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護衛依頼 4

 馬車が休憩場所に着いた。

 兵士達は、手分けしてテントを張っている。動きがおかしいなと思ったら、何人か怪我してるみたいだった。

「気が付かないでごめんなさい」

 そんなに重症ではないけど、旅はまだ長いので、治した方がいいだろう。

「ありがとうございます。もう大丈夫ですか?」

「未熟者でごめんなさい」

「いえ!戦いの最中にも治して頂いたのに、お礼も言えず済みません」

「いえ…兵士の方、これで全員ですか?」

 少ない気もするけど?

「この先の町に、報告に行っています。それと…いえ!何でもないです!」

 若い兵士は、仕事に戻った。


「もう大丈夫ですか?よろしかったらあちらにお茶を用意してあります」

 執事さんに声をかけられた。夫婦とは別席の、子供達と一緒の席だ。

 すぐにお茶を淹れてもらい、お菓子を用意してくれる。


「収納庫…ですか」

「そうですね。流石にサイクロプスは入りませんが」

 あー。まあそりゃ、色々知られているとは思っているけどさ。

「すっげーな!サイクロプスってすげーデカいんだろ?あーあ。僕も時空魔法の才能あったらなー?」

「トールはまず、中等学校で難しくなった算数の授業を頑張るんだな」

「兄ちゃんだって算数苦手なくせに!」

「高等学校の算数は難しいんだ。お前と一緒にするな」

「では折角ですので、時間もある事ですし、進めましょうか」

 収納庫から取り出した教科書を見て、ふと疑問に思った。新品同様だ。お金がある人は、使い回ししないのか…え?割り算?

 初等学校では確かに足し算と引き算しかやってなかったけど、ソーニャは自分でかけ算も勉強していた。

 足し算も桁が多いのを、そろばんに似た道具で計算の練習をしていた。


 確かにさ、社会に出ちゃったら方程式とか必要ないよね。精々三割引とかの値段がいくらになるか、その程度だし。

 むう。何で筆算して間違えるのさ。訳分からん。

 苛つくけど、私は見て見ぬふりしなきゃダメだよね。知ってたらおかしいもん。


「よかったらマナさんもやりますか?教えて差し上げますので」

 石板を渡してくれたので、反射的に受け取ってしまった。

「…私は初等学校しか行ってませんので」

「けれど、大変優秀だったと聞いています」

「そうなのか?じゃあこの答え、分かるか?」

「124ですね。それ、間違ってますね。私、友人に商人の子がいたので…知ってると思いますけど」


「勿論」

「私の友達に何かしたら許さないから」

「まさか。何もしたりしません」

「私も、大切な人に何もされないなら、何もしませんよ」

 執事はふっと力を抜いた。

「試すような事をして申し訳ありません。確かに一筋縄ではいかないようです」

 そんな軽い威圧、効く訳ないじゃん。Aランク舐めてるの?まあ、私が子供だから強そうには見えないと思うけど。

「執事さんは、昔冒険者してたんですか?」

「随分昔の話ですね。旦那様に雇って頂くまでは。対人戦闘で随分消耗されたので、この程度で大丈夫なのかと不安になったのです」

「執事さんも、相手の実力を推し量れないようなら、たかが知れてるんじゃないですか?」


 私の事とか、そんな物を出してくるんだから覚悟はできているんだよね?

 私の威圧に、執事さんも子供達も腰を抜かしている。

 …あれ?私の威圧、こんなに効いたっけ?普段の相手が魔の森の魔物だから、比較対象が違い過ぎるのかな?


「何があったのだ?」

「済みません旦那様。悪いのは私でございます。伝え聞く情報が、本当の事かと疑ってしまいました」

「ぼ、僕…じいより怖い人、初めて見た」

「トマス、お前は優秀だが、勝手はゆるさん。何か不快な思いをさせてしまったようで済まない。トマスの首一つで許して貰えるか?」

「そこまで必要ありませんよ」

 ていうか、色々知ってるのはこの人も一緒。何考えているのか知らないけど、そう簡単に利用されてやらない。


 夕ご飯は、食欲がなかったので辞退した。まだ胃が重い。

 ジュースだけ貰って、それで終わりにした。

 少し早いけど、大きなテントの片隅で横になった。

 本当は交代の見張りに私も加わるつもりだったけど、具合が悪そうだからと、貴族達と一緒のテントで休む事になった。

 亜空間の中で、もふもふに挟まれて寝たい。切実に。


 後ろに迫る剣…私は短刀を、振り上げて…吹き上がる血。首が、落ちて…

「っ!」

「大丈夫?」

「あ…ラクルさん」

「うなされてたから、…本当に、神聖な色を持っているんだね。髪も、とても綺麗だし、何か顔つきまで変わって見える」

「?!あ…」

 私ってば、最大限警戒しなきゃいけないのに、偽装が解けたのは、夢のせい?

「綺麗なのに。もっと見せてよ」

「済みません!…外の空気吸ってきます」


 私ってばダメダメだな。…ルビー母さん達は寝てるみたいだな。

 って、ここで眷属に甘えてどうするのさ。しっかりしなさいよ私!元は一人で生きる予定だったんだから!自立もできないで、ちょっと何かあると頼ろうとするなんて。距離の取り方間違えて虐められた前世みたい。


 テントに戻ると、ラクルはもう寝たみたいだ。よかった。

 自分の寝袋に潜り込むと、隣の寝袋が動いた。

「マナ、私は君に俄然興味が湧いたよ。君も私に興味を持ってくれたら嬉しい」

 …はい?ラクルさん、竜に頭からぱっくんされる覚悟はありますか?蜘蛛の糸で首ちょんぱの方がよろしい?

 …そんなに金の瞳がいいのか。


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