出発準備
ギルド本部に来て、聞いた話は大体ルードが語ってくれたのと一緒で、群れる事のないワイバーンが集まった理由が分かればいいって話だけど、それは従魔化しろって事? 無理だと思うんだけどな。
「それで、トラス皇国を通らずにサマルカンドへ入れるかな?」
「地形的にどうなの?」
「西側は海で、切り立った崖に囲まれている。辛うじて北の一部が魔の森に接しているけど」
「南は?」
「トラス皇国を避けて通るのはあまりにも不自然なんだ。そこで俺は考えた。どっちも魔の森に接しているし、魔の森を抜けて入ってしまえば問題ない!」
「…あの、いくら魔の森に住んでるからって、無謀だと思わないんですか?奥に行くほど魔物だって強くなるんですけど!」
「兄ちゃんに乗せて飛んでもらうとか?」
あ、そういえばこの人はルードが竜だって知っているんだよね。
「却下。目立ち過ぎる…けどそれがベストかな。方法はこちらに任せてもらう」
「ついでにトラス皇国の内情を探るのは…」
「却下。僕には人の世界に足を突っ込むつもりはないから」
「はあ…まあ、頼む。どうなったにせよ、トラス皇国に顔は出してくれ」
「ああそうだ。この仕事にラズリを連れて行くのは構わないよな?」
「構わねぇけど、ワイバーンには弓では届かんぞ?」
「知ってるよ」
ダンジョンにいるワイバーンとは違うもんね。飛んで逃げちゃうから、魔法だって当たるかどうか…うん。でも何とかなる気がする。
「それで、どうするつもりなの?」
(僕かスカイが飛んで行ってゲート開くのが一番速いけど)
(どっちも目立つね)
(僕が行って手前で降りるよ。スカイだと、国境が分からない可能性があるから。それに透明化のスキルも持っているし)
そういえば、飛ぶ練習もしてないや。折角高速飛翔のスキルをもらったのに。…いや、高速はないけど。
ツリーハウスに戻って眷属達と合流して、これからの事を話した。
「けれど、エルフの国に、そもそも入れないと思うわよ?」
「人が入れないよう仕掛けがあるのは分かるよ。けど、ユキがいれば少なくともユキは入れると思う」
「どうしてユキにゃ?」
「エルフの結界は、精霊は拒まないから。ユキが中の人と交渉して、中に入れるようになればいいな」
「竜も入れないの?」
「さあ?入ろうとしたことないし…正直ユキだけだと不安が残るけど」
「ユキだってやればできるにゃ!任せるにゃ!」
うん。とっても不安。
エルフは、基本人と交流する事はない。たまにエルフの国から離れて暮らす変わり者もいるらしいけど、大抵人に偽装してるから、見分けがつかないとか。
とりあえず、旅に出る前に食料品の確保をしておかないとね。
私はこれから農園に入って、米と小麦の確保だ。
カシオブツの木も切り倒さないと。アカツキは、農作物の収穫だけしてもらってあとは、ダンジョンに入ってもらおう。
畑を耕したり水を撒いたりは、創造魔法でやった方が効率的だからね。
魔道具やポーション等を大量に出荷したから金銭的にも今は余裕がある。
魔宝石を作るのに失敗して粉になった物は、魔晶石を作る時に失敗した粉とは分けてとって置いてある。
魔晶石を作る時に失敗した粉は、魔石の粉だから、魔道具を作る時に使っている。
高度な魔道具には使うかもしれないけど、今の所使い道がない。
これは後々の課題だな。
そして、ぐにぐに金属も結局樽二つ分残っている。
質に変わりはあるのかな?…うん。少し魔力を保有してくれそうだ。粉になっちゃったのに凄いな…!
はっと思いついて、その粉をぐにぐに金属と混ぜた。
「…!うん。形を維持する金属になった!」
ただし、時間は短い。それでも、少し成果が出た。
うーん、却ってスラグが邪魔なのかも。
練成して、液体金属にしたそこに、スラグから分離した魔晶石の粉を混ぜてみる。
いい感じかも!うう…このまま研究したいけど、今は出発準備が先だよな。旅中でも農園に入れない訳じゃないけど、落ち着いて研究したいし、また戻った後かな。
釣りで魚を補充して、アカツキが持ってきた鉱石をインゴットにしてから、ユキやスカイも食べる果物を収穫して、農園を出た。
みんなはまだ狩りかな?私も行こう。




