タタミイワシと新しいお風呂
ツリーハウスに戻って、ルードの収納庫をチェックした。
「これがタタミイワシだよ」
確かに自分の知っているイワシと違う。頭を取って乾燥させたらあの大きさになるだろう大きな魚だ。
その他にもたくさんの獲物がいる。朝いちで行って戻ってきたから充分に時間はあったとはいえ、つい半年前までまともに泳げなかったルードが、随分進歩した。
見かけ通りの人族でもないから、30分位なら潜っていられる。
ブルージュエルクラブも、ブラウンガザミもいる。どっちも海底にしかいない物だ。
ん?見たことないのがある。海老みたいだけど、毛が生えている。
看破 ケエビ 小型だが、味は美味
想像通りの名前来た。もう驚かない。
「ケエビは食べた事なかった?毒はないから大丈夫だよ」
「うん。ありがとう、ルード」
蟹とか海老が多いのは、私の好物だからかな?
そして恐らく毒持ちは、ルードのお腹の中に消えたのだろう。
「師匠が泳ぎを覚えたがっていたから、ちゃんと教えられるようになりたいんだ」
獲物に夢中になっていた訳じゃなかったのかな?
「そうなの?なら、ルビー母さんに水着を作って貰わないと」
「師匠…水着着てくれるかな?」
「服のままだと泳ぎにくいし、裸はまずいよ」
「そもそも人に見られる所で師匠が泳ぐとも思えないけど」
「暖かくなったら私も誘ってね」
折角だから、今日採った素材を使おう。
ブラウンガザミの焼き蟹と、バブルフィッシュのカルパッチョに、ワカメの味噌汁を作った。
ご飯もたくさん炊いてある。それなのにルードは物足りなそうな顔してたから、前に作った煮込みハンバーグを出してあげたら、凄く喜んで、更にご飯をお替わりしていた。
ルードの異次元腹はいつも通りなので放っておいて、マナはロックタートルの甲羅を出した。
甲羅の上にはごつごつと、硬い岩がたくさんついている。
ひっくり返して、お腹側の比較的柔らかい部分を、短刀で切り取る。
クリーンをかけて中で寝てみる。下がごつごつしてるからか、安定が悪い。
もう一度ひっくり返して、なるべく平らになるように削ってみる。
短刀だとやりにくいな。
「マナ、明日母さんがやってみるから」
亜空間自体は傷つかないけど、私だけでは限界があるかも。
仕方なくビッグタートスの甲羅風呂にお湯を張った。
外のお風呂は寒いし、長年使ってきた私専用のお風呂も、今日で使い収めだ。
肩まで浸かるように寝転ぶと足が出るし、足を無理に入れようとすると、膝が出る。
クリーンで済ませばいいだけなんだけど、潮風に当たっていたから、お風呂で落としたい。流石に髪の毛にはクリーンをかける。
屋内のお風呂だから、そこが不便。日本式のお風呂は偉大だった。
中で洗ってもそもそも甲羅風呂が浅いから、結局は外側に流れちゃう。
空間把握で不要な物は外に捨てられるけど、いちいち面倒。
やっぱり下に受け皿的な物を作ろうかな…でも私専用のお風呂に、そもそも浸かる専用のお風呂にそこまでしてもな…。
(マナ、僕も水あびしたい)
「今出るよ。こぼれたら綺麗にしておいてね」
ドライで乾かして、パジャマに着替える。そのままベッドに入ろうとしたら、ルードがパジャマの端を咥えて引っ張った。
今日はベッドで寝る日だったはず。
…まあ、たくさんの海産物のお礼だと思えば、いいかな。
もふもふ毛布にくるまって、ルードの鱗にもたれかかり、スマホを手にした。
スマホがマナの手から滑り落ちると、ルードは尻尾で器用にスマホを炬燵の上に乗せた。
変な夢見た。昨日読み始めた小説の影響か、私は悪役令嬢で、ルードが偉そうな格好してて、私を婚約破棄した。
只の夢だけど、私がヒロインとかやめてほしい。どうせなら村人その1とかでいいんだけどな。
主人公はどう考えても波瀾万丈な人生しか送れない。そしてチートでハーレムで、俺最強!
やばい。スマホはチートアイテムだ。けど魔王はおっぱい星人で、いい人だから倒したりはしないけど。
ハーレムより私はもふもふがいいな。俺最強!の座はルードがいるし。
朝から変な事考えちゃった。
ルビー母さんを手伝って、ロックタートルの甲羅風呂は完成した。何年使えるか分からないけど、あと10センチ伸びてもまだ余裕がありそうだから、数年は持つかな?




