アカツキお披露目?
アカツキ用の魔宝石どころか、魔晶石も出来ない。
寝そべっているルードにもたれかかり、合成時の事を考えてみる。
(何をそんなに悩んでいるの?)
「魔石を合成して、まずは魔晶石を作って、それからそれも合成して魔宝石を作りたいんだよね。それが上手くいかなくて…」
(魔晶石ならお金で手に入らなくもないけど、魔宝石はな…)
「魔晶石より、魔宝石の方が難しいんでしょ?」
(錬金術の事は分からないけど、簡単に出来る物が、国宝級の物になったりしないと思う)
「だよね」
「マニャ、お手紙にゃ」
「んー?…ニンセン王国王都にキメラが出現して暴れているって。どこそれ?」
「アズバンの西に位置する国だね。…しかもキメラとか。大方南のキムノア国にでも仕掛けるつもりが、自国で逃げでもしたんじゃないか?自業自得」
「キメラは魔法生物なんだよね?」
「そう。魔物同士を合成して、作った物だよ」
人化して、石板で大体の地図を書いてくれる。
「バードッグは違うの?」
「え?魔の森では見ないけど、普通にいるよ?」
犬と鳥の合成じゃないんだ…。
「ふうん。でも遠いよね?」
「かなりね。だから行っても死んでる可能性はある。そういう物は大抵長生き出来ないから」
「うにゃ?魔物同士を合成するとどうなるにゃ?」
「例えば、ライオの噛みつき攻撃に、メーブの再生力、バイパーの毒攻撃を、一匹の生物に併せて持たせる事が出来る。けど、そういう歪んだ生き物は、それ故に長生きは出来ない」
「なんか哀れにゃ…」
「じゃあこの依頼、放っておいていいの?」
「どっから来てるの?その依頼」
「ギルド本部からだよ」
「ふうん…じゃあ、依頼はキムノア国から出てるかもね」
「もしキメラが来たら危ないから?」
「ニンセン王国の調査を本当は依頼したいんだと思う。
ニンセン王国は閉鎖的な国で、フルールとかいう居もしない女神を信奉している。キムノア国もそう開かれた国ではないけど、一つの島を南北に分けて興された国だから、身近な脅威だよね」
「ルードは詳しいね」
「竜は眠る事で世界を感じられるからね」
「今も?」
「必要はないけど、その気になれば」
「とりあえず話を聞きに来て欲しいって書いてあるけど、どうする?」
「ああ…もしかしたらアカツキが見たいだけかも?」
確かに、あのおっさんならあり得る。
「ん。魔改造される前に見せておいたら?」
「魔改造って、失礼な」
「あれだけ強いゴーレムが、魔法を使えるようになったらどうなる?災害級認定されてもおかしくない。そのロケットパンチとかはともかく」
何言ってるのさ。ロケットパンチはロマンでしょ。
出来るなら、モビ○スーツみたいに、アカツキに搭乗したい位なんだから。…あれ?出来るかも?
「えへへ…」
「マニャがまた何か考えているにゃ」
「暖かく見守るのも眷属の務めだよ」
そう言って、二人とも生暖かい目を向けないでよ。
ギルド本部にみんなと来た。ユキとルビー母さんは、買い物しているそうだ。
「来たな!テイムしたっていうゴーレムを見せてくれ!」
「いや…まずは依頼の話しませんか?」
「キメラは死んだ。一歩遅かったな!…こら、帰ろうとするなよ。仕事はあるにはあるんだが、マナには向かない仕事だからな」
「潜入捜査ですか?」
「おお?!変な所で賢いのな。アルスの言う通りか?」
「誰ですか、それ」
「おい、担任の名前をもう忘れたか?」
あ、そうだっけ?名前とか呼ばないし、分かんないよ。
「マナにはどのみち無理だな」
何で無理なのかな?
「兄ちゃんは受けて…」
「嫌だ」
「即答かよ!」
「こういう依頼は強さだけじゃないし、もっとベテラン冒険者に頼んだら?」
確かに、ルードはともかく私はベテラン冒険者とは呼べないな。
「じゃあ、アカツキを見せてくれ!」
ちっ、覚えていたか。
「まあ、いいですけど」
あの、何で何人も付いてくるの?暇なの?
充分に高さのある訓練施設で、アカツキを出した。
「あ?報告と色が違うんじゃないか?」
「クリーンをかけたら、色落ちしました」
「なるほど。素材はミスリルですね」
真偽官の人は鑑定も出来るんだ。ヒヒイロカネのボディは見せられないな。
グランドマスターが私に向けて剣を振るう。アカツキは、それを易々と受け止めた。
「アカツキ!攻撃しちゃダメ!これはテストだからね?」
(了解シマシタ)
「ふむ。主の命令はちゃんと聞いているな」
「テイムしたんだから当然です」
「キメラはちゃんとテイムされてなかったんですか?」
「失敗したんだろう。かなり強い魔物同士を組み合わせたらしいからな」
怖いな…そのテイマーは、国の命令でやったのだと思うけど、テイムできる数には制限があると思う。もしかしたら数じゃないかもしれないけど。アカツキはテイムとは少し違うけど、私もこれ以上はテイム出来ない気がする。するつもりもないけどね。
その後はいくつか素材採取の依頼を受けた。全部魔の森の固有種だ。
タイガーベアの皮を売ったら、喜ばれた。ついでに貴族受けする、高額で売れる素材を教わったけど、狙って狩った訳じゃない。
また船の旅行とかする事になったらお金も必要かもしれないけど。
ルビー母さん達と合流して、さっさと帰ろう。




