早い者勝ち!
食事が終わるとみんな、期待の眼差しを向けてくる。
「テイム。ルビー、スカイ、ルード、ユキ、アカツキ」
あれ?ルード、テイムできない。
「ルード…従魔は嫌?」
「嫌なんてない!でも…僕には資格がない。従魔じゃなくてもマナの事は守る」
「ルードのせいじゃない。そんな事言ったらみんなの命をもらった私はどうなるの?」
「ごめん…ごめん、マナ」
縋り付いて泣くルードの頭を、優しく撫でる。
ルードは、謝りたかったんだね。私に許して欲しかった。
私も同じ。許して欲しくて帰ってきた。
「ルード、繋がりすらないと、何も分からないよ?」
「うん…ありがとう、マナ」
ルードとの従魔のパスが、繋がった。
「さて、もう寝ようか?」
「マニャ、眷族にするにゃ!」
「ええと…従魔のままじゃ、だめ?」
「マナ?確かに従魔でも主の様子は分かるけど、眷族の時に比べたら全然じゃない。私は嫌よ。みんなもそうでしょう?」
頷くみんなに、マナは、顔に手を当てて、首を横に振る。
「私は、みんなの命を犠牲にしてまで生き残りたくない。それに従魔だったら契約を切る事もできるんだよ?必要な食材は渡すし、亜空間だって開けばいいだけだよ」
「無茶しなければいいだけよ。今回だって、みんな生きてるわ」
「それは、蘇生石っていう裏ワザ的なアイテムがあったからで」
「なら、また作ればいいわ。そうすればマナも安心なんでしょ?」
マナは、スカイをちらりと見る。
「ピエッ?!」
「やっぱりだめだよ。それは人として間違っているよ」
「そんなの、別に無くてもいい。今度こそちゃんとマナを守る」
「にゃ?スカイの蘇生石…割れてないにゃ?」
「うん…種族的な問題かな?眷族の繋がりは切れたけど、フェニックスは不死の象徴だし」
(ならマナ、僕なら安心して眷族にできるよね?)
「スカイ!抜け駆け禁止よ!」
「ならこれはにゃーが貰うにゃ!スカイは要らないにゃ!」
「ユキ!」
「早い者勝ちにゃー!」
「もう。そもそもそういう話しじゃないんだけど!」
「マナ、母さんは別に死にたがっている訳じゃないわよ?マナが大切なだけ。この三日間、とても辛かったの。死ぬ感覚は嫌なものだけど、それでマナが生きていられたとしたら、嬉しいの。だって私は、マナのお母さんだもの」
「分かった…でも蘇生石は作る。ユキの玩具、また違う羽根で作ってあげるから」
「あんなボロボロでもいいにゃ?」
「多分平気…けど二人分には足りないかもしれない」
(僕のきらきらは取られちゃうんだね…)
「嫌なら毟ればいいにゃ!」
(そ、そのうち自然に抜けるよー!)
「マナはまだ、具合が悪いみたい。今日はもう寝ましょう?」
(マナ!僕をもふもふしながら寝れば、癒しの聖域をかけてあげるよ!)
「それはだめ。僕の方がスキルに慣れてるから、僕がかける」
(でも僕だって、慣れておかないと)
「もういっそ、その羽根全部毟ろうかな…イライラするし」
「もう、また始まった。どっちでもいいし、ルードはスカイ脅すの禁止!」
結局、どっちにもかけてもらう事になり、マナはスカイを抱っこしてベッドに入った。ルードは後ろ側。なんだかんだ言っても、私がもふもふ大好きだから譲歩してくれる。
次の日起きると、もふもふが違うもふもふに変わっていた。
ルードの癒しの聖域はまだ続いているけど、追い出されたスカイの方は途切れている。
ユキに顔を埋めてもふもふを堪能して、起きた。
もうすっかり体の調子は良くなっている。相変わらず非常識な回復力だ。
朝食の準備をしていたルビー母さんを手伝って、その合間に髪を整えてもらった。
そんな日常が、堪らなく嬉しい。
「マナ、もう大丈夫なの?」
「うん。もう元気だよ?」
「なら、母さんを一番に眷族に戻してくれるわよね?」
んー、確かに誰が一番かで揉めそうだな。
眷族の感覚は覚えているから、前みたいに苦労する事はないと思う。
ルビー母さんに抱きついて、魔力をしっかりと感じる。あっというまにパスが強化されて、眷族に戻った。
「今回は全く苦労しなかったわね?」
「なんとなくだけど、私の中にルビー母さんの場所が残っているんだと思う。そこを繋ぐ感じだから、そんなに難しくなかった」
「良かった。負担はない?」
「さすがに今日中に四人は無理かもだけど、まだ大丈夫」
(あれ?え!ルビーが抜け駆けしてる!)
「うるさいにゃ、スカイ。…にゃ?ルビーずるいにゃ!」
「ふふっ、早い者勝ちよ!」
「にゃーも!にゃーが先にゃ!」
「あー、はいはい」
ああ、ユキのもふもふが気持ちいい…じゃなくて、ちゃんとやらないと。
「にゃ…凄いにゃ、マニャ」
「んー、ユキのもふもふもすごいよー?はふ…幸せ」
(マナ!僕も!)
「その前にご飯にしましょう?マナも疲れたみたいだし」
「ごめんね、スカイ」
朝食のいい香りに寝ぼけまなこのルードが起きてきた。
欠伸の為に開いた口が、驚きに変わり、開いた口が、塞がらない。
「ルビー!ユキ!いつの間に!」
「いつまでも寝てるのが悪いにゃ!」
(次は僕だからね!)
「えええー!」
「これに懲りたらルードもたまには早起きしてみたら?」
私も朝イチから疲れる羽目になるなんて思ってなかったけどね。自分の中に他人の魔力領域を設ける訳だから、慣れた物だとはいえ、負担はかかる。
次はスカイか。終わったらもふもふしまくる!ふわふわの羽根全部、堪能し尽くすまで離してあげないんだから。




