依頼準備
ツリーハウスに戻ってきて、ルードに話を聞く事にした。
「まずは馬車を用意して、スカイの亜空間と繋げる」
「えー!僕のきらきら盗賊にとられちゃう!」
「盗られる訳ないだろ。亜空間に入ったら、麻痺の魔法を使う」
「そんなに上手くいくかな?」
「馬車を倒した時に、ガラクタの一つでも落とせばいい」
「…ピィ」
「馬車の護衛としてルビー、アカツキとスカイがつく。ルビーは幻影の魔法で、護衛人数を増やしてみせて」
「私は?」
「集落全てで当たる事はないから、スーレリアの騎士と一緒に本拠地に行ってもらう。勿論僕とユキも一緒に」
「ルビー母さん達の方が危険じゃない?」
「いや、どれ位の人数で動くか分からないから、むしろ僕達の方が危険かもしれない」
「あー。騎士の人達目立つよね」
「勿論、一緒になんて行かない。護符を持っていたとしても数人だろう。そっちは物理的に気絶させればいい」
「でも、集落の範囲が広すぎると上手く効くかどうか…」
「じゃあ、こうしよう。マナは集落全体に結界をかける。その方が麻痺の魔法も効きやすいだろ?」
「そうしたら私、あんまり動けなくなるよ?」
「見える範囲の奴らを蔓で縛ってくれればいいよ」
「何か私、一番楽な役割?」
「それはマナが一番分かっているんじゃないかな?」
「人を斬るのに躊躇いがあるから?」
「情報通りなら、数が多すぎる。さすがに一人も殺さないって訳には行かない。僕達魔物には躊躇いはないけど、マナは違うだろ?」
「う…意地悪」
「はいはい。細かい所はあとでしょ?馬車も何とかしなきゃならないし。ならこの前討伐したレッドアナコンダを料理しましょう!」
そうだよね!全部が無駄足になった訳じゃない。
レッドアナコンダはずんぐりとした太い蛇で、Aランクの討伐依頼にあった物だ。
皮は素材として使えるそうなので、買い取ってもらったけど、肉は全部持ち帰った。だって美味しいって知ったら売る訳ないよね!
「あー…馬車は僕が何とかしておくよ…って、絶対聞いてないよね」
えへへ…どう料理しようかな?結構脂が乗ってそうだから、そのまま焼いてさっぱりとレモンと塩で食べるのもいいな。まあ、これだけの巨体だから、調理方法を変えてもいいよね。
「マナ?聞いてる?」
「!あ、何?」
「どうしたらいいかしら?」
「えっと、フライパンに乗る位の大きさに切り分けて…」
虫系は食べられないけど、強い魔物は美味しい。私の今のレベルだとご飯を食べた位じゃ上がらないけど、この世界の人達が肉食になるのは分かる気がするな。
帰って来たルードと一緒にご飯を食べる。美味しい!けど、醤油が欲しくなる味だな。
私が醤油をかけると眷属達も真似する。そしてみんなお箸が止まらない。
文字通りの美味しい思いが出来るなら、討伐依頼は積極的に受けるべきだろうか?
ご飯が終わって、馬車を見せてもらった。普通に荷馬車だけど、幌には紋章が入っている。
「これって使ってもいいものなの?」
「問題ないよ。グランドマスターの物だし」
「え!あのおっさんて貴族だったの!」
「…マナ?自分も一応貴族だって忘れてない?」
「でも、準爵じゃあ一般人と変わらないんでしょ?」
「王のメダルを持っている僕達は別。ただ、そういう暮らしは誰も望んでないから。だから何の用意もないから、おっさんから借りて来たって訳だよ。この紋章も、殆ど誰も知らないから盗賊に警戒されないよ」
確かに古びた幌にクリーンだけとりあえずかけたって感じだ。
まあ、グランドマスターなんだから、それなりの地位にいて当然なんだけど、貴族のイメージと結びつかないんだよね。
スーレリアの騎士達は、見かけが強そうでない私達に戸惑っていたけど、この国では魔熊退治もしたし、アカツキをテイムした事も知られている。
今のアカツキは小さいバージョンの体だけど、ボディはミスリルだ。
「お嬢さんがマナさんか。娘から話は聞いているよ」
面影が…あ!
「ジーナのお父さんですか?」
「そうだ。娘から強いとは聞いていたが、まさかスーパー冒険者とは」
手紙のやり取りはしてるけど、ジーナとは卒業以来会っていない。
「父親に身長だけは似てしまって、周りの子よりも大きくなってしまって。マナさん位小さかったら良かったのにと愚痴をこぼしているよ」
そっか…まだまだジーナには追いつけていないんだね。
一応私、ジーナより年上なんだけどな。
「しかし、本当にこんな作戦で大丈夫なのか?しかも生け捕り予定とは」
騎士達には、檻付きの馬車を用意してもらっている。
「単に私が根性無しっていうのもありますけど、うちの作戦担当は優秀なので」
明日の朝いちからまずはルビー母さん達が出発する。その後で私達だけど、亜空間移動予定なので、実質の出発は一番最後だ。
「何とかするのが私達の役目なので、信じて下さいとしか言えませんけどね」




