謎肉と魔道具の設置
ツリーハウスに戻って、ルードが帰っていたので、ちょっと甘えた。
「聖なる癒し、かけて。集中し過ぎて頭が痛いよ」
「精神的疲労?治るかな…」
ふわふわと漂う光が、マナを癒してくれる。
「うん。頭痛いのとれた」
ルビー母さん達が帰る前に準備しようと思ったけど、ルードが離してくれない。
「僕もダンジョン攻略で疲れているんだ。癒して」
まあ、確かに頑張ってくれてるし。
「そういえば、収納庫に入っていた謎の肉は何?」
「え…アースドラゴンのドロップアイテムだから、竜の肉?」
「え、でも…」
看破 謎肉 竜の肉らしい?柔らかくてジューシー
「あ、ちょっと変わった。竜の肉らしい?って文がなかったんだよ」
「…食べるのやめておく?」
「え!そんな勿体ない」
マナは、フライパンにほんの一切れだけ乗せて、焼いてみる。
塩をほんのひとつまみ加えて、口に入れた。
「んー!美味しいけど何だろう。成型肉っぽい感じ」
「美味しいなら、僕にも焼いてよ」
「いいけど…共食いにならない?」
「そんな事言ってたら、スカイはどうなるのさ。魔物はそんな事気にしないよ?」
それもそうか。
サイコロ状に切って、野菜と一緒に炒めた。ルードが一欠片つまんで口に入れた。
「竜肉に、何か混ざっている気がする。まあ、美味しいけど」
「!既に共食いしてるの?」
「だから共食いから離れてよ。自然にいる竜は貴重なんだから、食べる訳ないし」
確かに、竜なんてルードの家族と、黒竜さんしか知らない。
まあ、ダンジョンだから、何があっても不思議じゃないか。
そんな事をしている間に、みんな帰ってきた。
「にゃー達は、シジミー採ってきたにゃ!」
「僕はジンギスカン!」
「ああ。モコモコの肉ね」
ルードの突っ込みは誰も聞いていない。私がずっとジンギスカンて言ってたから。
「この件が片付いたら、黒竜さんも呼んで打ち上げしたいって思っているから、ジンギスカンは嬉しいな」
「師匠にはユキの時もお世話になったからいいかもね」
あの戦いは、つらかったけど、得る物も大きかった。
「マナの方はどう?」
「ん。聖別の結界の方は出来たよ」
「凄い!神様と同じ物を作ったんだね!」
「ううん…違うよ、スカイ。さすがに国を覆う程の物は作れないし、魔力も必要だし。ダンジョンの入り口を覆う程度の物しか作れないよ。それにもう一つの方が更に難しくて」
「材料は足りそう?」
「ん…今日1回失敗したから、あと爪が二つしかない。だめだったら、お願いするしかないかな…世界樹の葉はこの間いっぱいもらったから、まだ大丈夫だけど」
そして何故か、世界樹の葉を材料とする魔道具が幾つか増えた。
死亡を一度だけ防いでくれるアクセサリーなんて、ゲームのアイテムみたいだ。
ただし、寿命で死んだ場合は無効。病気は治る訳じゃない。まあ、病気は大概万能薬で治せるけど。
これはいずれ全員分作るつもりだ。みんな強いけど、何があるか分からないし、それに…私が寿命で死んだ時、眷属の繋がりが消えてみんなが生き残るかもしれない。
「ルビー母さん、アルケニーの寿命ってどれ位あるの?」
「え?…どうしたの、急に。アルケニーまで進化したスパイダーは少ないし、分からないわ」
「魔物は上位種族になるほど寿命は延びるから、マナが心配する必要はないよ。ユキの件が気になってる?」
「にゃーは白い魔物だったから特別にゃ。けど、マニャの薬のおかげで死ににくくはなったにや!」
「不死の霊薬を飲んでも死ぬの?」
「うにゃ…強い魔物に負けたら死ぬにゃ。それはみんな一緒にゃ?」
「まあ、そりゃあそうなんだけど…」
私は一度スカイを生き返らせたみたいだけど、何をどうやったか全く覚えてないし、聖魔法の蘇生も、魂が離れたら生き返らない。私がみんなの側にずっといられる訳じゃないから、蘇生アイテムは作っておきたい。
謎肉の油炒めは、好評だった。一緒に出したポテトサラダはそんなに減らなかったのに。
もう。これは私が食べるからいいもん。肉食獣め。
「マナ、見て、きらきらのコップ」
スカイはあの花火の置物以来、硝子細工に嵌まっているみたいだ。
材料は近くの川で調達できるし、いいと思う。
「スカイ、これじゃ何か入れて飲む時に、厚みが邪魔になるよ。コップはシンプルな方がいいと思うな」
「そっか…実用的な物。薬瓶とか作ったらマナの役に立てる?」
「スカイが薬作り学ぶなら、必要になるんじゃないかな?その前に、道具は買ってね」
翌日、聖別の魔道具を設置して、鳥人族が入れるか確認した。
「大丈夫みたいだね…多分?」
「これがあると、人族の冒険者は中に入れなくなるのですか?」
「そのはずですけど…確かめようがないな」
ふと空を見ると、何か飛んでいた。マナは高く飛び上がり、蔦でぐるぐる巻きにする。
「ガウガウ!」
はあ…よりにもよってバードッグか。
噛みつかれるのが嫌なので、口も蔦でぐるぐる巻きにした。
それを持ってそのまま入ろうとするが、結界に阻まれて、入れない。
「確かに魔物は入れなさそうですが、あなたは入れますよね?」
「私は、精霊に好かれるたちなので」
「精霊、ですか?」
「ええと、話しは聞きましたよね?エルフの国の西側に降ろすと」
「はい。ですがそういう結論に至ったのは何故です?」
「デモンズイルの魔素の乱れは分かりますか?」
「あの島は、いるだけで気持ち悪くなります」
「そう、それが原因で島も移動出来なくなり、弱体化したんです。
もう一つ、魔素安定化の魔術具を作っているので、それが出来次第、島は再び動き、予定の場所に行きます。
これはダンジョンコアの意思でもあるので、変更はできません」
「その様な物がある事さえ我々は知りませんが、信じるしかないのでしょうな」
「ぶっちゃけそういう事になります。やらなければ、島は落ちます。大惨事です」
「分かりました」
そういえばこの島は、厚みとか平気なのかな?海に落ちたらまとめて水没したりしないよね?
マナはそっと島の端に寄るけど、10メートル手前から、先に進めない。
無理。下を確認するなんて絶対できない。
大丈夫。神様が提示した方法だから、島が水没とかないよね!うん。私はサマルト様を信じているから。
逃避じゃないよ!信じているんだよ!




