ダスカーへ
スーレリア王都から、歩いて北を目指した。敢えて歩いたのは、小さな魔石を沢山合成して、練習する為だ。流石にゴブリンのは臭いから使わないけど。
小さいのを二つ合成して、同じ物と合成する。
「あー…」
今日何度目かになるか分からないため息を吐いて、魔石の粉を地面に落とした。
「マナのやってるそれは、アカツキの為なんだよな?」
「自分の夢の実現の為でもあるよ?モビル○ーツに搭乗して、腕からロケットパンチを出して、敵を殲滅する…格好いい」
「ルード、そんなにヤキモチ焼かなくても、マナのやってる事は、玩具で遊んでいるのと一緒の感覚にしか母さんには見えないけど?」
…うっ…図星過ぎて何も言い返せない。
「玩具で遊ぶのは楽しいにゃ!」
確かに大変な作業だけど、不可能を可能にしていく過程は、楽しくもある。魔石の合成が、少しずつ容易になっているのが分かる所も夢中になる理由だ。
この辺りの魔物は、スカイに弓で狩らせている。
一撃で仕留められるように、スカイも頑張っている。
素材になる物や、つまみ食いしない物、私も食べる物は、ルビー母さんが歩きながら解体してしまう。器用だ。
まあ私も、歩きながら合成してるけどさ。
私達が歩いているのは、街道からは大分離れた道なき道。
ひたすら歩いて、ご飯とか寝る時は、亜空間で休む。
夏だけど、気温が下がってきたので、マントを羽織った。
「ユキ、寒くない?」
「この程度なら大丈夫にゃ!服もマントも暖かいにゃ!」
それでも、亜空間に入ると、炬燵の魔道具に魔力を流して入ってしまう。
炬燵の魔道具は、出発前に急遽作った。元々作る予定だった物だし、寒い所に行くなら、必要になると思ったから、大正解。
「この山を越えれば、ダスカーに入るよ」
「わ…!白熊可愛い!もふもふ!」
「マナ!」
スノーベアの爪攻撃を、ルードが防ぐ。
スカイの矢が、スノーベアの額に刺さる。驚いたマナが地面に尻餅を突く前に、ルードの長剣がスノーベアの首を刎ねる。
「あ…ごめん。魔物だったんだね」
「危なっかしいな。マナ」
「私達眷属が気をつければいい事よ。毛皮は残すわね」
「うん。お願い」
ギルド本部で教わった物より、丸っこくて可愛いから、つい。
「白熊って何?」
「ええと、動物。魔物じゃなくても、熊は強いから危なかったよ。ごめん」
熊っていうより、体型はパンダっぽい。
っと、また来た。今度は落ち着いて短刀を振るう。
スカイが空を飛んできたホワイトホークを弓で狙い打つ。残念。外したので、ダークアローで狙い打った。
リアルホワイトホークか。今日のご飯にしようかな?
あ、マッシュが生えてる。スープに使おう。
「あ、ルード、一緒にマッシュ摘んで」
「目ざといな。何か食べ物に対する感知能力とかありそう」
失敬な。
「こっちも!クロタケが生えてる!」
「ふふっ、マナは通常運転ね」
「…うにゃ?」
ナタで枝を払いながら籠を背負って、山に上ってきた人達が来た。
「…あんたら、この辺の者じゃないな?」
「あ、冒険者です」
「街道からは大分離れているようだが」
ちょっと疑われているかな?
「街道を進むだけじゃ、採取もできないので」
「はぁ…この辺はスノーベアも出るし、気をつけろよ?ここを下ればフーリアの町に着く。子供連れで山越えはきついだろうに」
一体何歳になったら子供扱いされなくなるのかな?15歳になって成人するまでは子供って事なのかな。
そんな埒もない事を考えて山を降りると、町の壁が見えてきた。
フーリアの町のギルドに寄って、ミグの実の事を聞いてみた。この辺に生えてないこともないけど、もっと北に行けば普通に生えていると教えてもらった。それよりも薬草が余っていたら、売って欲しいと言われた。寒いから、あまり育たないようだ。
個人情報なのに、なんで私の収納庫はどこのギルドも知っているのかな?そして、偽装を解いている訳でもないのに、もふもふ家族の事も分かってるみたいだ。
薬草なら、随分前に採取した摘みたて新鮮状態なのがあるので、納品した。
私のミグの実、待っていて。




