温水プール
温水プール、作っちゃいました。
とはいえ、土魔法で作ったもので、細長い。
「長いお風呂にゃ?」
「これはプールだよ。泳ぐ練習をするんだよ」
「無理にゃ!沈むにゃ!」
すごい拒否反応。…ユキは無理かな?
「ルビー母さん、人化しないとだめだよ」
蜘蛛の体が浮き輪みたいになっている。そのまま浮かんでいるのも楽しそうだけど、人前では無理だ。
「スカイも、水浴びしてないで、人化して泳ぐんだよ」
水着が少しきつい。多分今、140センチ位はあると思う。
「ルビー母さん、水着がきつくなった。それと、ルードとスカイにも作ってあげて?」
「前に作ったみたいなのでいいの?」
「うん。今すぐじゃなくていいよ」
パンツ一枚で、泳いでみた。スマホ内の海では普通なので、特に躊躇いはなかった。
「全く…大人ぶってる割には。少しは羞恥心も持ったら?」
「あらいいじゃない。ここには眷属しかいないんだし」
ルビー母さんは、眷属の前でも羞恥心持った方がいいと思う。
私はまだぺったんこだから、あんまり恥ずかしくない。パンツははいてるし。まあ…最近は微妙にその辺も成長してるけど。
次の日。プールに温水を入れていたら、スカイが着替えて出てきた。
「ぶっ…な、なんて格好してるのスカイ!」
「え?水着…これ違うの?」
「それ女の子の水着だよー!ルビー母さん!」
20代男性のワンピース水着なんて、誰得?
「どうしたの?」
「あのね、男の人の水着は、ズボンが短い形なんだよ」
「そうなの?じゃあルードの水着も作り換えないとダメね」
「ごめんなさい。私がちゃんと言わなかったから」
「いいのよ。マナのも新しいの作っておいたから、着てみて」
おお!紐の所にリボンが付いていて可愛い。
「マナ、今度は変じゃない?」
ルビー母さん作るの早っ!
「うん。あれ?ルードは泳がないの?」
「魚いないし」
じゃあ私一人でスカイとルビー母さんに教えるようじゃん。
まあいいけど。
胸が浮くって本当なんだ…。
「なあに?マナ」
「あ、ううん。浮けたらこう、手と足を動かしてみて」
(マ、マナ!…)
あ、スカイがまた沈んだ。
勘が悪いというか不器用というか…。スカイは時間がかかりそう。
「少し休む?」
「マナ、僕も見学でいいかな?」
諦めるの早!
「泳げるようになれば楽しいよ?」
「うーん…」
「スカイの好きな魚も活きがいいの食べられるよ?」
まあ、釣りを教えてあげるっていうのもいいかな?
ユキは、木の上からその楽しそうな様子を眺めていた。
最近少し、体が億劫で疲れやすい。そんな素振りは見せないようにしているけど。
何かの病気ならマナが気がつくはずだし、本当にそれだけだから、言いたくない。
ほんの少しの違和感。ユキは頭を振って不吉な考えを吹き飛ばした。
「ユキ?僕達は狩りに行く?」
「行くにゃ」
アカツキが魔法を扱えるようになって、今までの戦力バランスが崩れた。
悔しいけど自分の体にマナをしまえるので、マナを守る力はアカツキの方が勝っている。せめて戦闘技術では負けたくない。
ユキを誘ったのは暇してたからだけど、水を克服出来ないのは、悔しく思っているだろうと思ったからだ。
アカツキの為に魔石もたくさん使ってしまったみたいだし、それなら自分達で集めてやればいい。
「マニャは海に行きたいのかにゃ?」
「海には海の魚がいるし。スマホの中にも海はあるみたいだけど、きっとみんなで行きたいんじゃないのかな?」
「うにゃ…」
「ユキはもふもふなんだから、いいんじゃないの?」
「マニャは優し過ぎるにゃ」
「ユキは、少なくともスカイより役に立っていると思うけど」
「にゃーはもっと料理を覚えるにゃ」
「その意気だよ」
負けたくない。誰にも。




