トラス皇国に着いて
国境を越える為に、魔の森の端に開いたゲートまで行って、そこから東に歩いた。
「収納庫の中がいっぱいだね」
ルビー母さんは、暇だったのだろう。料理もかなりの量が入っている。
「ふふふ。あとでみんなで食べましょう?」
本当は、ルビー母さんも一緒に入れればよかったんだけど、今言っても仕方ない。母さんも、気にしてないみたいだし。
トラス皇国の北部の町に着いた。
「見かけない顔だな。冒険者か?この国には冒険者の仕事なんて殆どないぞ?」
「俺たちは国の要請を受けて来たんだ」
「国?んな訳あるか」
「とりあえずギルドに行きたいんだが」
「そんな物はこの町にはない。魔物は全て俺達聖教騎士団が討伐しているからな」
それは凄いな。国が運営している所謂自衛隊的な物だから、公務員みたいな物だ。人数が多くなるから他の国みたいに爵位持ちって感じでもないな。
「仕方ない。王都まで行くか」
「王都に行こうが、仕事はないぞ?他の国に行け」
だからって、はいそうですかと帰る訳にも行かないんだよね。
あ、マロの実が売っている。おやつに買って行こう。
「マナ、この植物は見たことないわよね?」
これ、大麦だよね?
「ルビー母さん、目ざとい!」
麦茶、麦ご飯…小麦は出てたけど、大麦はなかったんだよね。麦茶大好きだから、多めに買って行こう。
やっぱり新たな食材を見つけるのも旅の醍醐味だよね!
気乗りしない依頼でも、今回はエルフに出会えた。
それにモーモーだ!気性も穏やかで、怒らせなければ突進攻撃してこない。
大人しいからこそ繁殖も難しいのかもしれないけど、それこそ結界碑みたいな魔術具で守ってあげればいいと思う。
それにコッコも飼育しているんだから、モーモーの魅力が分かれば飼う人も出てくるよね!
乗り合い馬車で二日目。王都に着いた。一般の人達が並ぶ門ではなく、貴族の人が通る門から入ろうとしたら、門前払いされた。この国ではAランク冒険者でも特別扱いはないようだ。
王都のギルドも小さくて、草むしりや薬草採取等のランクが低い依頼しかない。
利用者がいないから、規模も小さい。ギルドマスターが受付も行っている。
「あの、国の依頼ってどうなっています?」
「それはですね…国として一応ギルドを受け入れているというていを見せているだけだと思います」
「事実上俺達は来るだけで良かったって事かよ?」
「申し訳ありません。一応ワイバーン討伐に参加して貰い、トラス皇国が開発した遠距離攻撃の魔道具を調査して下さい」
「何それ。初めからそっちが目的って事?」
「はい…ただ、調査は難しいと思われます。その魔道具のテストにも立ち会わせてもらえるか…すみません」
「どの道ワイバーンがいなくても、結界があるから通れないんじゃないか?」
「トラス皇国の人達は、結界の魔術具を解析して、利用したいみたいですね」
「モーモーが目的じゃないんだ」
「…マナじゃあるまいし」
えー?モーモーを飼う事が出来れば、自国でチーズだって作れるじゃん?
トラス皇国は、チーズは必ず買っていると聞いていたけど。
「人が弾かれないようになれば、誰もが魔物に怯えずに暮らす事が出来る。そしてそれをもたらしたのが、トラス皇国だと言いたいのかもしれませんね」
「トラス皇国は、神の神託を受ける事が出来るんですよね?なら教皇なんかは結界内に入れるんじゃないですか?」
「うん?あの結界について何か知ってるのかい?」
「う…さあ?」
そういえば、グランドマスターは何も言ってなかったな。私達なら何とかできると思ったのかな?
まあ、実際何とかなったけど。
「とりあえず先方には君達が到着したのは伝えておくよ」
何か面倒な事になってきたな。




