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デモンズイルで

 ルードが帰ってきてしまった。

 マナは深いため息を吐く。

「ちょっと酷くない?たくさん飛んで長旅から帰ってきたのに」

「あ、ごめん。つい」


「全く…準備は終わった?」

「料理はいっぱい作ったよ!」

 図鑑を埋める為でもあるけどね。


「そう。一応、ギルドに寄って確認したけど、神官からの情報はとても曖昧なものだった。ギルドとしては、目も瞑れない。とはいえ飛んでいる島を探れる者も限られている。飛べる魔族に頼むという方法もあるけど、デモンズイルにはギルドがないからね」

「僻地だから?」

「それもあるけど、魔族で戦えない者はいないからだよ」

 ああ。脳筋集団だものね。

  

「うにゃ?ルード帰ってきたにゃ?」

 ユキがスカイと一緒に帰ってきた。

「マナ、獲物いっぱい採った!」

「ルビー母さんは一緒じゃなかったんだ」

「ルビーは友達の所に行ったよ」

「なら、出掛けるのは明日でいいかな。私はもう少しご飯作っておくよ」

 

 ルビー母さんの友達は、コカトリスだ。私は状態異常無効を取ってから、会わせてもらえた。確かにちょっと危険な魔物だった。

 本人は気のいいおばさんて感じだけど、毒とか猛毒とか麻痺毒とか無意識に吐き出してしまう。小さい頃に会わせてもらえなかったのも納得した。


 料理図鑑も埋め始めると楽しくて、昨日に引き続いて自重せずに色々と作っている。今日はアカツキは釣りに行ってもらっている。

 

 素材図鑑は、もう殆どのページが埋まっている。

 私が手に入れた事のある素材は、未出荷だと名前だけ載っている。

 あ、世界樹の葉とか、ブラッドピジョンは埋まってないや。

 肉はマレサさんにあげちゃったし、あれから見かけた事もないし。

 あれ。ミスリルのインゴットとかも出荷忘れている。


 うっかり忘れていたのを出荷箱に入れて、また料理図鑑を見直した。

 今日はスープ系を作っていこうかな…。


 夕ご飯用のイカ焼きそばを作って、スマホから出た。


 出たら、味噌のいい匂い。わ…味噌煮込みうどんだ。焼きそばは後にしよう。

 いい匂いで寝ていたルードも起きてきた。

「ねえ?100年位前には空飛ぶ島は世界中を飛んでいたって本当なの?」

「みたいだね。原因は分からないけど、そのお陰で魔族と鳥人が交流するようになったし、いいことだよね」

「絶海の孤島と空の島。行き来できるならいいんじゃない?」

「デモンズイルでは植物が育ちにくいからね」

「そうなの?」

「マナも行けば分かると思うよ。だから珍しい食べ物は見つけられないかも?」

 む。それは残念。


 翌日、デモンズイルの王都の外側に亜空間移動した。

「うわ…何?なんか魔力の感じが気持ち悪い」


 どんな風に例えればいいのか分からないけど、魔力をガソリンに例えるなら、魔の森辺りはハイオクで、平地がレギュラー。薄い所が軽油とか灯油?

 だからハイオクだと同じ量の魔素でもエネルギー効率がいい。

 とにかくそういうのをエネルギーに使っているとすれば、ここはその全部がぐちゃぐちゃに混ざった感じがする。

 そりゃ勿論、きっちりと分けられている訳じゃないから他にも混ざっている所もあるけど、ここまでの所はない。


「マナでもだめなのか」

「あれ…他のみんなは平気なの?」

「変な感じはするけど、気持ち悪いまではいかないかな?マナ、大丈夫?」

 う…スカイも平気っぽい。何か負けた気分。

「種族的な問題かな。魔物は元々環境に適応する力が強いんだ。マナは元人族だからね」

 いや、充分今でも人だけど。

「魔族は平気なの?」

「まあ、人より遙かに強いから」

「大丈夫にゃ?」

「ん…慣れれば平気…かな」


 門から中に入ると、ファンタジー小説に出てくるような人達が普通に歩いている。

 角の生えてる人とかコウモリみたいな羽根の生えてる人、顔が牛なのに普通にしゃべっている店員さんもいる。

 そして、普通の村人Aでもそれなりの実力を持っている事が分かる。


「おやおや?これは久々のいい香り…ギャ!」

 声の方を見ると、ルードが女の人を捕まえていた。

「何があったの?」

「こいつ今、マナの事狙ってた」

「いたたた…もうお兄さん、ちょっと勘弁して下さいよ。私だっていきなりとか、そんな非常識な事しませんて」


 一見すると20代に見えるけど、この人も魔族だろうから、分からないな。

「あはは…実は私吸血鬼でして、人の血が大好物なんです!飲ませて」

 いい笑顔で何言い出すの、この人…。

「嫌です。ところで、誰かウィンゼル島に詳しい人知らないですか?」

「あ、はいはーい!私!」

「行こう、マナ。酒場辺りで情報を得た方が早い」

「ひどいですー!私の家は雑貨店なんですよー!」

 胡散臭過ぎる。

「あ、疑ってますね?そういえばまだ名乗ってませんでしたね。私、プリメーラっていうの。マナちゃん?お空に浮かぶ島に行きたいなら連れて行ってあげるわよ?お代はほんの少し、血を飲ませて」

「だとしても、マナである必要はないよな?これ、スカイっていうんだけど」

「ピッ?!」

「人族って言ったじゃない。見かけは人だけど、匂いが人じゃないもの」

「連れて行ってとは言ってないし。詳しい人がいたら話が聞きたかっただけだもん」


「なら情報料!」

 そんなキラキラした目で見られても困るんだけど。

 ていうか、私以外が人じゃないかもしれないのに、騒いだりしないのかな?



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