美味しい魚と美味しい魔力
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アカツキ達にも手伝って貰い、網を引く。網が通常の力では引っ張りきれなかった。網目を細かくして貰ったせいもあるかな。
おお!大漁だ!見たことない魚もかかっているけど、海老は大きな物しかいない。
沖の方にはいないのかな?まあいい。
見たことない魚は、殆ど毒入りだった。確かに毒入り魚を店頭に並べるはずはないけどさ。
うん。でもこんなに捕れれば満足だ。
「ぐはっ!」
つまみ食いしたルードが呻いてる。
「これ麻痺毒かな?味きつかったー」
「もう!脅かさないでよ。そして毒を楽しむの禁止!」
「ええっ?!」
「猛毒とか、なんかすごい毒でルードが死んじゃったら嫌だもん」
「あー、心配させちゃってごめん。けど、ドクニジマスならいいよね?あれ、毒弱いし、身も美味しいから」
地球産のニジマスは美味しいよね。釣りでしか手に入らないけど。
「そんなに毒がいいのー?…毒ならあげるわよ?」
「うっ…ルビーの毒は要らないよ。本当に死にそうだし」
ルビー母さんの蜘蛛毒は、ルードも怖れる物らしい。
海遊びを充分に楽しんで、獲物もいっぱい手に入れて、マナ達は満足して亜空間に入った。
「ユキ?寝てたの?」
「退屈だから寝てたにゃ」
「今日は魚尽くしだよ!お刺身に焼き魚に煮付け!」
「美味しそうにゃ!」
「じゃあ、お手伝いお願いね」
魚を捌いているユキを見て、マナはほっと一安心した。尻尾も揺れてて楽しそうだし、大丈夫そう。
暑さに弱いユキだから、元気が出なくても仕方ないよね?
リルのダンジョンは、随分賑わっているみたいだ。
もう鉄しか手に入らないダンジョンじゃない。噂話を聞いていると、結構挑みがいのあるダンジョンになっているみたいだ。
転移門は使えるから、最終階層を指定したら、30階層で止まった。ボスであるアーマードボアは、私に反応しなかった。
少し残念だったけど、アーマードボアなら魔の森にもいる。
五感強化で、リルのいる隠し扉もちゃんと見える。
「お久しぶりです!神様!」
雰囲気的には高校生位に見える。
「なかなか来られなくてごめんね、リル」
ダンジョンの急成長はまずいと、サマルト様にも言われてたから、なかなか来られなかった。
考えてみれば魔力を与えなければ成長したりしないよね?
「何かありましたか?以前と雰囲気が少し違う気がします」
「そりゃ、2年もあれば私も成長するよ。大人っぽくなった?」
見かけ年齢は追い越されているけど、リルはダンジョンコアだから、悔しくない。
「そういうのは分かりませんけど、綺麗な魔力に磨きがかって見えます」
…えー。意味不明。魔力を褒められても、私には全く分からない。
まあ、私は美味しいらしいし?
「リルも立派になったね。最終階層のボスが、魔の森でも見かける種族だし。何故かスルーされたけど」
「神様を攻撃なんてできませんよ!魔道具も置けるようになって、そうしたら中に入る人もぐっと増えて、嬉しいです」
「あはは。神様じゃないんだけど。ならもう、私の魔力は要らないかな?」
「あ…。あのでも!普通に遊びに来て下さい!」
「なら今度は、普通に攻略させて?スルーはちょっと淋しいし」
「分かりました!あの…今回だけ頂いてもいいですか?そうしたら私も、ダンジョンコアとして一人前になれると思うので」
コアの一人前の基準がどの辺か分からないけど、美味しいダンジョン辺りは達人レベルだよね。
「いいけど、キス以外の方法はないの?」
「はあ。あとは血を頂くとか…ですかね?その方法は痛いと思うので」
さすがにそれは嫌だな。それに傷を付けてもすぐに治っちゃうしな。
マナから魔力を貰ったリルは、体を強張らせる。
以前感じた清冽で甘美な魔力が、より一層強力になっている。まるで甘露のように染み渡る。これで神様じゃないなんて、絶対嘘だ。神様なのに、神様である事を否定する理由なんてあるのだろうか?
気を失ったマナに気がついて、リルは慌てて魔力の吸収を止めた。
余韻にしばし浸っていると、マナが目を覚ました。
「ん…あれ?凄く綺麗な…リル、なの?」
「はい。ごめんなさい。美味し過ぎて止められませんでした」
美しく成長したリルは、モデルさんみたいに綺麗だ。
昔の羽虫サイズの頃とは比べ物にならない。
「リルは精霊とは違うんだよね?」
「ダンジョンコアですよ?」
「いや…何か私、精霊の魔力食堂になっているみたいだから」
「食堂…それは、精霊の恩恵を受けられるって事ですよ?」
「そうなの?」
まあ、エルフの国には入れたけど。
「神様は精霊を使役されないのですか?」
「私は無理だけど、私の眷属は精霊魔法を使うよ」
「神様の眷属…羨ましいです」
「い、いやでも私が死んだら眷属も死んじゃうし」
「え?神様なのに死ぬんですか?」
「私は神様じゃないよ。娘ではあるけど」
「そうなんですか?でも、常に一緒にいられるのは羨ましいです」
「また遊びに来るよ」
「はい!絶対ですよ!」




