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エルフの国

 さすがに速すぎるかとも思ったけど、サマルカンドへ行くには、速い方がいい。

 前みたいに一ヶ月もかかったりしなければ、充分に持つ分の食料品も準備したし、早速国境付近のゲートから出た。


「まだずいぶん森の中だね」

「上手く降りられる所がなくて」

 ああ。大きいもんね。 

 早速襲いかかってきたヘルハウンドの首を落として一息つく。

 ゲートを出る時は油断しちゃだめだな。戦神ドーバ様の加護があって良かった。

「今のよく反応出来たね」

「加護のお陰だよ」

 マナは、威圧を使う。

「威圧も上手くなってきたね」

「そうかな?」

 ユキは、ケットシーの姿のまま歩いている。精霊視をつけたままだと、電飾猫みたいだな。精霊は、ルードの傍にもいるみたい?ルビー母さんの周りには行かない。スカイは…うん。電飾鳥も面白い。今は人の姿だけど。

 でも、電飾人間は私も一緒なんだよね。

「ルードは精霊は見えないの?」

「見えないよ。ユキは半精霊だから…大丈夫かな?」

 

 空気が揺れて、何かを通った気がした。…あれ?!ルビー母さんがいない!

「空気が変わったね」

「ルード!ルビー母さんがいないよ!」

「落ち着いて、マナ。他のメンバーはいるし、どうしてかな?」

 マナが戻ると、ルビー母さんが困っていた。

「母さんは入れないみたい。亜空間で休んでいるわ」

 母さんだけのけ者みたいで可哀想。あれ?ルードとかスカイも入れたよね。…私は?

「ルビーは無理にゃ?」

「うん。何でかな?精霊がくっついていると通れるのかな?」

「精霊って、僕にも付いてるの?」

 二人してハモってる。

「うん。何でだろうね?」


「私も見えるようになったのは、進化?してからだから、良く分からない」

「にゃーも同じにゃ。ルードとマニャは元から付いてたにゃ。スカイは進化してからにゃ。多分にゃーも同じにゃ」

「だろうね。精霊が付いている事が、通る条件なのかな?」


「それは違う。お主らは何者か?」

 いつの間にかすっかり囲まれていたようだ。殺気は感じないけど、武器を構えている人もいる。警戒されているようだ。

 エルフ達は、緑の髪と僅かに尖った耳をしている。髪の色合いは濃かったり薄かったり。皆、一様に美形だ。


「人の姿はしていても、主らは人ではあるまい?」

「ねえ、フェニックスって魔物じゃないのかな?」

「フェニックスは神獣。スカイはそんな事も知らなかったの?」

「誰も教えてくれないし」

「フェニックス?!」

「スカイ、人化を解いてもいいよ」

 ユキがケットシーになっているんだから、今更だよね。


 スカイがフェニックスになると、皆がざわめく。

「ちなみに僕はインペリアルドラゴンだ。僕も人化を解いた方がいい?」

「うっ…我らに害を為す為に来た訳でもなさそうだ。して、その娘は?」

「進化した人?」

「たまに精霊に愛される人もいるが、只人ならば、結界は抜けられない。それに人が進化するなど聞いた事もない」


「えー。…ルード、偽装を解いても大丈夫かな?」

「大丈夫。彼らは本当の意味で信心深いし、その方が話が早いかも」

 マナが偽装を解くと、警戒して武器を構えていた人達も、ぽかんとした表情を浮かべて、武器を下ろす。

「…サマルト様」

「あ、一応娘です」

 皆、一様に頭を下げる。


「あの、頭を上げて下さい。サマルト様の娘でも、私は神様じゃないので」

「滅ぼされようとしている我らを救いに来て下さったのでは?」

「そういう訳じゃなくて、ワイバーンの事を調べに来たんです。私達は冒険者なので、一応討伐依頼は受けてますけど、状況によっては討伐しません」

「立ち話もなんですから、こちらにどうぞ」


 町位の規模だけど、エルフの国って小さいのかな?

 ログハウス風の家や、木の洞。木の上に作られたツリーハウスもある。

 中でも大きな屋敷に案内された。

「ワイバーンは、我々の従魔です。エルフが魔物を使うというのもおかしな話ですが、トラス皇国から身を守る為なのです」

「戦争が、起こるの?」

「トラス皇国は、自分達こそが神に最も近い、神に愛された人だと公言して、我々エルフを目の敵にしているのです。特に今の教皇が就任してからは、強行手段に出る事も多くなり、我らの使者を通して圧力をかけてくるのです。我々の貿易相手国はトラス皇国だけなので」

 

 足元見られてるって訳か。けど、それだけかな?

「旨味が少ない気がするな。国土も小さいし、精霊と共に暮らすエルフ達は、滅ぼすよりも取り込む方が利益になる」

「教義に反するか、あるいは魔術具が狙いからかと」

「魔術具?」

「広範囲に効果を表す物を、魔術具って言うんだよ」

「じゃあ、結界が国全てを覆っているの?」

「全てではありません。崖寄りの方は範囲に入ってませんから。そうしないと我々も狩りができなくなってしまいますから」


 うん。野菜や果物だけ食べているなんて、現実的じゃないしね。

 良く見ると、運ばれて来た料理にも、肉がある。


(トラス皇国にも行かないといけないんだよね?ワイバーン討伐は無理だって答えるの?)

(マナだったらどうする?)

(できるなら、話し合いで戦争を止めさせたいけど、難しいかな)

 私達は所詮部外者だし、政治的な事は分からない。子供が何言ったって無駄だよね。ていうか、その教皇に会うのも難しいんじゃないかな?

(現実的じゃないね。それに、片方の意見だけ聞いて判断するのは良くない)

 そりゃそうだ。


「あの、その魔術具って見せてもらってもいいですか?」

「この街の広場に建つ石碑がそうですよ。創世の昔に、精霊達を守る為に神が自ら建てられたと聞きます」

「その魔術具は、魔力がかからないんですか?」

「そうですね。神の力で成り立つ物なので、我々が通常の魔道具のように魔力を注ぐとは考えた事もありませんでした」


 広場に案内してもらって行くと、果物や花が供えられていた。


 看破 聖別の結界碑 精霊が育つ地に建てられた魔術具。 サマルト特製の神器


 聖別か…なるほど。






 

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