久しぶりの日常
ツリーハウスに戻ってきた。
「やっぱり巣を長く空けるのはダメね」
ぶつぶつ言いながら、巣にかかった古い獲物を処分して、新しい蜘蛛の巣を張る。今日のルビー母さんは大忙しだろう。
「みんなは今日、どうするの?」
「寝る」
ルードは空き地で竜に戻り、くるりと丸まった。
「僕は…」
「にゃーは狩りに行くにゃ!スカイも行くにゃー!」
子供に手を引かれてあたふたとついて行くお父さんみたいだ。
私は長くできなかった研究をしようかな?
アカツキに採取等をお願いして、液体金属に魔晶石の粉を混ぜた物を取り出す。
割合はどの位がいいかな?
ああ。どんどん魔晶石も作らないと。
魔宝石を作る段階で出る粉よりも、魔晶石を直接すり鉢で潰した方が良いみたいだ。
決して魔宝石を諦めた訳じゃないけど、こっちの研究も楽しい。
エルフ達に教わった薬草作りの感覚を忘れない為にも、道具を使った薬草作りの練習も忘れない。
そうだ。種を買ってこないと。
よし。大麦の種もある。主食程多くは買わないけど、餅麦ご飯にして食べるのもいいな。
買った分の大麦は、もう焙煎してある。時間停止していると水出しできないので、亜空間に置いてきた。
時間が伸びてるのに忙しないな。いつもではないけど、しばらくぶりに入るとこうなる。
アカツキも、今のままじゃ農作業ロボットみたいだ。
アカツキは何故か、眷属達と一線引いてる気がする。
まさかアカツキまでペットは飼い主に似るってパターン?アカツキ、人見知りしてるの?私とはちゃんと喋るのに。
薬草作りを頑張っていたら、アカツキが何度かに分けて、鉱石を採取してきてくれた。終わったら今度は釣りに行ってくれるらしい。働き者だな。
「働きづめで疲れない?少し休んでも大丈夫だよ?」
(疲レマセン。主ガイライヲシテイル間、私ハ休ンデイマシタ)
「そんな事は気にしないでいいんだよ?」
(主ハ今モ働イテイマス)
「というか、錬金術の腕を上げたいだけなんだけどね」
(ソレモ、私ノ為)
まあそうだけどさ。中途半端はやっぱり悔しいじゃん?
「じゃあさ、今日はのんびりする日にしようか?」
(主ハ休マレタ方ガヨイカト思イマス)
あんまり疲れてないんだけどな。
「じゃあ、海岸でゆっくりするよ」
砂浜に座ると、アカツキは釣り竿を持って海岸で釣りを始めた。
ある意味釣りものんびりに入るかな?
アカツキの釣りをのんびり眺めていたら、お尻の下が何かモゾモゾした。
アサリだ。そういえば海岸にはアサリがいたんだっけ。
もう、休憩どころじゃない。今晩に砂抜きして、明日の朝にはアサリの味噌汁が食べられるかな?
そういえば、料理酒は道具屋に売ってるけど、熟成小屋で作れるよね?でも、米と値段的には変わらないかもしれない。
うん。アサリの酒蒸しも美味しいよね!沢山見つけよう!
顔を上げたらアカツキと目が合った。結局私、休んでない?いや!美味しい物の為には疲れも吹き飛ぶのさ!
マグロを釣り上げたアカツキを褒めて、農園を出た。
まだ夕ご飯の時間になっていない。麦茶をチェックしてみたら、ちゃんと出ていたので、コップに移して表面を軽く凍らせる。
「はあ…美味しい」
10年振りの麦茶はすごく美味しかった。
麦茶を飲みながら、マグロを解体する。大きいので、アカツキにも手伝ってもらった。
マグロだけじゃなく、イカとかメジナも刺身にした。
アカツキが釣ったのに食べられないのは可哀相だな。
魚を捌いていたら、ルードがつまみ食いに来た。
とはいえ、身の方を食べると私に怒られるので、落とした頭を食べている。
「ん?何これ」
ルードが、砂抜き中のアサリの中に指を突っ込んで、アサリに挟まれた。
「前に食べたじゃん。アサリだよ」
「指を噛むなんて生意気な奴め!」
「虐めてると、また噛まれるよ?」
大アサリは、凶暴なんだから。
「ね、麦茶飲んでみる?」
「あ…香ばしい?へえ。好きな味かも」
「気に入ったなら、また作っておくよ」
ルードが肉とか魚以外で興味示すなんて珍しい。また作ろう。




