海岸ダンジョン終了とお買い物
海岸ダンジョン15階層。
「うわ…凄い綺麗!」
迷路は無く、辺り一面色とりどりの珊瑚が生えていた。
水深はマナの膝位で、よく見るとカラフルな熱帯魚らしき魚も泳いでいる。
飛び出して行きそうなマナの襟首を、ルードが掴む。
「ここはダンジョンなんだから、無防備に飛び出さない」
スカイが階段から下りずに、珊瑚を採取しようと、手を伸ばす。と、突然珊瑚の枝が伸びて、スカイの手を刺す。
「これ、麻痺毒持っているね。ダメージも幾らか入るみたい…っと」
熱帯魚のような魚は、鋭い牙を持っていて、スカイに噛みついた。
「大丈夫?スカイ」
「平気だよ。すぐに治せるし、マナが怪我するよりずっといいから」
「そういう無茶は私、要らないって言ってるでしょう?」
「どうする?フロア全体が罠みたいな所だし、正直これ以上進んでも、得られる物は少ないかもよ?」
とりあえず手近な所にあった珊瑚を斬りつけて倒すと、珊瑚のほんの一部がドロップされた。
「むう…確かにあんまり美味しくないダンジョンだけどさ」
ギルド情報も、14階層までしかなかった。
「にゃーはジンギスカンがいいにゃ!」
「私は焼き鳥が食べたいわね」
「折角海の近くなんだから、釣りもしたいな」
「この綺麗な物、僕はもう少し欲しいかな」
確かにアクセサリーには加工できそうだけど、スカイだから…まあ、他人にはガラクタでも本人には宝物みたいだし。
「ブーツの底も、貫通するのかな?」
ダメージ的には大した事はなさそうだし、試す価値はあるかも。
「マナ、僕が行くから」
ルードの保護者っぷりが、あの件以来増し増している。
「貫通したよ。だからマナは来ちゃだめ」
熱帯魚もジャンプして噛みつこうとしたが、ルードはさっと避けた。
「人の気配は感じないし、スカイ、階段探して来て」
フェニックスに戻ったスカイが、辺りを飛びまわる。
(階段、なかったよ)
うわ。ここが最終階層とかないわ。
「港町に戻ろうか」
ため息をつきながら言うと、みんな頷いた。
とりあえず買い物をする事にした。海で採れた魚や、ダンジョン産だと思われるワカメも売っている。
「ワカメはたくさんあってもいいよね?」
「ダンジョンで採ってもいいけど、ああも人が多いとやりにくいから、買ったら?」
まあ、新鮮みたいだし、買ってもいいかな?他の魚は見たことあるのが多いけど…あれ?これは…
「それはタタミイワシだよ。そのまま頭と皮、骨を取って乾燥させた物なんだ。美味しいよ」
へ…?畳なんてあるの?
「どうしたの?マナ」
「いや…畳があるのかなって」
「タタミじゃなくて、タタミイワシだよ?」
看破 タタミイワシ 同名の魚を乾燥させた食べ物。美味
ああ…やっぱりバッタもんの方か。私もいい加減慣れないとな。
とりあえず一枚買って、ちぎって口に入れてみた。
あ…美味しい!
「すみません、買えるだけ下さい」
全部欲しい所だけど、物によっては逆に嫌がられる。
薬草なんかがその代表格で、だからテングサも買い占められない。
「おや。ちゃんと分かってていい子だね」
それでも八割方売ってくれたのは、あまり珍しい物ではないのかもしれない。
「マナがタタミイワシ気に入ったなら、海に潜って採ってくる?」
「え…泳げる気温じゃないよ?水も冷たいし」
この辺は魔の森よりも少しは暖かいけど、季節はまだ春先だし。
「僕には関係ないよ。大丈夫。人には見られないようにするから」
爬虫類って寒いの平気だっけ?
「何か失礼な事考えてない?」
「ええっ?顔に出てた?べ、別に考えてないよ?」
竜って大きいトカゲみたいだな。とか。
「言っておくけど、竜とリザード系は全くの別物だからね?」
「へ、へえ。なるほどー。分かっているよ。あはは」
「なら私達は、バブルフィッシュを狩りに行きましょう」
ルビー母さんが、助け船を出してくれた。
「うにゃ…アワアワ嫌にゃー」
「なら僕と、ユキはアサリを採りに行く?」
「マニャはウミネコとどっちが嬉しいにゃ?」
「どっちでもいいよ。二人で決めて」
大アサリは、スマホの中でも採れるからね。
亜空間移動ですぐに戻れるからといって、ルードをおいてけぼりにするのは嫌だからね。




