新しい武器
マナはまだ悩んでいた。元ぐにぐに金属。今は液体金属の活用方法について。
「ね、ルードはどう思う?」
「人が何世代にも渡って研究して、結局何も出来なかったんだから、何か出来ると考える方が間違いじゃない?」
そう。ここはいつもの農園の小屋ではない。亜空間だ。
「それよりアレ、いいの?」
ボール位のぐにぐに金属の中に入ったアカツキがスライムのようにのそのそと移動している。それをユキが姿勢を低くして狙っている。
「二人して遊んでるだけだよ」
ユキが飛びかかると、アカツキは体を硬化させて丸くなる。けどユキも止まらない。ボールになったアカツキを転がして遊んでいる。
「楽しそうじゃない」
私としては、眷属達とアカツキが仲良くなれれば嬉しい。
「ルードはアカツキ苦手?」
「何考えているか全く分からないから。ていうか、感情あるの?」
「あるよ!眷属みたいに明確には伝わらないけど、アカツキは人見知りなんだよ」
「ふうん…」
あ、興味なさそう。
「ちゃんとアカツキが魔物を倒した経験値もみんなに分配されているんだよ?しかもアカツキはレベル上がらないから、私達のものにしかならないのに」
「でもスマホの中だと、アカツキはマナを独占出来るし」
ああ。羨ましいんだね。
「それはそういうものだと思わないと。それに私達は運命共同体なんだから」
正しくは違うか。眷属が欠けても私の方には何もない。…でも、それは自分が死ぬより辛い事。もう、あんな思いは二度としたくない。
アカツキが変形して、ぺちゃんこになった。これじゃユキも、遊べない。…あれ。でも脚がたくさん生えて…げ。Gじゃん!ってもアカツキに分かる訳ないから、偶然だけど。
カサカサ動いて逃げるアカツキを、またユキが追いかける。あ、捕まった。
(主…オタスケヲ!)
「ユキ?その辺にしてあげて」
「うにゃ!」
ユキが、膝の上に飛び込んでくる。もふもふをなでながら、またスライムみたいになったアカツキを見る。
仲間というよりはオモチャかな?
「あ、手紙だ」
簡易転移装置から、紙が吐き出される。アカツキが取ってきてくれた。
「ああ。大砲の魔道具の分析が出たのか」
依頼を受けた者の特権として、専門家が解析した結果を教えてもらうように頼んだのだ。
「これってあの時の武器?マナ、分かるの?」
「一応私だって錬金術師の端くれだよ?」
いや…魔晶石を作っちゃう人は、端くれじゃないんじゃ…。
「なる程。完全に魔力頼みって感じだね。私だったらここをこうして…あれ?これっていけるかも!」
魔晶石の粉と合成した液体金属の形状持続可能時間はおよそ三分。
打ち出されてから敵を倒すまでにそんなに時間は要らない。しかもあとで分離すれば再利用可能だ。
外しても弾は樽二つ分はあるんだし、問題ない。
「ちょっと行ってくるね!」
マナは、スマホの中に消えた。
「今回は置いてけぼりだな」
(主ガ何カニ没頭スルト何モ見エナクナリマスカラ)
「マナの事、ちゃんと分かってるんだな」
ルードはちょっと感心してアカツキを見る。
「もふもふが負けたにゃ」
ユキはちょっと恨めしそうに、スマホをつついた。
「出来た!」
銃というよりは水鉄砲だ。打ち出す時の魔力で、弾は硬化する。
木で作った簡易的に向けて打つと、的は壊れ、貫通している。
威力は申し分なさそうだ。飛距離も普通の魔法より遥か遠くに届く。
あの魔道具に無かったジャイロ効果もあるし、私は命中のスキルも持っている。
それにスカイもだ。これがあればパーティーの後衛として役に立ってくれるだろう。私も場合によっては後衛に回れる。
スカイの分と、魔道具として図鑑を埋める意味で、出荷箱にも入れた。
スマホから出ると丁度夕ご飯前で、今日はネギトロ丼だ。
マナは、収納庫から山わさびを出して好みで付けられるようにした。
普通のわさびは、流石に畑では収穫出来ないから仕方ない。
マナも、ほんの少しだけ乗せた。
因みにスカイはネギ抜きで、ルードは山わさびの乗せすぎだ。まあ、毒の刺激が美味しいと言ってる位だから、どうということはないのかもしれない。
はう…やっぱり山わさびはほんのちょっぴりでも涙が出てくる。ルビー母さんもルードも、よく平気だな。
お子様ユキは、勿論そんな冒険しない。私も辞めておけば良かったな。
初めは銃に戸惑っていたスカイだったけど、弓で鍛えた命中スキルのお陰で、飛んでる鳥を打ち落とす事に成功した。
ただし、これを使うのは人前では禁止にした。軍事的脅威?になったら嫌だからね。
鍛冶スキルも持ってるスカイになら、弾も回収出来る。
アカツキもいるし、久しぶりに美味しいダンジョンに行きたいな。




