終わりは突然に
キングクラーケンの下処理をルードにお願いして、マナは厚みのある本体からこれまた頑丈な皮を剥がす。
「ちょっと待ってマナ…そのゲームの中には強い魔物はいないんじゃなかったの?」
「昨日、中の海で泳いでいて、随分沖の方まで続いている事が分かったんだよね。私もびっくりだったよ」
「マナ!キングクラーケンは充分強い魔物!その中にはアカツキしか連れていけないんだから、無理しちゃだめだろ!」
ああ、うん…アカツキは泳げないから私一人で戦ったとか言えないかな…。
「ルードは本当に過保護ね。マナは大丈夫よ」
「マニャは強いにゃ!」
「分かっているけど、じゃあ二人はマナが心配じゃないの?」
「心配だけど、マナは私達が大切だって知ってるからこそ、大丈夫だと思うのよ」
「どこにいてもマナと繋がりが切れない以上、運命共同体だからね」
たまにガンガンいこうぜになってるけど、私だって自重してる。
ルードはため息をついて、太いいかげそから軟骨を外す作業を再開した。
亜空間が開いて、スカイが入ってきた。
「マナ、ユキシタ見つけたよ?」
ユキシタは、ふきのとうもどき。色が赤いけど、形はそのもの。
ただ、こっちの方が苦みが少ない。
味覚も子供になった私には有難い。まだ辛いものは無理だけど、ピーマンも、油を通せば全然平気になった。ただしゴーヤーは無理。
苦みよりも辛いのが食べられるようにならないかな。
辛口カレーや七味せんべい、タバスコも大好きだったのに。
イカの一部は持って行って燻製にする予定。下足はやっぱり唐揚げかな?
シャチザメを出したらまた心配させちゃうかな?
いや、ルードの事だから、料理にしちゃえば気がつかないか。
イカステーキを食べながら、納豆餅を食べる。これも熟成小屋のお陰だ。餅つきの魔道具も作ったので、これでいつでも食べられる。
納豆が苦手なルビー母さん以外のみんなの為に、あんこもきな粉も用意してあるし、スープに入れた雑煮風のも用意した。そして気がついた。海苔がない。
「ね、海苔を採りに美味しいダンジョンに行こう?」
「この前手巻き寿司やった時にたくさん使ったものね」
「うん。餅に醤油を付けて海苔を巻くと美味しいんだよ!」
「へえ。なら明日にでも行く?」
「うん!」
ホルアスダンジョンの19階層。アカツキを盾に、海苔を切り裂く。だいぶ貯まってきた所で、今までとは違った亜人タイプの海苔が襲いかかってきた。これはレアアイテムの予感!
物理攻撃が効きにくい。魔法も、ひらりと躱される。
ルビー母さんの蜘蛛の糸で拘束して、ホーリーで頭を吹っ飛ばした。
ドロップアイテムは、瓶に入った海苔の佃煮だ!
「その黒いの、食べられるの?」
「白いご飯にのせて食べると美味しいんだよ!」
懐かしいな。瓶も大きいからたくさん食べられそうだ。
小瓶一つ100円だった物がレアアイテムなのはちょっと悔しいけど、海苔が貴重だから仕方ない。
20階層のキメラは、前回の教訓を生かして、魔法抜きで仕留めた。猛毒ブレスを放ってきたけど、私には効かないし、スカイが回復担当にまわってくれた。
宝箱に入っていたのは小型の円盾だ。受け流し効果大と、魔法防御の付与が付いている。盾は誰も使わないんだよね。一応授業で習ったけど、風の抵抗が鬱陶しいから、要らない。まあ、売却決定かな。
21階層のサテュロスを倒しながら、階段を探す。
シェーブルチーズはまだ入っているので、積極的には狩らないけど、襲いかかるのは倒していく。
うーん、罠が多い。
ルビー母さんの踏んだ罠に、上から槍が降ってくる。それでスカイが巻き沿い喰らったりして、なかなか思うように進めない。魔物自体も強いから、仕方ない。
それでもやっと階段を見つけて降りる。
22階層は、ブラッディースパイダー。デススパイダーの上位種で、ルビー母さんがアルケニーに進化しなければこっちに進化していたかもしれない種族。蜘蛛系魔物の、最強の種族だ。
その魔物を見た途端、ルビー母さんが私に上層階に戻れと指示する。
ルードも私達を守るように立つ。
「マナ!ユキとスカイを影に入れて、アカツキに乗るんだ!」
飛んでくる蜘蛛の糸を避けながら二人を回収して、アカツキに走り寄る。
まずい!と思った時には、ルードの祝福を回避し、一部破壊した蜘蛛の糸が絡み付き、左足の付け根からバラバラに切断されていた。左腕の肘から下もない。
左側の腹部にも一部糸が貫く。
咄嗟に亜空間を開いて転がり込む。
やばい…死ぬかも。手足が生えてくるのを感じるけど、蘇生石は一度砕けた。それと同時に意識を失った。
大切な繋がりが、次々と切れていくけど、マナにはどうする事も出来ない。目を開ける事さえも。
ごめんなさい…みんな…
最終回じゃありません・゜゜(p>д<q)゜゜・




