買い物と亜空間
家具屋で大きなベッドと絨毯を買った。私が払おうと思ったけど、ルードが先に払ってしまった。
(あんな大きなベッド、竜の姿でもベッドで寝るつもりなの?)
ルードはぷっと吹き出す。
(いや、ベッドが潰れると思うけど?そうじゃなくて、カードに入れておいてもこの姿じゃ何年も同じ物は使えないから、使えるうちに使わないとね)
(そっか。現金は町に入る為の物だね)
(いや?カードがあれば要らないけど。ほら、何か買ってみなよ)
そう言って、重そうな皮袋を渡してくれた。
中を覗くと、あらゆる種類のお金があった。
(今までも町に来てたの?)
(何度かね。実はギルドカードも持っているけど、流石に30過ぎには見えないから)
確かに。
マナは、初めて見る果物を買ってみた。
鑑定 ナナの実 ねっとりと甘くて美味しい
形はずんぐりとしていて青いけど、バナナかな?
剥いて食べてみたら、種ありのバナナの味だった。ゲーム内の野菜や果物は全て地球仕様だったけど、神様がわざわざ調べてくれたのかな?
その他、珍しい果物や野菜を買って次々に鑑定してみた。
「食べ物ばかり?意外と食いしん坊だね」
「野菜も果物も好きだから。それに珍しい物ばかりだし」
あ、しまった。ここに売っているのは現地の人からしたら珍しくないよね。
「この国ならではの野菜もあるみたいだね」
ルードがフォローを入れてくれた。
「買い物するなら、バッグもないとね」
(時空魔法の使い手はあまりいないから、特に子供のうちは隠した方がいいよ)
(ん。分かった)
少し大きめのリュックを買って、店を出た。
「魔道具も見てみたいな」
何より相場が知りたかった。
魔道具は、高価な物が多かった。はっきり言って作った方が安上がりだ。たかが火を点けるだけの道具に、銀貨2枚は払い過ぎだと思う。しかも魔石は消耗するらしく、安い魔石は持ちも良くないのだとか。交換用の魔石も、小さくて質の悪い物でも結構な値段だ。
(今まで失敗したかも。付与に使う魔石は、そんなに高価なの要らなかったのに、ルビー母さんやスカイに貰った魔石を何も考えないで使ってた。売ればお金持ちだったな)
(あの辺だと、逆に質の悪い魔石を探す方が大変じゃないかな?アルケニーはともかく、サンダーホークもけして弱い魔物じゃないよ)
マジっすか。今まで弱いとか思っててごめん。スカイ。
「教会に行ってみない?マナ」
そういえば、加護を貰っておきながら、姿も知らなかったんだよね。
主神サマルトの姿は、意外に若かった。どちらかというと中性的な姿で、気のせいかもしれないけど、私に似ている気がした。
その他に戦神ドーバと魔法神ルミナス、生命神ライナーと愛の神ミローの像があった。魔法神ルミナスは、女神様のようだ。
本当に私は、何も知らなかったんだな。引きこもりだったから仕方ないけど、ここにはもう、私を虐める人はいないのに。
とはいえ、ルビー母さん達がいるので、町に住むという選択肢はない。
(神様。何とかなりそうなので、安心して下さい。気にしてくれてありがとうございます)
買い物をして夜、亜空間に入って小説を読もうとスマホを取り出した。
?メール…神様しかいないよね。
〈まあ、ちょっと行き過ぎの感はあったけど、許してあげてよ。それと、何か勘違いしているみたいだけど、君に親はいないよ。孤児希望だったし、私がマナを作ってルビーに託したんだよ。だから私が親と言えるかな?おかげで偽装する羽目にはなったけど、彼がしっかり者だから大丈夫かな?まあ…私が作ったから攫われる羽目になったのかもしれないけどね。あはは〉
…軽い。そういう事か。納得。あんまり似てない気がするけど。像は白いし。
まあ、おかげで貴重な体験が出来たと思っておこう。
それと、スマホは収納庫に入れても時間は止まらなかった。
ルードはもう寝ちゃったかな?亜空間に入ってすぐにドラゴンに戻って寝ちゃったんだよね。
いいな。亜空間。でもこんなのがあったら本当に引きこもりになりそう。
んー、トイレ行きたい。
ゲーム内にもあったので、そっちに行く事にした。
このゲームにも夜時間はあるはずだけど、時間表示がないからか、いつでも昼だ。
調子狂うな。農園に行きたくなる。
自重して戻った。
『時空魔法 亜空間を覚えました』
早速試したかったけど、時空魔法の中では開かなかった。
次の日の朝、ルードに亜空間を覚えた事を教えて、早速中に入ってみる。
すごく広い!自分の魔法内だからか、空間も把握出来る。
「やったじゃん。ベッドが無駄にならなくて良かった」
「え?」
「だって人化したままより戻って寝る方が楽だから。同じ魔法を何度も体験したほうが速く覚えられるから、この旅の間に覚えられたらベッドはあげるつもりだった」
「ええー!ちょっと大丈夫?ルードはいい人過ぎるよ。詐欺師とかに気をつけないと!」
「それはこっちの台詞なんだけどね。スマホはもう、他人に教えちゃダメだよ」
「ルードになら、教えていいと思ったんだもん。私だってちゃんと考えてるよ」
「そう?ならいいけど」




