのにな。




