レスティアへ
ツリーハウスに戻って、夕ご飯を食べたらアカツキを連れてスマホの中に。
この三日間で、潰せる可能性は大分潰してしまった。
さすがに集中力が途切れてきたな。この三日…いや、あの日も入れて四日。まともに寝ていない。
調合に使える材料は、一種類ではない。ポーションだって、マナが知っている中でも何種類もある。
体力回復効果のある草なら割と何でもポーションになってしまう。
根幹の世界樹の枝葉は変えられないけど、それ以外の部分になら改良の余地はある。
発動基盤に使う魔石の粉を、魔晶石の粉にしたら、計算上では5%位威力が上がった。
植物活性剤を作る材料のポーションから改良しているから、どうしたって時間はかかる。時間加速の効果があっても、ここでは眠れない。意識が途切れると、スマホから強制的に出されてしまうのだ。
作業自体は難しくないけど、単純作業は却って眠気を誘う。
はっと我に返ると、亜空間の中。炬燵の中が冷えているから、夜中は過ぎているだろうな。
亜空間が開いて、ルードが帰ってきた。
「お疲れ様、ルード」
「王都の側にゲートは開いたよ。マナも一段落ついた?」
「あはは。寝落ちした。2刻は眠れるから、ちょっとでも寝るよ」
「その方がいい。明日から新しい場所に行くんだし」
レスティアか。どんな美味しい物が…じゃなくて、何かヒントになる本が見つけられたらいいな。
ルードの鱗にもたれかかると、癒しの聖域の光がふわふわとマナを癒してくれる。
あっさりと眠ってしまったマナを、ルードが舐めた。
ルビー母さんにはトラス皇国に潜入して貰っている。
スカイには、エルフの人達と一緒に栄養剤の改良をお願いしてある。
ユキには精霊達との連絡役をお願いしているので、レスティアにはルードと二人で来た。
一人でも平気だと言ったんだけど、図書館までは付いて行くって聞かなかった。
レスティア王都には、離れた場所から行くしかなかった。
街道から目に付かず、北側の山も回避しないといけないので、防護壁の影から出て、門までひたすら歩く。
「この辺は寒い所なの?」
「ダスカー程じゃないけど、そうだね。マントが邪魔」
ふと壁の反対側に目をやると、山羊が草を食べていた。
見た目からして温和で、サテュロスとは大違いだ。
「あれ!もしかしてメーメー?」
「そうだね。でもだめだよ?マナ」
分かってる。遊んでいる暇なんてない。
街道には沢山の人達で長蛇の列ができていた。Aランク冒険者等が通る場所は、この列を回り込まなければならない。
突っ切って行くのも何だし、回り込んで進もうとしたところで、ゴブリンライダーの群れが北の山から大量に突っ込んできた。その後ろにもゴブリンの群れが見える。
マナは慌てて広範囲に結界を張り、突進された人達をエリアキュアで治療する。
結界内は幸い、並んでいた人達の中に冒険者も混じっていたので、何とかなりそうだ。
マナは結界外に向けて広範囲の暴風魔法を叩き込む。
ルードも長剣で私を守るように戦っている。門にいた兵士達も武器を手に、救援に来た。マナは、もう一度結界内の人達にエリアキュアをかけた。
「マナっ!」
治療人数も多かった為か、魔力を沢山持って行かれて、その場にしゃがみ込む。
「結界は維持してる。大丈夫」
「じゃなくてマナが無理しすぎ!」
ルードは右手で剣を持ちながら、左手で器用に私を抱えあげる。
体に力の入らない私は、荷物のように担がれてしまった。
これじゃあお子様抱っこじゃなくてお米様抱っこだよ…。ちょっとだけ悲しくなった。
程なく回復はするけど、結界は維持しないといけない。
幸い、中にいたゴブリンライダーは全て討ち取られて、あとは結界外にうじゃうじゃといるゴブリン達だ。
あとは一般人が門の中に避難して、門が閉じられるまで維持すればいい。
「ルード、もう大丈夫だよ、降ろして」
既に一般人は門内に緊急待避しているし、冒険者達もじりじりと避難している。
「結界切るので、早く門の中に避難して下さい!」
結局お子様抱っこされたまま、王都に入る事になってしまった。
(マナはこのまま図書館に行って。僕はギルドに行くから)
(でも、キングとかジェネラルとかいそうだよ?私も参加しないとまずくない?)
(僕が上手く言っておくよ)
そうだね。ここはそれぞれ出来る事をやるべきだろう。
ルードが王都の中も下調べしてくれたお陰で、マナは迷わず図書館に行く事ができた。
こんなに大きな図書館だもん。きっと得られる物があるはずだよね。




