表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
132/242

護衛依頼 3

 貴族の馬車は、わざと違う道にも入って行って、宿泊していく。ノブレス オブリージェってやつ?そんな事してて予定に間に合うんだろうか?何の用事かは知らないけど。


 馬車が山岳地帯に入る。盗賊団が出る危険地帯だ。

「待ちたまえ。兵士達と、家族に任せておけばいい」

「私に仕事させない気ですか?」

 訳分からん。

「そなたは我々さえ守ってくれればいい」

「あ、なら結界かけておけばいいですね!」


 盗賊団は有り金と装備品全て置いていけば命は助けてやるとか言ってるけど、聞く必要なんてない。

 うん、いつの間にか囲まれているみたい。

(ルビー母さん、後ろ方面は一旦麻痺させておいて)

 前は私がやる。規模は100人近い。かなりの大人数だ。


 気配を頼りに範囲指定して、麻痺をかける。

 ちっ、護符を持ってる奴が何人もいる。

(マナは後ろに回って)

 言われたとおりに後ろの奴らを木魔法で縛っていく。動ける奴は兵士達と母さんがやっつける。後ろの方は動ける人数が少ないから楽だけど、前は大丈夫かな?


 縛っている間に前から回って来た奴は、フラッシュで目潰しする。数が多い!せめてユキだけでもいてくれれば楽だったのに!

 そんな大振りの剣で斬れるはずないじゃん!

 マナは小さく屈んで剣の軌道から外れ、お返しに短刀で剣を柄の部分から切ってやる。驚く盗賊に、蹴りを放つと、一発で気を失った。


「死ね!」

 わざわざ叫んで折角後ろを取ったのに、存在知らせてどうするのさ。

 剣の柄で胃の辺りを思い切り突く。

 前に回ると、酷い惨状だった。どっちが味方か分からない。おまけに沢山の血で酷い臭い。

 とりあえずはエリアキュアで…


(回復はダメだよ!)

 いけない。エリア指定じゃ敵まで回復させちゃう。

 木の上から弓でこちらを狙っている奴にダークショットを当てて、木から落とす。

 兵士達はお揃いの鎧を着ているから、一人ずつキュアをかけていく。

(マナ!後ろ!)

 縮地で近づいたルードが、盗賊の首をはねる。

 

 貴族達の馬車には近づけない。盗賊の攻撃は、結界に阻まれている。

 ルードもそっちに向かったので、マナも向かう…すぐ後ろで立ち上がった盗賊が、剣を振り下ろす。

 マナは短刀を振り上げた。

 スローモーションのように、振り上げた短刀が盗賊の首を斬る…血飛沫が吹き上がり、頭がごとりと落ちた。

(…っ!)

 魔物と一緒なんて、無理だ。人がこんなにあっさり死ぬなんて…私、が…


 消えた結界は、ルードが張り直してくれた。ルビー母さんが来て、私を守ってくれる。

(ごめんなさい…しっかりする)


 逃げていく盗賊には構わずに、馬車に群がる盗賊を、風で吹き飛ばした。

 もう…終わり?むせかえる血の臭いに、胃の中身を戻してしまった。

 覚悟は出来ていたはずなのに。何度もきらきらを吐き出して、自分でクリーンをかけて綺麗にする。


 盗賊団を埋める為に地面に大穴を掘った。動ける兵士達が、死体を片付けている。

「マナ、大丈夫?」

 ルビー母さんが、血糊の付いていない地面に運んでくれた。

 そうしておいて、ルビー母さんは死体を片付けるのを手伝った。

 ルードはまだあちこちを回って残党をやっつけている。


 油をかけて燃やそうとしているけど、火力が足りない。マナはふらふらと近づき、高火力で死体を燃やした。

 そして、その場に座り込む。

 報告をしたい兵士が、ルビー母さんに結界の解除を頼んでいる。ルードの結界の方が強いから、ルビー母さんのマジックブレイクが効かない。

 仕方ないな…


 マナがマジックブレイクを使うと、結界は消えた。

 子供達が私に近づいてきたけど、血糊が怖いようだ。

 仕方ない。クリーンで綺麗にすると、私を気付かってくれるけど、そんな勇ましい事、やってないから口にできるんだよね。


 ちょっと前の私もそうだった。でもあそこで短刀を振り上げる以外の選択肢は思いつかなかった。

 ただ、反射的に体が動いた。動かなければ、死体として盗賊達と一緒に焼かれていたのは私かもしれない。


「あなたは我々を守って馬車にいてくれればよかったのに」

「守りましたよ?結界かけて。冒険者やっていれば、遅かれ早かれこういう経験はしますから、気にしないで下さい」

「マナ、戻ったよ。…数人は逃げたと思われますけど、ほぼ壊滅しました」

「うむ…ご苦労。この先に野宿できる広場があるそうだ。今晩はそこで休む」

「分かりました」

「さあ、マナ、我々の馬車で休みなさい」

「いえ…今は、家族と居させて貰えますか?」

「しかし…護衛用の馬車では休めまい?直接の護衛も欲しいし」

「なら私が。娘は対人戦は初めてだったのです。ご配慮下さい」

 ていうか、兵士さんでもいいんじゃ?って感じでルビー母さんが無事な兵士を見る。

 そこまで言われては強くも言えないのか、貴族も頷いた。


 私はルビー母さんとルードに挟まれて座る。そしてどちらがマナを抱っこするかで、二人の水面下の戦いが始まった。

 もう。こんな時に何やっているんだか。

 私は二人の膝の上に寝転がる。あ、ルビー母さんの方を頭にすればよかったな。その方が柔らかいし。

 ルードが頭を撫でてくれるけど、今日は心地よかった。


 眷属達の心使いが嬉しかった。何も言わずに私を甘やかしてくれる。それと同時に、自分の心の弱さも実感する。今まで散々魔物は殺してきたのに、人相手だとダメなんて。しかも相手は盗賊なのに。


 私は大丈夫。すぐに立ち直る。冒険者なんだから、避けては通れない道だから。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ファーストキル(初対人)で凹んでいるマナ・・・。 馴れろとは言わないけど、越えて欲しい壁。 頑張れ。(´・ω・`)ヾ(・ω・*)なでなでですよぅ。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ