ユキの好物と、謎のゴーレム
ルードが寝ている間に、着々と準備を始める。
幸い、野菜はそれなりに残っているので、米と小麦を中心に植えないと。
やはりというか、カシオブツの木が売られていたので、苗木を買って植えた。そこからは釣りで、ほぼ一日を過ごす。
ブドウを入れておいた樽は、ワインになっていた。
小型の樽に移して、次はリンゴを入れてみる。
リンゴは、リンゴ酢でもいいんだよな。美味しいし。
夕方近くに戻ると、みんなまだ狩りに出掛けているみたいだった。
うん。夕ご飯でも作っておこうかな?
ユキが作っておいてくれたうどんにしよう。味噌煮込みうどんにして、卵も落とす。
それを収納庫に入れて、果実水を作りおいておく。
コッコの上位種のビッグコッコが私の収納庫に入ってきたので、から揚げも作ろう。
これはスカイの獲物だな。矢で射たあとがある。
ただ、下処理ができていない。血抜き位はしておいて欲しかったな。
仕方ないから、木に魔法で脚をくくりつけて、その間にお湯を沸かす。
「ルード、お帰り」
「ん…寝る」
疲れて眠いのか、成長期だからなのか分からないけど、顔つきから少年ぽさが抜けてきている。実は60過ぎのおっさんだとはとても思えないけど、大人になったらそこからは見かけはもう、成長しないらしい。
羨ましくはないけど。私も成長期だから。
来月には私も10歳だし、歳相応にもちゃんと見える。逆に今まで他の人より小さかったのが不思議な位だ。
というより、体ばかりが急いで大きくなっている気がしないでもない。まあ、とはいえ、ジーナにはまだまだ追いつかない位だけど。
「うにゃ?この匂い…カシオブツにゃ!にゃーの大好物にゃ!」
ああ。確かに。猫は鰹節大好きだよね。ってか、魔の森に生えているの?
「カシオブツはたまに生えるにゃ。小さい頃は、生えるとみんなでがじがじ囓ってたにゃ」
そっか。果実と違うから、成長したら切り倒すしかないのか。
1本じゃ足りなかったかな?ユキの大好物なら、二本位植えておいて、順番に切り倒すか。
次の日は、狩りに出掛けた。
スカイが使う弓を引かせてもらったけど、身長の足りない私には扱いにくい。命中スキルは高いと思うけど、弓スキルも持ってないし、使うとしたら小型の弓かな。いや、今更取っても仕方ないかな。私のメインは短刀だし、たまに槍も使うけど。
ハイオーク、ミノタウロス、タイガーベア。次々と狩る。最後のタイガーベアは、虎柄の熊って感じで、魔の森の固有種だけど、その皮が高額で取り引きされる。お金持ちは、この世界でも虎皮のラグとか敷いていたりするんだろうか?売れるから、解体も丁寧にやる。
魔の森の魔物は、素材として使える物が多い。肉も美味しい物が多いから人気だし。でも、素人冒険者が入ってこられるような所じゃない。学校で習った事だけど、中級冒険者が力がついたからと魔の森に入り込んで、大怪我をしたり亡くなる事も少なくないとか。
それでも魔の森に入れるようになれば、収入も段違いらしい。
とはいえ、ツリーハウスは魔の森深部にあるので、人族が入って来る事はない。
今日の夕ご飯は、お好み焼きにした。勿論薄く削ったカシオブツをたっぷりとかけて。
「うにゃー!!何でにゃ?カシオブツが踊っているにゃ!」
ユキの目がキラキラ輝いている。
「薄く削ったりしないの?」
「囓るだけにゃ」
「薄く削って熱い物の上に乗せると、踊るんだよ。スマホでも育てられるようになったから、収穫できたらユキの収納庫に入れておくね」
「うにゃー!!嬉しいにゃ!」
「そういえばルード、ゴーレムには対策あるの?」
「金属は、大概急激に冷やして熱すれば、脆くなる。ただ、ゴーレムは魔道具である可能性も高いから、ちょっと調べる必要があるかな?ストーンゴーレムも、そのゴーレムに作り出されている可能性が高いし」
「へえ。王都の近くだし、スーレリアに攻め込むつもりかな?」
「あそこは神の山からも近いし、危険な物を放ってはおけない」
「なら、時間調整しないで急ぐ?」
「うーん。母様の所に先に行った方がいいかな?マナも行く?」
「うん!ちっちゃな竜見たい!」
「じゃあ明日」
明日でいいのかと思ったけど、この前までルードが近くにいたんだから、危険なら念話が通じる距離にいたよね。
次の日、亜空間移動でルードのお母さんの所に行くと、ちっちゃな竜は二回り位大きくなっていた。
私ももう、抱っこするのがやっとだ。
(もう、神と言っても差し支えないかの?)
…え?
(マナってば、何他人事みたいな顔しているの?)
ルードも随分大きくなってきたけど、まだお母さん竜には敵わないな。というか、あと10年でここまで大きくなるのかな?
最初は私の腕の中で大人しかった子竜も、きゅっと小さく鳴いてお母さん竜の方を見る。
甘えん坊さんだね。
頭を撫でて返してやると、小さくあくびする。和むなぁ。
(母様、ゴーレムについては?)
(マナの気配かと思うたが、違うようじゃの。神に近い気配を感じる)
(神に縁のあるゴーレムですか?)
(何とも言えんのじゃ。気配が現れたのはおよそ1ヶ月程前。人族があれ程のゴーレムを作れるとは思えぬ)
(丁度僕達が仕事に出たタイミングだね。害がないなら、亜空間移動がばれないタイミングを見計らって王都に行こう)
(あんな事言われたから、バレてるんじゃないの?)
(はったりだと思うよ。その方が、あの子供も国に戻るだろうし)
学生だもんね。帰るって言ったから、焦ったのかな?
しばらくはギルティア王都は近づかないようにしよう。




