炬燵
よし。魔宝石もう一つ出来た。これは予備のバッテリーって考えなきゃ。
それと、炬燵の魔道具。
「アカツキ、帰るよ」
マナは、魔法の練習をしていたアカツキと一緒にスマホから出た。
予め考えておいた場所にスノーベアの毛皮をしいて、長方形の炬燵を乗せる。その上に布の中に綿花を入れた布団を被せてルビー母さんに頼んでおいた布をかける。
「それ、新しいテーブル?」
「これは炬燵。この伸びてる線に魔力を流すと、一刻位暖かいのが続くよ」
「うにゃー。新しいベッドにゃ」
「中に入っていると、乾燥しちゃうよ?それに炬燵は一度入ったら抜けられない呪いがかかっているんだよ」
「の、呪いにゃ?」
「そう。冬の間中出たくなくなるの」
「うーん。椅子じゃないから、変な感じ。向かいのユキに、足が当たるし」
「そこは譲り合ってね?」
椅子式の炬燵もいいけど、寝っ転がれる所がいいんだよね。
「ぬくぬくにゃ。確かに出たくなくなるにゃ」
「そして、炬燵といえばみかん!あ、ユキは林檎の方がいいかな?」
籠に入ったみかんと林檎を出した。
ああ…幸せ。
小説を読みながら、ユキを撫でて、もふごこちが違うと感じた。
「ちゃんと毛づくろいしてる?」
ユキにクリーンをかけて、ブラッシングする。
「にゃ…気持ちいいにゃ」
「あらあら。本当に炬燵の呪いかしらね?」
確かにここ何日か、ダラダラしすぎかもしれない。
本格的に寒くなると魔物も数が減るから、その前に肉を確保しておかないと。
「にゃーは炬燵に捕まったにゃ」
ルードは朝から姿が見えない。距離からして黒竜さんの所かな?スカイも自分の亜空間にこもっている。
「久しぶりに母さんと二人で狩りに行きましょう?」
久しぶりに体を動かして、順調に肉も集まってきた。
「ユキも誘えばよかったな」
「そうね。炬燵はすごくいいものだと思うけど、入ると動きたくなくなっちゃうわね。ユキも玩具で遊びもしないで、炬燵にばかりこもっているし」
確かに、いつも元気なユキらしくない。動作もゆっくりだし。
パスからは異常を感じないけど、食欲が落ちてる気がする。
風邪とか、その程度の病気は伝わらないのかもしれない。
私は加護のお陰で病気知らずだし、他のみんなも種族的に強いから…スカイのスキルに、病気を治療する物があったから、かけてもらおう。今まで一度も使った事のないスキルだから、大した事はできないかもしれないけど。
あとは癒しの聖域かな。
「あ、シメジ発見」
肉に加えて山の幸も手に入れられた。
ルビー母さんは、ハーブを摘んでいる。そうしながらも、頭上から狙ってきたシャドウオウルを斬糸で斬る。
マナも別方向から来たワシタカをナイフを投げてとどめをさす。
あ、銃を使えばよかったな。咄嗟だったから、使い慣れてる方の投げナイフを使っちゃったけど、投げナイフはほぼ使い捨てだから、勿体ないんだよね。まあ、今回は刺さったままだから、シェービングだけで使えるけど。
獲物を持って帰ると、ユキは炬燵で寝ていた。
そのままユキに触れながら癒しの聖域を発動する。
「…うにゃ?にゃーは大丈夫にゃ?」
「でも、怠そうだよ?」
「それは炬燵の呪いにゃ。でもそのスキルは気持ちいいにゃ」
(スカイ!)
今度はガラスの物体Xを持って現れたスカイに、ユキに病治療のスキルをかけてもらう。
「マナ、ユキは病気じゃないと思うな。スキルの練度が低くても、それ位は分かるよ」
「本当?」
「元気にゃ。心配ないにゃ」
少し怠そうに見えるのは、寝てたからかな?
「なら一緒に料理しよう?今日は鳥鍋にしようかと思って」
「ピェッ?!」
「誰もスカイを料理するなんて言ってないでしよ?」
「スカイは臆病過ぎにゃ。マニャがそんなことするわけないにゃ」
立つと、目まいがする。でもどっちにもそれを悟らせない。
パスを偽装するのは難しい。いとも簡単にやってのけるルードが羨ましい。
本当に出来ているのかも疑問だけど、確かめようもない。
「にゃーは〆のうどんを作るにゃ。スカイも手伝うにゃ」
「ネギ以外ならやるよ」
こんなスカイだけど、くたくたに煮て溶けたネギは食べるんだよね。あと、カレーを作る時もかなりの量のタマネギを使っているけど、大きく切った物以外は殆ど溶けちゃっているから、気がついていない。
そういう所もスカイだな。だいたいの所はスカイだからで通じてしまうかもしれない。
ユキも、楽しそうに生地を捏ねているし、大丈夫みたいだな。




