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コンソメスープの素と戦争

 いい匂いにつられてレスティアの露店でスープを買って飲んだら、懐かしい味がした。

「おじさん!これ、コンソメ使ってますか?」

「ああ、コンゾットか。使っているよ」

「それってスープの素ですよね?」

「ああ。勿論他にも独自で味は調えているけどな」

「実物見せてもらってもいいですか?」

「構わないが…お嬢さんは旅でもしてるのかい?」

「ええと、色々な国は行きましたけど」

 

 おじさんは、みかん位の大きさの茶色の実を取り出して見せてくれた。随分と固そうだ。

「これを割ると、こんな風に殻より色の濃い中身が出てくるから、種を取ってこうして壺に入れて使っているんだ。向こうの道の店に売ってるかもな」

 ペースト状なんだ。

「ありがとうございます!」


 マナは早速行ってみた。

「すみません、コンゾットはありますか?」

「あー、今は品切れだ。輸入物だから、いつもあるとは限らないんだ」

「どこから輸入しているんですか?」

「南のオレンだよ」

「ありがとうございます!」

 コンソメスープの素が実るなんて、楽!今まで骨とか煮込んでいたからなー。

 とりあえずはルードに確認かな?でも実を見たからお店に…ああ、でも木になるか、畑で作れるか聞いてないや。


 早速ツリーハウスに戻ったけど、ルードは留守だった。

 この距離だと黒竜さんの所かな?邪魔はしたくないから、戻ってからでいいや。

 ルビー母さんは、お友達の所かな?スカイは自分の亜空間だな。ユキは…狩りかな?

 ユキの所に行こうかな。


 あれ…猫じゃらし?

「にゃ?…見つかったにゃー」

「遊んでいたんだね。別に遊んでいたっていいんだよ?」

 地球産の物と微妙に形が違うけど、そっくりだな。正式名称は知らない。

「私は狩りに行ってくるけど、ユキはどうする?」

「一緒に行くにゃ!」


 やっぱり一人で行くよりいいよね。楽しいし、ユキも頼りになる。

「今日は一人で淋しかったにゃ」

「ごめんね。出かけてたから。もう図書館通いもしなくて大丈夫だよ」

「戻ったら一緒に遊ぶにゃ!」

「うん」


 狩りをして戻ったら、ルビー母さんが料理をしていた。

「今日はけんちんうどんよ」

「やったにゃ!うどん嬉しいにゃ!」

 春になって暖かくなっても、美味しいよね。

 ご飯が出来る頃、ルードが帰って来た。

「ね!コンゾットって知ってる?」

「んー…確かスープの素?」

「じゃあ、レスティアの南のオレンは?」

「行った事はないな。明日行って、ゲートを開いてきてあげるよ」

「ありがとう、ルード」

 これで手軽に美味しいスープが飲めるようになるね!

 

 次の日、わくわくしながらルードを待っていたら、随分遅くに帰って来たルードにコンゾットを幾つか渡された。

「マナは、行かない方がいい」

「どうして?」

「戦争に巻き込まれたら大変だから」

「…!戦争してるの?」

「オレンは亜人の多く住む国だから、東のルシアからすると、面白くないんだろう。ただ、間に山脈があるから、なかなか攻め込めないけど、僕が行った時には、山裾に築かれた砦が落とされそうだった」


「じゃあ、一方的な侵略なの?」

「まあ、獣人族は戦闘能力が高いし、小人族は魔法が得意。そうそう国がなくなるとは思えないけど」

 嫌だな…人と姿がちょっと違うだけで滅ぼそうとするなんて。


「レスティアでは何も聞かなかったな」

「交易とか、少しの付き合いはあるけどオレンは他国と積極的に関わろうとしない。それを嫌った者達は、国を出て行くし」


「人族が嫌い、なのかな」

「そういう訳じゃないと思うけど、警戒はしてると思う。マナも知っての通り、ギルティアだって貴族は人族至上主義者が多いし」

 そのせいでユキは護衛依頼を受けられなかったんだもんね。まあ、その方が良かったけど。


「ルシアでもコンゾットは育つし、マナが心配しても仕方ないよ」

 いや、そういう問題じゃないけど。


 戦争は嫌だけど、私一人でどうにかできる問題じゃないと思うし、私が知らないだけで他にも理由があるかもしれない。

 

 せっかくコンソメスープの素を手に入れたのに、嬉しくないな。







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