ぐにぐにいっぱい
亜空間に入って、みんなで団子になって寝た。正確には、人化を解いたルードに、みんなでもたれかかって。
鱗に寄りかかり、ユキのもふもふとスカイのもふもふを両脇にかかえて。ルビー母さんも、スカイの向こう側にいる。
昼過ぎまでゆっくり寝て、そこからご飯を食べて、なんとなくそのまま雪山を下った。
ギルドの解体場でスノーグリズリーの死体を出してやると、みんな引いていた。
ギルドを後にしたら、各々定番のショッピングだ。
ルードが私についてくるのは、護衛のつもりなのかな?
「本当にルードは、見たい所ないの?欲しい物ないの?」
「無いよ。物なんかより、大切なマナが攫われたら嫌だから」
そこまで心配しなくても、偽装がかかっているんだから、今の私は、どこにでもいる只の子供だ。
スカイの困っている感覚を感じて、行ってみたら、物体Xが、ここでは芸術作品だとは認識されないらしかった。
「ラズリ、そういう物は見る人によって違うからね?」
「うん…でもちょっと悔しいな」
むしろそれを芸術作品と言ってくれる人の方が貴重なんだから。
「ガラクタは、あの店で売ればいいだろ?」
「酷いよ、ルード」
スカイがますます落ち込んだけど、私もどうフォローしたらいいか分からない。
「ね、気を取り直して武器屋さんに行こう?矢も補充しないとね!」
「うん。分かったよ」
武器屋で、不思議な物を見つけた。樽に入った燻し銀色のそれは、柔らかい金属と書かれている。
もしや水銀かと慌てて看破してみた。
看破 柔らかい金属 魔力を流すと硬質化する半固体金属。毒性は無く、人体に影響はない。
不思議物質だった。触るとぐにぐにしてて、まるで粘土みたいだけど、魔力を流すとカチカチになる。魔力を止めるとすぐに元の柔らかさに戻るので、手を突っ込んだままだったから、良かった。
「おじさん、これって売り物ですか?」
「ああ。一応な。珍しさから買って行く物好きも多いが、使えないと文句を言ってくる。近くの鉱山で採掘できるんだが、返品、文句は受け付けないぞ?」
銃弾とかに使えないかな?問題は、魔力をどう持たせるかだけど。…あるいはアカツキになら、何か使えるかもしれない。
「樽一つで銀貨5枚だ」
それって殆ど樽だけの価値しか無いんじゃ?まあ、色々実験してみよう。
「おう。収納庫持ちか。なら輸送費もかからなくていいな。あと一つ買って行くか?」
むしろ在庫処分したいんじゃ?案内されて行った倉庫の中を見て思った。きっと全部物好きか、研究者用なのだろう。
「安くしとくから、多めにどうだ?」
「いくら収納庫でも、容量の限界はあるんですよ?」
私は気にした事ないけど、一応言ってみる。
「そりゃそうだが、…入るなら、樽三つで銀貨10枚でいい」
「分かりました。色々実験してみたいし、いいですよ?」
あとで聞いたら、誰も有効利用できる方法を思いつかなくて、穴を掘って捨てている物みたいだ。
まあいい。普通鉱山は、鍛冶屋さんしか入れない。護衛任務が出れば別だけど、そういう人達はそれなりに戦えるのが普通だから、滅多にない依頼だ。
それに何の価値もないとは思えない。
スカイも矢を手に入れたので、ルビー母さん達を探した。
「マナ、これを見て」
ルビー母さんが店で商品を指差す。林檎位の硬い殻の中身が見えやすいように、展示してあるそれは…こんにゃく?
看破 マンナンの実 味は殆どないが、独特の食感を持つ食材
「これは木になるの?」
「らしいわね。ふふふ。ちゃんと買ったわよ?」
ルビー母さん、ナイス!煮物とか、色々使えそう!
それにしてもこの国はぐにぐにした物が多いな。
ユキは、スノーベアの皮でできたスノーベアのぬいぐるみを買っていた。
きっとおもちゃにするつもりなんだろうな。
スノーベアの毛皮はあるから、作れない事もないけど、それよりも振って遊ぶ猫じゃらしが作れるだろう。中に、遊ぶ方に綿を入れて、持ち手に棒を入れればそう簡単に壊れたりしないだろうし。
うん!やりたい事が増えた!
「ユキ、いい物を買えて良かったね」
「うにゃ!見てたにゃ?」
ユキは、満面の笑顔を見せる。こういうユキの天真爛漫な所は可愛いなと思う。
「でもマニャは、ユキにもふもふして欲しいから、駄目にゃ」
もう、ユキは可愛いな!
「えい!耳もふりー!」
「うにゃにゃ!くすぐったいにゃ!」
ユキをもふり倒してから、みんなでダスカー王都を出た。




