ユキ
夜中にふと目が覚めた。
あれ?もふもふが片方足らない。ユキ、トイレかな?
うわ、寒っ!やっぱりトイレの魔道具も必要だよね。考えてみようかな?
木から飛び降りて用を済ませてユキの気配を探ると、木の上にいた。
「ユキ?どうしたの」
「寒くなってきたから、新年の光が見えるかなと思ったにゃ」
木に登り、月を見上げる。二つの月は、だいぶ近くになっている。
「まだあと一ヶ月位早いよ?」
「そうにゃ?」
カレンダーもないし、特に意識してないと分からないよね。
「寒いから中で寝ようよ」
「うにゃ…もう少し月を見てるにゃ。大丈夫にゃ。元々夜行性にゃ」
うん。確かに。ユキにとってはこれ位の寒さは問題ないのかも。毛皮着てるような物だし。
亜空間に戻ったマナを見て、ユキはもう一度月を見上げる。
いつも元気で、優しくて…もふもふされると気持ちよくて。ユキはマナが大好きだ。だから、悲しい顔なんてさせたくない。ユキは、元々アサシンキャットの劣化種。魔物の中に極稀に生まれる色の抜け落ちで、瞳だけ赤いのは、劣化種だと言われてきた。
体力的にも劣り、長生きもしない。弱い魔物は、この森では生きられない。自分がここまで生きられたのは、マナや仲間達が守ってくれたから。
ケットシーに進化しても、毛の色は変わらなかったということは、多分、劣化種は劣化種のままだということだろう。
上位存在であるルードは、主との繋がりまで偽装してみせた。
マナはあの時すごく怒っていたけど、ユキは羨ましいと思った。
自分にも、出来るかもしれない。どうやれば繋がりを偽装できるのか、その時は想像もつかなかったけど、頑張って覚える価値はあると思った。
魔物は、上位種族ほど人よりも長生きする種族が多い。
スカイは、元のサンダーホークのままだったら、こんなに長生きしなかったかもしれない。本人は分かっていたのか分からないけど、レア種族に進化して、克服してみせた。
マナはまだ子供だから、きっと長生きする。できればその全てに寄り添って生きたかった。
「にゃーは、無理かにゃ」
それでもいい。最後まで笑って生きたい。少しでも長く。




