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図書室でお勉強

 ギルド本部の図書室で、錬金術関連の本を幾つか抜き出して、積み上げた本で読書スペースの一角を占拠した。

 錬金術関連の本は、意外に多い。作品紹介の本は興味あるけど、今回は要らない。素材と、制御盤に関する物だけで恐ろしい量の本が積み上がっている。


 護衛で付いてきたルードは、本を運ぶのは手伝ってくれたけど、現在熟睡中。錬金術の知識がないから仕方ない。

 ていうか、護衛要らないのに。真剣にやってる人の側で寝ていられると、イラッとするんだけど、どうしてくれよう。


 開館から閉館までずうっと、しかも3日も居座っていたら、さすがに目立つ。

「何かありましたか?ギルドとして協力できる事があるなら、引き受けますよ?」

「あ、サブマスターさん。人の家を壊した位じゃ、水晶って赤くなりませんよね?」

「…え?錬金術の事ではなく?…個人でした事なら、濁りますね」

「うーん。なら命令とか、あとは戦争等の場合はどうなります?」

「大義名分とか、理由とか色々関わるので、一概には言えませんね。それよりも、今度は何を作るつもりか伺っても?」


「今ある物の改良というか…あ、もしかしてギルドの仕事以外のことで図書室使ったらだめですか?」

「いえ、そういう訳ではありませんが…」

「ああ、お兄ちゃんの事は放っておいて下さい。錬金術に関しては素人で役立たずなのに、図書室に通うだけで私の事心配しちゃう単なるシスコンですから」

「はあ…?」

「幾つか参考になりそうな物は見つけたので、今日か明日には終わります。場所と本占拠しちゃってごめんなさい」


「マナさん。何か厄介な事が起きているのですか?」

「超厄介だけど、どうしようもないっていうか…サブマスターさんて、年始の頃に私が何に係わっていたか知ってます?」

「どうやったかは知りませんが、サマルト様の依頼でウィンゼル島の危機を救ったと」

「そう…もうすっごく苦労してエルフの国のお隣に島を引っ越しさせたのに、島にまた違う危険が迫っていて」


「もしや…トラス皇国ですか?」

「あれ?何か知ってます?あそこは小さいギルド一つあるきりだから、あてにならないと思っていたのに」

「二度程大きな部隊の出征があった事は把握してますよ。その片方が、ウィンゼル島に?」

「まあ、丁度いい足場を作っちゃったような感じだから、私としても責任感じていて。前にウィンゼル島のダンジョンは侵入禁止になったっていう事は報告したと思いますけど、それってサマルカンドの劣化版なんで、研究されたら不味いんですよねー」


「マナ、そこまで話していいの?」

「あ、ルード起きた?いいかどうかは分からないけど、ギルドに話しておけば、トラス皇国の方は何とかしてくれるかもだし」


 ぶっちゃけ丸投げしたい。私が作った結界碑自体は材料さえ揃えば凄腕の錬金術師なら解明して、複製も可能だと思う。

 怖いのは、それに対する弱点とか見つけられちゃったらという事。

 サマルト様の神器はそう簡単に破られないだろうけど、同じ系列の物だから。

 昼間ここで何か見つかったら夜、スマホ内の工房で研究して、それでも納得いく成果は出ていない。

 

 今日か明日に終わるのは、ここの蔵書だけではどうにもならないかもしれないから引き上げるっていうだけだ。

 今回、サマルト様が何も言ってこないのは、私の作った魔道具が解析された位では何の影響もないからなのか、人の手でダンジョンコアをどうする事もできないからか。


 かといって、この件から手を引くのは違うと思う。

 最低でも橋をかけられるのは邪魔しておかないと。

 結界が破られる心配はなくても、外側にいる魔物を狩ってエルフ達は生活しているんだから。


「ホルアスの西、レスティアは知っていますか?」

「ホルアス…んー?どっかで聞いた気がするな…」

「美味しいダンジョン」

「あー!思い出した!」

 サブマスターは、美味しいダンジョンという名称と、それで思い出したマナに、思わず吹き出した。

「マナさんはレア食品が出ても、売らないんでしょうね」

「絶対に売るはずないじゃないですか!ああ…ヒナイドリもタケマツも、すっごく美味しかった…」


「それで、レスティアには何が?」

「ああ失礼。錬金術の盛んな国なので、詳しい人もたくさんいますし、関連の蔵書もここの比ではありませんよ」

「行きたい!」

「それは、結界碑のヒントを見つける為に?」

「え?も、勿論だよ…あはは」

「時間的猶予も少ないよ?魔道具の換えが幾つあるか分からないけど」

「そしたらまた壊す!」

「また…ですか?」

「あ…そこは聞き逃して下さい!」


「まあいいでしょう。今、紹介状を書きます。これがあれば、制限をかけられることなく読む事ができるはずです。ただ、その図書館では寝られると困るのですが」

「ルードはお留守番だね!」

「でも…」

「寝ないでいられるならいいけど?サブマスターさんにも迷惑かけちゃうし」

「…むう」

 マナは、目の前に積まれた本をもう一度見る。


「今日できるだけの事はしちゃうから、ルードは準備お願いしていい?」

 準備というのは、勿論ゲートの準備だ。

「分かった。仕方ないから先に帰るけど、マナは知らない人に美味しい物貰ってもついて行っちゃだめだよ?」

「そこまで子供じゃないよ!」

 失敬な。


 




 


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