依頼完了と、新たな依頼
馬車が王都に着いた。
はあ…やっと終わった。
「では、依頼完了ですね」
「待ちなさい、世話になった冒険者に、何の礼もしないで返す訳にはいかない。せめて今晩だけでも泊まっていくといい」
えー。早く帰ってもふもふに埋もれたいんだけどな。
「とりあえず、完了の報告には行ってきます」
また怒られるのも嫌だし。
「そう急がずとも、馬車は洗浄中だ。今、お茶の用意もさせているし、ここは妻の実家だから、遠慮は要らない」
「前に、報告を伸ばした時にすっごい怒られたので。ギルドなら歩いて行きます」
「それって他の人が行ってもいいんだよね?」
「私がリーダーなので、私が行きます」
とりあえずサインを貰った。スーレリアの王都は何回か来た事あるから、場所はどうにか分かるし。
「ギルドに行ったら、すぐに戻って来てね?絶対だよ!」
曖昧に頷いて、屋敷を後にした。
(マナ、影に入れて貰っていいかしら?)
(いいよ。ルードも入る?それとも亜空間?)
(王都を出るまではそのままでいいよ)
「もふもふ家族の方ですね!お待ちしてました!実は受けて頂きたい依頼があるんです」
「あの…今日は完了報告だけするつもりだったんですけど」
「お願いします!ここに遷都する前の旧王都跡地に金属製のゴーレムを中心にしたストーンゴーレムの集団が出現しまして、すっごく困っているんです!」
「まだ受けるって言ってないだろ?依頼が終わったばかりで俺達は疲れているんだ。家に残してきたユキも心配だし」
「他のAランク冒険者にも依頼したのですが、ストーンゴーレムは何とか倒せても、金属製のゴーレムは倒すに至らず、もうあなた方スーパー冒険者に頼るしかないと」
「ゴーレムって、普通は群れたりしないって聞きますけど?」
「そうなんですけど!突然湧いたそのゴーレムが現れてから、ストーンゴーレムも次々に増えて…お願いします!」
「そんな突然に、湧いたりするものかな?」
「その金属製のゴーレムっていうのは、金属の種類は?」
「それが、サンプルがないと分からないと専門家が」
「それって、家族が揃うまで待てない?」
「いえ。現在は立ち入り禁止にはしてありますが、その…貴重な採取場でもありますので」
(受けるつもり?)
(護衛依頼よりは遥かにいいし…だめかな?)
(そんな事ないけど、ルード…無理してない?)
(どうせ亜空間移動なんだから、1週間位寝ていれば元に戻るよ)
1週間て…ルードなら寝てそうだな。
「なら、家族が揃ったらまた寄ります」
「あ、ありがとうございます!」
「という訳で、次の依頼を受けた事もあるので、すぐに戻ります。ユキ達も迎えに行かないといけないので」
討伐依頼なら、スカイも連れてきて大丈夫だろう。
「ふむ…亜空間移動なら、すぐに戻れるんじゃないか?」
「何ですか、それ」
「私の情報量は、君たちが思っているよりもあるという事だ。隠しているようだが、突然に消えたのを何度も確認している」
「見逃しただけでしょう。鬱陶しい視線は何度も感じたけど、遅いし、ストーカー紛いの事をしてたのを自ら明かすとか」
「知っている者は少ない。王の賓客であると同時に我が家の賓客にもなった方が、後々の為だと思うが」
「脅す人と、仲良くなんてできないし。そっちがその気なら、王様に諫めてもらうだけだし」
「貴色を持つ者を脅すとか、大胆な事をする。それなりのリスクがあると考えないのか」
「私は提案をしているだけだ。言っている事は事実だが」
「父上?」
「ラクル、大丈夫だ。この国で仕事をするなら、その間は、我が家に滞在するといい」
やっと戻ってきた。久しぶりの我が家だ。
「ユキ、スカイ、ただいま。もふもふさせて」
マナは、ユキとスカイに顔を埋める。
「はあ…癒される」
考えなきゃならない事もあるけど、今はゆっくりしよう。ずっとスマホにも入れてないし、肉も足りない。
ルードはユキ達の採った獲物を分けてもらって、もう寝てしまった。
ルビー母さんは、ツリーハウスの点検作業に入った。
(マナ、大丈夫だった?)
「んー、今回みたいな長期依頼は、ちゃんと準備しなきゃと思った」
(マナの収納庫、空っぽだね。僕のから移していいのに)
「にゃーの収納庫も、獲物あったのに」
「念話通じないから、勝手に取るのも悪いと思ったんだよ」
(マナは主なんだから、いいのに。僕だって貰ってばかりも心苦しいし)
「ありがとう。今度討伐依頼を受けてきたから、みんなで行こうね」
(僕も行っていいの?)
「実績も上げていかないとね?」
色々やらなきゃならないけど、今は休もう。大好きなもふもふに包まれて。




