小さなダンジョン
誤字報告ありがとうございます。
ダンジョンは、ほぼ島の中心部にぽっかりと穴を開けていた。
早速ルビー母さん、ユキと共に中に入っていく。
一階層はコッコ。今日中に攻略したいので、長居はしない。
鳥肉…共食い?いやいや。スカイだって鳥肉食べるし。
一階層の面積、随分狭いな。島だから?まあ、助かるけど。
二階層はブラックファング。私にとっては初見の相手だけど、シルバーウルフよりちょっと弱い位。
なるほど。鳥人族の人達が着てたのは、この皮の服か。
九階層のビッグボアを倒しながら、階段を探す。
「ここが最終階層かもね」
「そうね。こんな狭い所で見逃すはずないし」
「うん。コアの所に入れる壁を探すから、護衛お願いね」
とはいえ、ビッグボア位なら敵じゃないけど。
マナは五感強化を目に発動して、じっくりと壁を観察する。
「見つからないにゃ?」
なかなか見つけられない私に、ユキが声をかけてくる。
「コアがない。なんてことはあるのかな?」
あれ…行き止まりの下の床…色が濃い?
「見つけたかも。待っててね」
マナは床に吸い込まれた。
綺麗に着地して、目の前の階段を下りると、くすんだ色のダンジョンコアが浮いていた。
「あの…お話を聞きたいんですけど」
(なんだ…人?いや、神か?)
「初めまして。マナです。神様じゃないです。あの、この島について聞きたいんですけど」
(うむ…どうせ私はもう保たぬ。この島の住人に危機を知らせてくれるというなら、私が知ることなら答えよう)
「約束します。あの、先ほどの言い方ですと、ダンジョンコアがだめになると、島も…落ちたりするんですか?」
(私にもそれは分からぬ。だが、ここから動けなくなってから、私の力は落ちる一方だ)
(何故動けないとか分かります?)
(多分、あの乱れた魔素が原因かと。偶々近くを通った時に、まるで吸い寄せられるように動けなくなった)
「島の精霊に元気がないのも同じ原因かな?」
(うむ…数もここ100年で随分と減ってしまった)
魔族の島には精霊はいなかった。ユキみたいな大精霊クラスじゃなくて、漂っているだけの微精霊は、一つ一つだとすごく弱いと聞いた事がある。
人族も同じ。種族として弱いから、魔族の島に住む事ができない。
だからこそ、弱い部類の魔物も住めないのかもしれない。魔族の島の魔物は、魔の森と変わらない位強い魔物が棲息している。
スマホに、メールが届いた。
メールの中身はある魔道具の設計書。
作れなくはない。ただ、魔族の王様あたりに話しを通さないとだめだろうな。
「ダンジョンコアさん。何とかなるかもしれません。ただし、この場所から移してしばらくは飛べないです。色々と限界なので」
(移す…しかし休める場所などこの地にあるのか?鳥人族はどうなる?)
「ちょっと色々な場所を回って納得して貰わないとだめですけど、だから、確約はできないですけど、頑張ります。とりあえずの魔力は渡しますけど、成長ではなく現状維持に使って下さい」
マナはダンジョンコアに触れ、キスした。大量の魔力がマナからコアに流れる。
…はあ。しんどい。
およそ7割位の魔力を渡したので、充分だろう。
(素晴らしい!やはりあなたは神だったのですね!)
違うっつーの。ダンジョンコアはみんな、私を神扱いしないと気が済まないのかな。
抜け穴の下まで歩き、そのままジャンプして上がると、ルビー母さんとユキが待っていてくれた。
「時間かかってごめんなさい。先に上に戻ってもらっていれば良かったね」
行き止まりの通路の入り口に蜘蛛の巣が張ってある。多数のビッグボアが罠に引っかかっている。
「大丈夫にゃ?魔力が少ないにゃ…」
「大丈夫だけど、ちょっと休ませて」
マナは、アルケニー姿のルビー母さんの上に登った。
「戦いはにゃーに任せるにゃ!」
ダンジョンから出ると、ルードとスカイが待っていた。その頃には魔力も回復していたけど、二人共心配で見に来てくれたんだろう。
「とりあえず亜空間に入ろう?」
わざと鳥人達に姿を見せてから、亜空間に入った。
丁度いい時間だったので、作りおきの夕ご飯を食べた。
「なるほど…鳥人族と魔族、それにエルフに話しを通す必要があるんだね?…あと心配なのは、トラス皇国か」
「私は魔道具を作らないといけないから、なるべく分担して動いて欲しい」
「魔族の王には僕が会うよ。一番厄介そうだし。夜にはマナの亜空間に入って情報交換していくようにしよう」
「鳥人族への説明は、そう難しくないと思うんだ。多分エルフの国にも。トラス皇国は、正直動いてから対処することになりそうだな」
「なら私は、鳥人族の説得の後、トラス皇国に潜入するわ。動く前にある程度の情報も仕入れられるし」
「ユキとスカイはエルフの所かな。その後は状況次第で誰かのサポート」
暫くは忙しくなりそうだな。




